日常を支える。鉄道を超える。JR東日本の挑戦

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時刻表を手に、乗り換え案内を行う中島さん。車内販売から各種案内へと、
業務の主軸は移っている。乗客との新しいコミュニケーションが増えた

04 “移動空間”の価値を向上 新サービスの創造が旅を変える

車内販売が変わった。いや正確には、車内でのサービスそのものが変化しているのだ。昨年誕生したJR東日本サービスクリエーションは、多様化する乗客のニーズに合わせ、移動そのものの価値を向上させる新たなサービスの創造に向けて動き出した。

文/武田 洋子 撮影/吉場 正和 デザイン/スープアップデザインズ 企画・制作/ AERA dot. AD セクション

1日の平均乗車人員が約79万人の新宿駅から、ほんの小1時間。車窓には深い山の連なりが迫る。くっきりとした富士山の姿に、南アルプスの甲斐駒ケ岳、八ケ岳。「特急あずさ」車内では、ビジネスパーソンと観光・登山者が半々くらい、それぞれに寛いでいる。時刻表を手に乗り換えの案内をしてくれたのは、車掌ではなく、先ほど車内販売のワゴンを押していた女性アテンダントだ。

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乗務の前後には点呼を行い、情報共有。車内の出来事からサービスのヒントが見つかることもある

観光客の多い路線 旅の思い出を彩る

車内サービスを事業とするJR東日本サービスクリエーションは、「ヒトを起点とした新たな価値・サービスの創造」を実現するために昨年の4月に設立された。その松本列車営業支店を訪ねた。同支店が担当する列車は、「特急あずさ」「おいこっと」「リゾートビューふるさと」「ナイトビュー姨捨おばすてHIGH RAILハイレール 1375」だ。のどかな里山や南アルプス連峰を一望できる車窓が、旅情をかきたてる。乗客にとっては移動中の車内も大切な旅の一部だ。多様化するニーズに合わせ、移動空間の価値をさらに向上させるために、松本列車営業支店ではさまざまな取り組みを行っている。

アテンダントの中島千絵さんは、現在、支店のリーダーを務めている。車内販売の経験は20年以上のベテランだ。

「18歳のとき、自分が何をしたいのかわからないまま親に勧められてこの仕事を選びましたが、楽しくてあっという間に今日までやってきました」

もともと、人と接するのが好きだった。車内販売で商品を紹介したり、その際に二言三言会話したりするのがうれしかったという。新会社設立を機に、アテンダントの職務の幅は広がった。その一つがワゴンを押さず、エプロンも外して行う車内の巡回だ。

「お客さまがちょっと気になっていることを、車内販売のときより私たちに質問しやすいようです。例えば、乗り換えだったり、窓から見える山の名前だったり。おかげで、お客さまとコミュニケーションを図る機会が増えました」

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山口さんが講師となって開かれた、スマホの翻訳アプリを有効活用する勉強会。巾田孝道支店長も参加

対応できることが増え 仕事の可能性も広がる

リーダーとして後輩の指導にもあたる中島さんを支えるのが、岩下吉則さんと山口純平さんだ。「ヒト」にしかできないサービスを創造するためのチーム編成で、二人は支援者のポジションを務める。乗客とのコミュニケーションが増えたのは喜ばしいが、その分、必要な知識も爆発的に増えている。岩下さんは、アテンダントが何を聞かれてもいいように、虎の巻を作って配布した。

「お客さまからよく聞かれるのは、乗り換えに便利な出口やエレベーターの位置など降車駅の設備案内です。そのため、停車駅一つひとつに足を運んで必要な情報をまとめました。我ながらかなりアナログでしたね(笑)。あとは代表的な山の名前を車窓からの写真付きで入れた路線図も作っています」(岩下さん)

もちろん外国人観光客からの問いも多い。山口さんは、貸与されるスマホに入れた翻訳アプリの使い方や、ロールプレイングによる英会話講座を定期的に開催し、外国語対応の教育を担当する。

「車内サービスで何ができるのか。今はまだ過渡期と言えます。新しい創造の余地は多々ありますが、あれこれ模索する中で最も参考になるのが、中島さんたち現場のアテンダントから上がってくる情報です。彼ら彼女らが肌で感じるお客さまのニーズを、積極的に反映していきたいと思っています」(山口さん)

列車内サービスのプロとして、IT技術を活用した運行情報の提供や乗客一人ひとりのニーズに応じた車内販売など、きめ細かなアテンドを目指すほか、サービス提供のプロとしても、マナー研修など基本的な部分に力を入れていく予定だ。新しく覚えることは多い。

「お客さまから、今までとはまた違う『ありがとう』をいただけるのはうれしいですね。こんなふうに自分の可能性が広がるなんて思ってもみませんでした。10年後、20年後もどうなっているか予測できなくて、楽しみ。だからこの仕事がずっと好きで仕方がないんです。今はインプットが大変ですが、会社の成長に向けて、共に頑張らないと」(中島さん)

巡回のときは乗客の様子にも気を配る。アテンダントが車内で具合の悪い方に声をかけ、多目的ルームで休んでもらったところ、あとから礼状が届いたこともあった。そうした感謝の言葉が、中島さんたちのモチベーションになる。

技術の革新で、移動時間はこの先さらに短くなるのかもしれない。たとえそうであってもアテンダントとのコミュニケーションも旅を彩る大切な要素なのだ。記憶に残る会話や気配り──きっとそれが、ヒトにしかできないサービスにつながるのだろう。

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右から山口さん、岩下さん、中島さん。山口さんと岩下さんは、時折アテンダントとして乗務しながらも、舞台裏では支店を支える頼もしい支援者だ

ヒトの温かさ感じる
サービスのプロフェッショナル

エキナカ店舗が充実するにつれ、弁当や飲み物を駅で購入する層が増え、車内販売の需要は減少した。車内サービスを取り巻く環境が変化する中で、今後もより魅力的な移動空間を提供し続けるためには新しい観点に立ったサービスの創造が不可欠だ。JR東日本サービスクリエーションは、その課題にスピード感を持って取り組むために誕生した。「列車内サービスのプロ」と「サービス提供のプロ」として、「ヒト」にしかできない温かなサービスを目指す。

ヒトの温かさ感じるサービスのプロフェッショナル