――彼女の意思を尊重されたのですね。

「厳しい状況でも、第1志望を受けさせよう」と決めた親御さんの決断もすごいと思います。2月1日午後の合格発表は予定よりも大幅に遅れ、「もう寝よう」というタイミングで結果発表。「合格」の2文字を見て両親とともに泣いて喜んだそう。彼女はいま大学生になりましたが、あれほどまでに家族で喜びを分かち合ったのは、後にも先にもないそうです。

「なんかいいな」は、受験生本人だからこそわかること

――そもそも、第1志望校にそこまで強い憧れを抱いたのはなぜだったのでしょうか。

 文化祭に足を運び、元気で明るい雰囲気が自分に合っている、と感じたようです。ほかの女子校にも足を運んだけれど、あまりピンと来なかった、と。在校生たちの様子を見て、「なんかいいな」と思うかどうかは、受験生本人だからこそわかること。具体的に何が良かったかを聞いても、言語化することは難しいんですよね。

 僕から見ても、元気で自己主張が強い彼女の個性は、その学校に合っているなとは思っていました。そこでは、ビジネスを実践的に体験できるプログラムもあり、彼女の父親は起業されていたので、そうした学校の雰囲気と家庭環境に重なるところもあったのでしょう。

「制服が可愛い!」と何度も口にしていたので、大きなモチベーションの一つになっていたと思います。中学と高校の6年間、何を着て過ごすかは大切なことなので、気持ちはよくわかります。

――厳しい受験でありながらも、最終的に第1志望校に受かった要因は?

 塾講師や親御さんが期待する「頑張っている」受験生の行動や成績と、子ども自身の「頑張っている」という感覚に差があったのだと思います。これは、僕が反省すべき点。僕の目には、「勉強に意識が向かない生徒」と映っていたけれど、本人なりにとても頑張っていた。後から聞いた話ではありますが、「6年の8月の算数合宿からは、気持ちを入れ替えてやっていた」と言っていました。

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