中学受験では親のかかわりも欠かせないと言われています。都内で中学受験指導塾「應修会」を主宰する茂山起龍(きりゅう)さんは、受験後も教え子たちと交流を続けるなかで、中学受験生たちの“その後”を見つめ続けています。AERA with Kids+の連載「中学受験、その先に」。今回は、「子どもの“好き”」を応援し続け、軸がブレなかった保護者のエピソードから、受験における親のスタンスで大切にしたいことを考えます。

MENU 子どもが好きなことに、親もとことん付き合う かなわないのなら、次のステージで頑張ればいい 「第1志望校であり、唯一の志望校」 偏差値や倍率より、「子どもに合う環境があるか」

子どもが好きなことに、親もとことん付き合う

――中学受験で印象に残っている親御さんはいらっしゃいますか。

 僕自身も子どもを持つ親として、中学受験に対しての考えがブレそうになったとき、いつも思い出す親御さんがいます。男の子2人と女の子1人の3人を育てる保護者の方で、上2人の兄弟は、僕の塾に通っていました。

 兄は、自然のなかでアオダイショウを見つけては素手で捕まえるような、大の生き物好き。家族と車で虫捕りに出かけ、カマキリの卵を見つけ木の枝ごと持ち帰るも、寝てしまい枝を置き忘れ、気づけば車の中で卵が大量に孵化(ふか)していた――。そんなエピソードに事欠かない児童でした。

 親御さんも子どもの生き物が好きな気持ちを理解し、ちゃんと面白がれる方々でした。先のアオダイショウを例にとっても、「危ないから、手放しなさい」ではなく、「基本的には危険はない。けれど人間の手の温度は高いから、ヘビにとってはよくない」。そう理論立てて説明ができる。

「動物をお金では買わない、自然のなかで捕まえた生き物をきちんと育てる」が、ご両親のモットーでしたが、それ以外は自由にさせていたようで、家の中は昆虫だらけだったようです。地方に珍しい昆虫がいると聞けば、家族で何時間も車を走らせ、山に入る。子どもが好きなことをするために、親も時間が許す限りとことん付き合う。そんなご両親でした。

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茂山起龍
中学受験塾「應修会」塾長 茂山起龍

しげやま・きりゅう/1986年生まれ。中学受験を経験し、大学附属校に入学。大学在学中から個別指導塾、大手進学塾などで中学受験指導に携わる。会社経営の傍ら、2011年、東京・西葛西に中学受験指導塾「應修会」を開校。自らも教壇に立って指導を行う。中学2年、小学6年の男子の父。X(旧Twitter)での中学受験についての発信も人気で、フォロワーは1万人を超える。X: @kiryushigeyama

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