社会がめまぐるしく変化する今、教育の重要性は高まり、
学校選びの視座も多様化しています。
『偏差値だけに頼らない中高一貫校選び2023』では、
中学受験や中高一貫校を多角的に取材しました。
中学受験をさせようかどうか、迷っている……。
そんな家庭へ向けて、保護者が押さえておきたい
「中学受験 vs. 高校受験」という視点を紹介します。

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デザイン/CS:Design、ナウヒア 制作/朝日新聞出版メディアプロデュース部ブランドスタジオ
企画/AERA dot.ADセクション、株式会社シーエム

偏差値だけに頼らない 中高一貫校選び 2023

「わが子には世の中を生き抜く力を身につけてほしい」「わが子の可能性を信じて、より伸ばしてあげたい」という思いから、中高一貫校を選ぶ家庭が増えています。学歴だけではもはや渡り切れない未来に備えるため、偏差値という物差しにとらわれることなく、一人ひとりのお子さんにとっての「最高の学校」を見つけるお手伝いができれば……。そんな思いからさまざまな角度で中学受験や中高一貫校を取材し、「偏差値だけに頼らない 中高一貫校選び2023」を本年も発行いたしました。みなさまの「偏差値だけに頼らない」学校選びの一助となれば幸いです。

『偏差値だけに頼らない中高一貫校選び 2023』(2022年6月30日発売 朝日新聞出版発行)の芝国際中学校・高等学校(申請中)のPR頁にて、開校準備室室長の小野正人氏の紹介プロフィールが誤っておりました。正しくは、「元東京都市大中高校長・元村田女子高校(現広尾小石川中高)校長・元須磨学園中高副校長」です。
深くお詫び申し上げますとともに、訂正させていただきます。(株式会社シーエム)

WEB座談会

選ばれる私学

中学受験 vs. 高校受験
親の心構え

視点1
いつかは通る「受験」
仕組みと違いを知る
いつかは通らなければならない、受験の道。
まずは現在の中学受験、高校受験の仕組みについて知るところから始めましょう。
文=木下昌子
藤田利通さん

教えてくれる人藤田利通 さん

栄光ゼミナール教務責任者。中学受験・高校受験指導歴30年以上で、算数、数学、理科を担当。教室で指導を続けながら教材やテスト、情報誌の制作なども行っている。

 公立中高一貫校の適性検査型入試、英語入試などいくつかの例外はあるものの、中学受験では大半の学校が算国理社の4教科、あるいは算国2教科の科目別学力検査により選抜を行う。これと比較すると、高校受験のシステムはやや複雑だ。
 栄光ゼミナールの藤田利通さんによると、中学受験との主な違いは推薦入試があることと、出願や合否の判定に調査書点(内申点)が用いられることだという(下表参照)。
「高校受験で調査書点が合否に関係しないのは、私立校の一般入試のみ。推薦入試の場合、調査書点が基準に満たなければ出願ができません」
 調査書点に記載される成績の範囲は都道府県ごとに異なり、東京都では中学3年の2学期の成績が主な対象となる。
「調査書には学校生活全般の評価も記載されるので、提出物の期日を守る、学校行事に積極的に参加するといった心がけも大切です。習い事など学校外の活動は、私立校の調査書では加点要素になります」
 なお東京都の多くの都立、私立高校では推薦入試は例年1月、一般入試は2月に実施され、受験生は一つの学校に推薦・一般の両方で出願できる。ただし不合格となる可能性があるため都立志望でも、私立との併願は実質上必須だ。

英語の先取り学習で高校受験が有利に

 近年の中学受験は学校の選択肢が増え、志望校選びの視点も多様化している。
「2021年の大学入試改革以降、大学付属校や指定校推薦枠の多い学校は引き続き人気。うちの子は勉強嫌いだからと決めつけず、チャンスがあるなら挑戦してほしい」と藤田さん。一方、高校受験をする場合は、コツコツと積み上げた努力が調査書点として評価される、小学生から英語を先取り学習できるというメリットがあるという。
「英語ができると高校受験に有利です。都立高校の入試にスピーキングテストが導入される予定もありますし、今後ますます英語で差がつくのでは、と思います」
 子どもが小学生で迎える受験と、中学生で迎える受験では、親の関わり方も変わる。
「中学受験では健康管理も含めた親の全面的なサポートが必要ですが、子どもが思春期に入る高校受験では、ある程度、距離を保って見守るのが正解です。勉強面のサポートは学校の先生や塾の先生にお任せしましょう」

高校受験の基礎知識
視点2
子どもの発達段階から考える
受験の時期と学校選び
12歳で受験するのか、15歳で受験するのか?
教育ジャーナリストのおおたとしまささんに、
多角的な観点からアドバイスをもらいました。
文=木下昌子
おおたとしまささん

教えてくれる人おおたとしまさ さん

1973年東京都出身。教育ジャーナリスト。いい学校とは何か、いい教育とは何かをテーマに教育現場のリアルを描き続けている。著書は『なぜ中学受験するのか?』(光文社)ほか70冊以上。

