写真/簗田郁子 デザイン/REGION 企画・制作/AERA dot. AD セクション
オープンキャンパスや新入生を歓迎するフレッシュマンウィークなど、さまざまな学内行事で楽しい「交流の場」を作っているピア・カフェ。コロナ禍でもオンラインで「交流の場」を提供し続けたコアメンバーの3人は、活動に参加したきっかけを異口同音に「楽しさ」と言う。
左から矢澤さん、小野さん、新井さん。学部もピア・カフェへの参加のきっかけもさまざまだが、来年度のイベントに向け、力を合わせている
小野:入学したばかりのとき、ピア・カフェが開催する「上智あれこれカフェ」に足を運んだのがきっかけです。履修について相談したり、同じ学科の先輩に学校生活のことを聞いたりしたのですが、スタッフの皆さんがとても親切で楽しそうでした。「私もこんなふうに人の役に立ちたいな、この輪に入りたいな」と思ったんです。
新井:私は高校3年生のとき、入学直前の新入生を対象にした「#春から上智の日」というイベントに参加してピア・カフェを知りました。ただ、1年生のときは入会したダンスサークルが忙しく、活動には一切参加しませんでした。でも、新型コロナウイルス感染症の感染が拡大し始めた昨年2月ごろ、「ピア・カフェの運営に携わってみませんか?」と連絡がきたのです。以前、イベントに参加したときに連絡先を登録していたんです。ダンスサークルの活動もできなかったので、「じゃあ、やってみようかな」と参加を決めました。
矢澤:私はもともと江里沙(新井)と同じダンスサークルに入っていましたが、1年生の6月にドクターストップを受け、ダンスをやめることになりました。居場所を1つ失い、心にぽっかりと穴が空いたような状態のとき、学内でピア・カフェの就活生向けのイベントを見る機会がありました。眺めながらツイッターをフォローしたところ、そのタイムラインに江里沙の写真が流れてきて、びっくり! 「え?なんで?」と思って連絡をしたら、活動をしているとのこと。楽しそうだなと思い、参加しました。
2017年にスタートしたピア・カフェは今年で5年目を迎え、すでに創設メンバーは卒業している。これまで数多くのイベントを行ってきたため、そのノウハウは先輩から後輩へ伝えられてきたが、オンラインイベントの経験はなかった。新型コロナウイルス感染症の影響を受けた2020年は、活動をオンラインに移行、毎月のようにイベントやミーティングを開催した。対話の場がオンラインに変わったことを、3人はどう感じたのだろう。
オープンキャンパスやフレッシュマンウィークといった学校行事でのイベント開催のほか、国際交流イベントやスポーツイベントのパブリックビューイングも開催。ピア・カフェではそのときのメンバーで「やりたいこと」を話し合い、実現している
小野:先輩たちと一緒にその場で交流できるのが対面イベントのよいところで、私自身も楽しんでいました。運営スタッフとして参加者を楽しませたいという気持ちは常にありますが、直接交流できないオンラインでイベントを運営することに少し不安もあったんです。でも、前例がないぶん、自分でいろいろと考えてできることの楽しさも見出せました。またこの2年間で、自分の発言やピア・カフェのイベントが参加者にどのように伝わるのか、立ち止まって考えることができるようになったと思います。たとえばメンバーとイベントのコンセプトを練るときも、同じ目標や目的に向かっているつもりでも、一人ひとりの頭の中のイメージが違うんです。考え方は人それぞれで、ある発言に対する受け取り方も十人十色。自分の発言や発信が誰かを傷つけないか、どういうふうに響くのかを、考えられるようになったと思います。
新井:私のピア・カフェの活動は最初からオンラインだったので、「オンラインでこれだけうまくできるなら、対面はもっとスムーズにできるんじゃないか」という自信につながりました。オンラインで不自由に感じたことはなく、むしろ意見交換がしやすいと思っています。たとえば対面では全員の表情を読み取ることはできませんが、Zoomだと一人ひとりの顔が見えるから「発言しようとしているな」とわかるし、リアクションも俯瞰して見ることができました。またそんな経験を通じて、私は自分のポテンシャルに気づくことができました。ピア・カフェは参加者に接する表舞台と、イベントを企画運営する裏方の両方を体験できるのですが、私は表舞台より、新しいアイデアを出したり、Zoomで意見を引き出したりする裏方のほうが得意かな、楽しいかなって思っています。
