日常を支える。鉄道を超える。JR東日本の挑戦

〈PR〉

ヘッダーイメージ

上武さんによれば、栃木は日本酒やカクテルも美味だそう。
「遊びにいらっしゃる際は、ぜひ鉄道をご利用ください」

02 社員の声が実を結ぶプロジェクト 国際的観光地でおもてなしを体現

「日本のお客さまに提供する質の高いサービスを、外国のお客さまにも提供しなければいけない」。多言語案内用のアプリを手作りし、乗務員の英語に対する苦手意識をなくすために、様々な工夫を凝らしてきた宇都宮車掌区。ここには「おもてなし」の心が受け継がれている。

文/武田 洋子 撮影/吉場 正和 デザイン/スープアップデザインズ 企画・制作/ AERA dot. AD セクション

東照宮や輪王寺など世界遺産に登録された社寺、華厳の滝、中禅寺湖。令和の時代も色あせない魅力を放つ栃木県日光は、訪日観光客の間で、都心から気軽に足を延ばせる名所として人気が高い。日光へのアクセス路線である日光線を担当する宇都宮車掌区では、早くから外国人利用者へのサービス向上に向き合ってきた。今ではJR線でよく聞かれるようになった多言語による車内放送の先駆けは、実はこの日光線である。

2014年6月、日光線乗務の車掌が発案し、英語での車内放送が始まった。タブレット端末から録音されたメッセージを選んで放送するもので、メッセージを吹き込んだのは語学の堪能な社員。手作り感にあふれていた。以来、昨年12月には中国語とスペイン語が追加されるなど、多言語案内はどんどん進化している。このように社員のアイデアが実を結ぶのは、全社的に委員会やプロジェクトが盛んで新しいことに挑戦できる文化があるからだ。

イメージ

乗務前には管理者と点呼を行う。時刻表が管理者のデータと同じであることを確認し、時計を合わせ、最後に敬礼する及川さん。身が引き締まる一瞬だ

サービス向上を目指し 社員の意識変革も後押し

宇都宮駅日光線のホームに、側面に龍や鳳凰、唐獅子が描かれ、シックな色合いがレトロで目を惹く電車が止まっている。日光線を走る車両の一つ、「いろは」だ。日光へ向かう乗客は、そのほとんどが大きなトランクを引いた訪日観光客だった。宇都宮車掌区の外国客向けプロジェクトが多彩である理由がよくわかる。

車掌になって3年目の上武寛明さんは、受け持つ路線の中で日光線が一番好きだという。

「高校の通学で使っていて、思い入れがあります。宇都宮から日光まで、徐々に勾配を上っていく車窓も楽しいですね」

上武さんは今、列車への乗務の傍ら業務研究プロジェクトのリーダーを務めている。取り組んでいるテーマは防災だ。

「乗務員が災害発生時に避難を促すためのツールは何度も検討を重ねていますが、それが本当に外国のお客さまにとって最適なのか、検証が不十分でした。そこで宇都宮市内の大学にお願いし、留学生の協力を仰いで防災訓練を行うことにしたのです。現在は業務研究メンバー8人でスケジュールや内容の調整を行っているところです」

外国人を対象とした防災訓練は初の試みだ。外部機関と連携し、課題を洗い出す。そして再び訓練で検証するというPDCAが、これから定着していくことが期待される。

上武さんの同僚である及川和輝さんは、共に防災訓練を担当している。訓練実施日に向けて忙しい毎日を送る及川さんが好きなのは、東京や池袋など都心へ向かう路線だ。

「のどかな風景から高層ビル群へと大きく変化する車窓に、『日本の中心で輸送を支えている』気持ちを新たにします」

及川さんはまた、社員の発意で業務の改善を行う仕組みである「マイプロジェクト」リーダーでもある。

「多言語案内のアイデアも『マイプロジェクト』から始まりました。今考えているのは、お客さまのほしいタイミングで情報をお伝えする手段です。車内を見ると音楽を聴いているお客さまが多く、車内放送を聞き逃すこともあるかと思います。そこで車内広告や二次元バーコードなどの新しい方法で、いつでも情報にアクセスできる環境を作りたいのです」

イメージ

シミュレーターで訓練をする吉原さん。ホームや車内、線路上など、乗務中は広い視野が求められる

吉原裕輝さんは、職場内のグローバルプロジェクトのリーダーとしてこれまで、海外の宗教や歴史文化を学び、社内の英語推進をはじめとするサービス向上に取り組んできた。

「グループの経営ビジョンに、輸送や生活サービスのグローバルな展開が掲げられているなかで、乗務員の英語力の差がサービスに影響していてはいけません。英語への苦手意識を軽減するよう、日頃から職場内の掲示物に工夫をしています」

オフィスのトイレや荷物置き場、自動販売機などには、関連する英単語が貼ってある。なるほど、毎日見ていれば意識しなくても覚えてしまうだろう。

「駅の構内でも使える単語ばかりです。うまく話せなくてもいい、困っている方を見過ごさないことが重要なのです」

乗務時間の違いから3人が会うことはほとんどないが、社内イントラネットで情報を共有しているため、プロジェクト間の連携は円滑だ。

受け継がれていく心 全てのお客さまにおもてなしを

吉原さんが指摘したグローバル化に対する社員の温度差は、上武さんも及川さんも同様に感じている課題だという。

「誰しも海外でもっとも不安なのは移動のときではないでしょうか。『おもてなし』を公言している日本で、『人が冷たい』と思われてはいけません。カタコトであってもいい、一歩踏み出して外国からのお客さまに寄り添う姿勢こそが『おもてなし』の心意気だと考えています」(及川さん)

「かと言って、外国の方ばかりを意識するわけではありません。日本の方にも外国の方にも、安全・安定輸送はもちろん、等しく高いレベルのサービスを提供することが目標です」(上武さん)

名所・名産の多い栃木県と都心を結ぶ宇都宮車掌区。その日は新人車掌の研修が行われていた。彼らはしばらく先輩と共に乗務して経験を積み、遠からず独り立ちをする。先人が実用化した多言語案内を、上武さんはじめ、現場社員が発展させている。次の世代は、一体どんな工夫をするのだろうか。東京2020オリンピック・パラリンピックでも、訪日観光客に最高の「おもてなし」を期待したい。

JR 東日本は、東京2020 オリンピック・
パラリンピックを応援しています。

東京2020オフィシャルパートナー(旅客鉄道輸送サービス)