 日々の塾通いと宿題、週末のテストや模試など、中学受験には数々の試練が伴う。高校受験では子どもが成長するぶん、体力的な負荷は減るものの、中学受験にはない難しさがある。教育ジャーナリストのおおたとしまささんが指摘するのは、思春期の子どもが受験勉強に取り組むことの弊害だ。
「15歳の思春期は、さまざまな葛藤や反発を経験する時期。偏差値や内申点のことばかり考えていたら、大人になるための精神的土台を作ることはできません。この年頃の子どもに受験勉強をさせる国は、先進国の中では非常にまれです」
 おおたさんは、過酷さを増す昨今の中学受験については「決して正しい状態とは思わない」と前置きしつつ、高校受験のない中高一貫校で豊かな思春期を過ごす経験は、子どもにとってかけがえのない財産になると語る。
「高校受験は『勉強と反抗期の両立』がテーマです。両立できないときは、子どもの人生に与える影響を考えて、反抗期を優先すべきでしょう。親御さんにはそういう覚悟を持ってほしいとも思います」

学校選びのポイントは子どもの目の輝き

 取材で数多くの学校を訪れてきたおおたさんによると、私立校には「ハビトゥス」と言われる、その学校独特の「佇まい」があるという。偏差値が学力に合った学校選びの指針になるのに対し、ハビトゥスは子どもの性格や「このように育ってほしい」という親の思い、家庭の価値観に合う学校選びの指針になる。
「ハビトゥスはその学校の建学精神が受け継がれたものなので、建学者について書かれた伝記や学校資料などを読むと、なんとなく感じ取れるはずです。校長の話し方や雰囲気、国語の入試問題で取り上げた文章などにも、ハビトゥスは表れると言えます」
 学校選びは子どもの意見が最優先だが、その学校は本当に子どもに合っているのか、冷静な目で見極めるのは親の仕事だ。
「ポイントは目の輝き。焚き火を囲んでいるときのような、落ち着いているけれど生き生きとした目。そういう目を見せてくれたとき、子どもは自分にとっての正解を見つけています。そんな学校と出合えたら、親御さんはそっと背中を押してあげてほしい」
 中学受験は子どもが自分に合った居場所を見つけるための過程で、人間の能力を総合的に測るものではない。子どもによって最適な居場所が違う以上、受験スタイルも家庭によって違っていい、というのがおおたさんの意見だ。
「中学受験は、もっと多様化していい。『うちにはうちのやり方があって、その結果、合格できる学校がうちの子にとってベストの学校なんです』と言える親御さんが増えれば、状況は少しずつ変わると思います」

保護者が考える中学受験・高校受験のメリット
視点3
中学受験で得られるもの、
中高一貫校で得られるもの
厳しい受験を乗り越えて、手にする中高6年間。
中学受験生から大学受験生までを指導する人気家庭教師に、
中学受験の意義を聞きました。
文=木下昌子
長谷川智也さん

教えてくれる人長谷川智也 さん

プロ家庭教師。東京大学卒業後、大手塾に勤務、人気講師になる。中学受験から高校受験、大学受験までカバー。著書に『中学受験自走モードにするために親ができること』(講談社)。戦国バトルメタルバンド「Allegiance Reign」でベースもつとめる。
https://ameblo.jp/jyukuko/

 受験指導のプロである長谷川智也さんから見ても、ここ数年の中学受験は予想外の過熱ぶりだという。
「2022年は受験者数と競争倍率が過去最高。上位層も厚くて、本当に過酷でした。少子化の影響で、本来ならば少し落ち着くはずなんですけどね」
 しかし、そんなシビアな戦いを乗り越えなければならないとしても、中高一貫校への進学にはメリットが多いと長谷川さんは語る。高校受験を気にせず部活や趣味に打ち込めること、友人と強い絆を築けること、さらには指導力の高い教師、将来をしっかりと見据えた生徒が多い学習環境の良さも、中高一貫校の特長と言えるだろう。
「6年間で大学受験に向けた学力を養うカリキュラムも、中高一貫校の魅力です。高校受験をする場合は、大学受験の勉強に割ける時間は3年間と短いので、もともとの才能がそのまま入試結果になりがち。中高一貫校で定期テスト対策や宿題をしっかりこなしていれば、ごく普通の才能の子でも難関大学に合格できる可能性があります」

受験で成功するのは自走モードになれた子

 一方、中学受験にはデメリットもある。たとえば、通塾や入学後にかかる高額な費用。また、中高一貫校に進学した子どもは「高校受験という中間地点がないため、学力の低下が見逃されるリスクがある」と長谷川さんは指摘する。 「よくあるのが、親主導で受験を乗り切った子どもが、中学進学後、成績不振に陥るケース。特に男子の上位校の中には、よくも悪くも『子どもの世話を焼かない学校』もあるので注意が必要です」
 長谷川さんの経験上、中学受験で成功するのは、「自走モード」になれた子どもだという。自走モードとは、「自転車をスイスイと漕ぐように、主体性を持って行動できる状態」のこと。「自分ができることは他人任せにせず、自分でする」習慣は、中学以降の学習や大学受験、社会人になってからの人生にも役立つ。中学受験を「子どもが自走モードを身につける機会」と捉えれば、親もあれこれ口出ししたくなる気持ちを抑えることができるだろう。
「子どもが自走モードになるためには、自信が不可欠です。大切なのは子どもを認め、受け入れる姿勢。初めは思い切りハードルを下げて、ささいなことでも『すごいね、よくできたね!』と、ほめてあげてほしい」
 自分から調べごとや宿題をやりはじめたら、それは子どもが自走モードに入ったサイン。あとは余計な口出しをせず、広い気持ちで見守りたい。
「親御さんはいざというときに子どもを励まし、支える存在でいてあげてください。入試本番直前からでも自走モードになれればその受験は大成功だと言えるし、その後、必ずプラスに転じていきます」

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※本記事は「偏差値だけに頼らない 中高一貫校選び 2023」本誌からの一部抜粋です。