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ボッチャのボールを持つ運転士の大森さん。「3人1組でプレーするボッチャは、チームワークが重要」と語る

08 新たなフィールドで輝く運転士や車掌たち “乗務の枠”の外に広がる可能性

埼玉県の大宮と神奈川県の大船を結ぶ京浜東北・根岸線を担当する大田運輸区。乗務という枠にとらわれずに己の可能性を試し、より良い輸送サービスに貢献しようと邁進する乗務員たちがいる。東京2020オリンピック・パラリンピックを見据え、挑戦を続ける運転士や車掌の姿を追った。

文/音部 美穂 撮影/吉場 正和 デザイン/スープアップデザインズ 企画・制作/ AERA dot. AD セクション

《ラインはブルー、気分はハッピー》

《明るい未来に向けて、今日を良き日に。》

昨年夏、気持ちが明るくなる言葉とともに京浜東北・根岸線のラッピング車両が大宮~大船間を走った。同沿線の名物や車窓の景色をデザインしたこのラッピング車両は、SNS上などで大きな話題を呼んだ。しかし、この企画とデザインを手掛けたのが京浜東北・根岸線の現役運転士であることは、あまり知られていない。運転士歴4年の鈴木裕理子さんは入社前、日本画を勉強していた経験から、これまでも勤務の傍らで常磐線120周年のロゴデザインなどを手掛けてきた。

「京浜東北・根岸線には車両が1種類しかありません。もっと車両の魅力を向上させ、お客さまに喜んでいただけたらという思いから、ラッピングを企画しました」

同線は、四つの職場(大田運輸区、さいたま車掌区、さいたま運転区、横浜運輸区)にまたがっているため、各区にも協力を依頼。各エリアから寄せられた沿線の名物などのモチーフやメッセージをもとに、鈴木さんがデザインを仕上げていった。

構想から1年。ラッピングされた車両を見た時には万感の思いがこみ上げた。

「新型コロナウイルス感染症の影響で大変な思いをしている方がいる状況下で、ラッピング車両を走らせるのがふさわしいのか、何度も悩みました。しかし、同僚や上司が『こんな時代だからこそ走らせよう』と背中を押してくれた。乗車してくださるお客さまや沿線に住む方々の心が少しでも明るくなったら……という思いから、デザインやメッセージも見直しました」

ラッピング車両が走った約2カ月の間、SNS上には、多数の写真とともに「ほっこりする」「いいことありそう」などのコメントがアップされた。

「親子連れのお客さまが見に来てくれたり、沿線で写真を撮っている人が増えたり、本当にうれしかったです」

多くの人を巻き込んで企画、実行する経験を得た鈴木さん。JR東日本では社員の力を引き出し、多様な人材を育成するべく公募制異動の仕組みがあり、鈴木さんもこれに応募。今後は、運転士とは異なるフィールドで自分の可能性を広げていく予定だ。

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ラッピングデザインについて「車両のブルーを基調に、沿線の街に溶け込むデザインを意識した」と語る運転士の鈴木さん

車掌と企画部門を兼務 二つの視点を持つという強み

鈴木さん同様、自らの可能性を試そうと公募制異動に手を挙げる社員は多い。その一人である石黒康志さんは、車掌歴15年のベテラン。異動に応募した背景について石黒さんは次のように語る。

「後輩の指導育成に携わる中で、時代に合った育成法が必要だと実感。そのためにも、まず自分が成長しなければと思い、乗務員とは別のフィールドで経験を積みたいと考えました」

JR東日本の企画部門では、鉄道沿線の価値を向上させ、沿線に住む人々の生活をより快適にするための事業に取り組んでいる。石黒さんも異動によって、その仕事に身を投じた。

「同じ社内とはいえ、風土や文化が違うため、転職したような気分でした。業務内容はもちろん、専門用語などもあり、初めて目にするものばかりでしたが、上司、同僚に助けてもらい、一つひとつ課題を乗り越えてきました」

企画部門で働き始めてから約1年半が経った昨年夏、新たな転機が訪れた。それが企画部門と車掌業務との兼務だ。これは多様な働き方の一環として始まった施策。石黒さんの場合、午前中は京浜東北・根岸線に乗務し、午後は企画部門での仕事に従事するという日が週1~2日ある。

「企画部門の仕事だけをやっていると、事業者視点になりがちですが、車掌業務でお客さまと接していることで、お客さまの視点で物事を考えることができる。一方、企画部門で学んだ収支の知識を生かして現場の動きを考えるなど、兼務によるメリットは大きいと考えています」

東京2020大会開催時には、競技終了時刻に合わせ、深夜輸送が増えることも想定されるが、「そのような時に、双方の視点を持ち合わせているのは大きな強みになるはず」と胸を張る。

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「安全・安心な運行に寄与すると共に、兼務の経験を生かしたい」と語る車掌の石黒さん。今後は、現場発信の企画などの支援を行っていきたいと意気込んでいる

インドへの留学経験をおもてなしに生かす

運転士の大森いずみさんも、東京2020大会への準備を進めてきた一人。海外からのお客さまの案内用に、駅や車内放送でよく使うフレーズを集めたポケット英会話集を作成。同僚からも好評だ。

「ホーム上で外国のお客さまに話しかけられた際、鞄からタブレットを取り出してご案内していると時間がかかってしまう。その点、ポケット会話集なら、制服の胸ポケットからサッと取り出して、スムーズにご案内ができます」

社内で英会話の勉強会も主催している大森さんだが、実はもともと英語に苦手意識があったそうだ。その意識を変えたのが、昨年1~3月にかけてすごしたインドでの日々。社内の短期留学プログラムに応募して現地の語学学校で英語を学び、インドの鉄道事情などの調査も行った。

「留学中は、語学だけでなく文化や風習面への不安もありました。それは、来日されるお客さまも同じかもしれない。慣れない土地で不安を抱えている方のお役に立ちたいと思っています」

また「パラスポーツへの理解を深めたい」という思いから、パラリンピックの競技になっているボッチャに興味を持ち、JR東日本グループのボッチャ大会に上司や同僚とともに出場。見事、優勝を果たした。「今後は企画部門でJR東日本の鉄道の魅力を海外に発信する仕事をしたい」と目を輝かせる。

広がる乗務員の可能性。それは、鉄道のさらなる安全・安心や沿線の魅力向上につながる大きなパワーを秘めている。

JR 東日本は、東京2020 オリンピック・
パラリンピックを応援しています。

東京2020オフィシャルパートナー(旅客鉄道輸送サービス)

※取材は新型コロナウイルス感染症対策を万全にして実施しました。

記事の掲載内容は3月末日時点のものです。