矢澤:実はピア・カフェの活動に参加して、私の中にあった「ぽっかり空いた穴」が埋まったんです。オンラインの活動でも人には居場所ができることを実感して驚きました。また同じような空虚感を感じている人の居場所を作ることができるとも感じました。さらに、新入生からもいい評価をもらえたので、大きな自信になりました。「サポート」や「他者貢献」には、「する側」と「される側」がいて、する側が引っ張っていくものだと思っていました。むしろ「他者貢献って“自己満足”では?」とも思っていたのですが、完全にイメージが変わりました。結局、「する側」も「される側」も同じ土俵にいて、する側が「場」を作るだけ。対話を通じて相互に支え合っているんですよね。そんな考え方を得ることができたのが、私の中で大きな変化だと思っています。
フューチャーセンターを立ち上げ、9号館カフェテリアのリニューアルプランをみんなで立案する対話の場を作るなど、川西教授はさまざまな形で大学内のコミュニティの形成に尽力している
「ボランティアによるサポート」と聞くと自己犠牲が伴う印象を受けるが、ピア・カフェのそれはまったく違った。学生の自発的な「やりたい」を受け止め、実現のためのアドバイスをする川西教授と三谷さんは、ピア・カフェの活動をどのように見守っているのか。
川西:ピア・カフェは、いくつかあるフューチャーセンターのプロジェクトの中でも1番成功している活動です。他大学ではピア・サポート活動を学生センターや学生部が業務として担っているケースもありますが、ピア・カフェでは学生も教職員もみんな「自分がやりたいから」という理由で参加しています。もちろん大学からはさまざまなサポートを受けていますが、何をするのか、どう実行するのかといったことはピア・カフェに任せてもらっていて、本当にやりたいことができる環境になっています。2020年度はコロナ禍で、学生から「こんな活動をしたい!」という提案をされても認められないことがありましたが、それでも現状できる範囲はどこまでかを考え、取り組めました。コロナ禍でもオンラインでさまざまな活動ができたのは、ピア・カフェがゆるやかなボランティア団体で、「思いのある人たちが集まる場」だったからだと思います。
三谷:スタート時から活動をサポートしていますが、企画がうまくいかないこと、意見が食い違うことなんて日常茶飯事です。でもそれは悪いことじゃない。試行錯誤そのものを楽しめるような土壌がピア・カフェには育ってきているので、「状況が悪い」と嘆くことなどなく「じゃあどうしていこうか」と、みんなで話し合っています。もちろん、学生主体なので活動への関わり方に安定性がない面もあり、持続性や帰属意識の醸成は課題です。トラブルがあったときは徹底的に当事者の話を聴く、そして学生たちの「やりたいこと」を組み合わせ、編み合わせていく。らせんのように学年を超えてつながりが生まれ、持続性や帰属意識も生まれていると感じています。
前職でも大学の職員としてピア・サポート活動に携わっていた三谷さん。ピア・カフェ誕生の火付け役でもあり、学生にとってはよき相談相手となっている
川西:ピア・カフェ、そしてフューチャーセンターでは、対話の場を作りつつ、参加者には場の担い手になってもらうことを大切にしています。思いのある人は、それを実現しようと行動する力があるからです。今後はぜひ教員の参加も増やしたいと考えていますが、あくまで業務外のボランティア。「面倒くさい」「大変そう」と感じる人もいると思います。でも、学生が課外活動に取り組むのと同じように、「楽しいから」参加することで、さまざまな気づきや出会いが生まれるものです。ピア・カフェは、学生、教職員、そして卒業生がゆるやかにつながるコミュニティ。これからも変わらない形で活動を継続し、コミュニティの輪を広げ、学生たちがさまざまな活動に取り組める環境を育んでいきたいと思います。
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提供:上智大学