志の高い学部学年さまざまなメンバーがオンラインで集まり、新入生のための動画をライブ配信

SOPHIA PEOPLE 上智で考える。社会で描く。 vol.13

文/朝日新聞出版 カスタム出版部 写真/簗田 郁子 デザイン/REGION 企画・制作/AERA dot. AD セクション

「何ができるか」ではなく、徹底的に「新入生が何を求めているか」を考えた

 

4月3日、ツイッターで仲間を募るとともに、西本さんは公式サイトなどを作成し始めたという

18人の有志のメンバーが力を合わせ、新入生のためにYouTubeのライブ配信を開始。メンバー募集を呼びかけた4月3日から、わずか9日後の12日に配信をスタートした。

 はじまりは、僕のTwitterでの呼びかけでした。「新入生が5月末まで大学に来られないという未曽有の事態を受けて、上智新入生のための企画を考えようと思います。ご支援をくださる方、連絡をくだされば幸いです」。誰もが不安を抱えていたと思うのですが、新入生はなおさらだと思ったのです。その不安を少しでも解消してあげたいと考え、「とりあえずYouTubeで何かやれば、きっとみんな見るだろう」という気持ちで、Twitterで仲間を募りました。1人より複数のメンバーのほうが、幅広く情報発信できるからです。
 
 40時間後には18人のメンバーが声を上げてくれました。僕の学ぶ総合グローバル学部の学生もいれば、経済学部や外国語学部、理工学部の学生など、学部も学年もさまざま。すぐにオンラインミーティングを開いて、新入生の不安を解消することに注力しようと目的を共有し、何ができるかを話し合いました。「何ができるかではなく、新入生が何を求めているかを想像して、できるかできないかを考えていこう」。メンバーの一人は、この僕の発言によって議論が進んだと言ってくれました。初対面の人も多かったのですが、不安を解消するにはスピード感が大切だということは、その場でみんなの共通認識になり、いろいろなアイデアがポンポンと出てきました。そして4月5日には企画名を「Welcome to Sophia 2020」とすることや12日から配信する番組の内容が決まりました。
 
 動画配信は「自粛期間に出来ること」という番組を皮切りに、まずは12日から6日間で7番組を配信しました。大切にしたのは、リアルタイムで双方向性があること。動画配信は一方通行の情報発信ですが、ライブ配信にしてチャットなどで質問を受け付けることで、新入生との対話を大切にしたのです。毎日番組後の18時からはフリートーク/雑談タイムとし、新入生からの質問に「メンバーの個人的意見」として回答し、新入生の些細な疑問・不安にも向き合うようにしました。

ライブ配信しつつ、チャットなどで届いた質問にリアルタイムで答えていった

一人ひとりがスキルを出し合って企画を実現。18人のメンバーは、まるで“上智のアベンジャーズ”のよう!

「Welcome to Sophia 2020」のメンバーは、リアルで会うことなくオンラインミーティングだけで企画を実現した。西本さんは「想定外の連続だった」と振り返る。

 最初の7番組を配信したあとは、100を超える課外活動団体の活動紹介や先生にも番組に登場していただきました。視聴回数は、初日は特に多く約2000人。大学全体の新入生数が2500人、その半分の1250人に見てもらうことを目標としていましたが、在校生が見ているとしても2000人という数にはとても驚き、大きな手ごたえを感じました。大学の学生センターもサポートしてくれたことに加え、大学公式TwitterやInstagramで僕たちの活動を紹介してもらったことも大きかったと思います。課外活動団体の紹介番組も、常時1000人に視聴してもらえました。
 
 これだけスムーズに企画が実現したのは、プロジェクト制にしたからだと思います。番組ごとにディレクターや出演者を決め、企画書を提出してもらったあとは基本的にはディレクターに任せるというスタイルです。もちろん配信中は僕もずっと参加し、特定学部に偏った話題や大学の正式な発表がない話題が出た場合はフォローに入りましたが、メンバーたちが本当に優秀な人ばかりで、100%任せることができました。
 
 番組配信以外の部分でも、メンバー一人ひとりが高いスキルを発揮してくれました。番組のスケジュールを組む際は、理工学部の学生が自動メール送信システムを構築してくれ、法学部の学生は著作権侵害やコンプライアンス違反がないかチェックしてくれました。本当にすごい人ばかりで、彼らはまるで“上智のアベンジャーズ”のようです。実は僕自身、今回の企画を立ち上げるまでは何とも言えない不安を抱えていました。いつどういう形で授業が再開するかもわからず、毎日悪いニュースばかり。でも「Welcome to Sophia 2020」の取り組みを通じて、そういったマイナスな気持ちを吹き飛ばして余りあるパワーを、メンバーや視聴者からもらうことができたと思っています。

「他者のために 他者とともに」を実践できる学生が多い

Welcome to Sophia 2020のメンバーたち

中学や高校では生徒会役員を務め、大学2年からは学部の新入生をサポートする「ヘルパー」として活動してきた西本さん。「Welcome to Sophia 2020」を通じて、今までにない経験ができたという。

 日常が取り戻せないなかで立ち上げた「Welcome to Sophia 2020」は、当然のことながら前例のない活動でした。すべてがはじめてで、ゼロから1を作る作業ばかりです。ひとまず前期のオンライン授業が開始する5月末で配信は終了しましたが、終わり方については、まだメンバーで話し合っています。このまま終了なのか、今後どうするのか。まだどうなるかはわかりませんが、とにかく一日でも早く、大学に通える日常が戻ってきてほしいと願っています。

 僕がこれまで生徒会や学部ヘルパーの活動で経験したこととは、規模もスピードも違いました。オンラインを通じて初めて顔を合わせたメンバーと一緒に、スピード感を大切にしながら企画を実行できたことは、本当にかけがえのない経験です。また、「他者のために、他者とともに」という上智大学の教育精神を実践できる学生が、これだけたくさんいるのだということが、改めてよくわかりました。メンバーの18人はもちろん、課外活動団体の学生など、みんなが「新入生のために何かしたい」という思いを抱き、行動をともにしてくれた。そういうマインドの人が集まるのか、上智に入ったからそういうマインドを持つのかはわかりませんが、上智大学とは、そういう場所であることは間違いないと思っています。


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「Welcome to Sophia 2020」
メンバーの声

■「誰かがやってくれるだろう」「自分なんかがやらなくてもいい」ではなく、遠慮せずに思い切って行動してみることが大事だということを学んだ。(総合グローバル学部 3年生)

■上智大学の教育精神である「他者のために、他者とともに」が学生に浸透している。先生との関係性が近かったり、大学を通じた活動を経験している人が多かったりという上智ならではの環境から、愛校心を持つ人が多いように感じる。(経済学部 4年生)

■「学ぼう」「行動しよう」と思ったとき、大学も人も協力してくれると思います。(理工学部 4年生)

■全員が同じキャンパスに通う比較的コンパクトな大学だからこそ、一丸となってまとまりやすいのではないかと感じた。(法学部 4年生)

提供:上智大学