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選ばれる 私学 子どもの力を伸ばす偏差値プラスアルファの教育

東大、京大、医学部進学実績校 関西編

グローバル化やデジタル化が進む世の中で、国境を超えて活躍する次世代リーダーにふさわしい人材育成が望まれている。また、コロナ禍により、教育現場だけでなく世界中が先行き不透明であり、だからこそ原点回帰して、他者とどう関わり、助け合って生きていくのかが重要となっている。そんななか、5月18日に、東大、京大、医学部への合格者を多数輩出する関西の7校が集まり、変わらず大切な教育と、今こそ注目されるべき先進的教育について、オンライン会議で熱く語り合った。
進学情報室長、教室統括部長などを歴任。私立中学教育を中心に講演会も多数。

Q1① 学校の特徴、変わらない教育

和田(灘)
 1927年、灘五郷の酒造家両嘉納家および山邑家の篤志を受けて創立されました。本校の校是は「精力善用・自他共栄」。創立時顧問の嘉納治五郎先生が、創設された講道館柔道の根本精神であり、自らの持てる力を最大限に発揮して、他者と助け合い、譲り合いながら、力を合わせて幸せな世の中を作っていこうという教えです。課題を発見し解決に努力する人物の輩出をめざし、学校側は自由な発想や、自主的に課題を見つけ解決法を考え出すための時間的・精神的余裕を保証。生徒側では自由をはき違えず、自律心を持って積極的に、友達や先輩後輩と力を合わせることで自らを伸ばしていくことを重視しています。
今西(甲陽学院)
 教育理念の根底には、大正時代の2人の創立者の思いがあります。関西教育界の第一人者で、自由な私学を求めて1917年に創設した初代校長の伊賀駒吉郎は、「桜桃梅李一時の春」という言葉を通して、生徒が育つのを助けるのが教育だとしました。お酒の「白鹿」醸造元の当主で財団設立者の辰馬吉左衛門が示したのは、「人を植うるは百年の計」という長期的視点です。これらに基づき、工業製品を作るように型にはまった人間を作ろうとしてはいけない、とか、短期的な損得勘定で動いてはいけないなどが基本姿勢となっています。
髙橋(六甲学院)
 カトリックの修道会イエズス会が1938年に創立し、進学面で優れた名門校として一目置かれる、世界約830校のイエズス会学校と共通する全人教育を伝統としています。教育目標は、他者に奉仕し社会をよりよく変えてゆくリーダーの養成です。そのために必要な4つの人間性(4C’s)として、世界の課題解決に必要な知性面・技能面の有能さ(Competence)、弱い立場の人々に共感する心(Compassion)、現状から何をすべきかを省察し見極める良心(Conscience)、現実社会と深く積極的にかかわる姿勢(Commitment)を掲げています。貧困や差別に苦しむ弱い立場の人たちに寄り添い、誰もが人間らしく生きることのできる社会の実現のために尽くす人=“Man for Others, with Others”を育てることが、教育のモットーとなっています。
西(須磨学園)
 学校法人須磨学園の歴史は、1922年に須磨裁縫女学校を創立したことに始まり、1999年に共学化、2004年には中学校を開校し、2022年に創立100周年を迎えます。開校以来の「清く、正しく、たくましく」という建学の精神は途切れることなく受け継がれ、さらに共学化以降は、「to be myself,...なりたい自分になる。そして…をスローガンとして、一人ひとりの自己実現を目指しています。「既存の枠組みにとらわれない実践的な学び」を教育方針に掲げ、生徒たちは知識の習得だけではなく、「経験を通して学ぶ」という「主体的な学び」を生き生きと実践しています。
阿南(洛星)
 カトリック精神に基づく全人教育を目標に掲げる本校は、1952年に創立。人は神によって創造され、無条件で愛されるもの。ですから、自己を肯定し、他の人の価値をも認めることができるよう、「心と頭と体のバランスのとれた人間を育てる」ことを教育方針としてきました。人の痛みに気づくことのできる、優しくて強い心を育み、考える力や答えのない難題にチャレンジする力の基礎を身につけ、学ぶ楽しさを知ってほしいと考えています。
松田(明星)
 本校の設立母体は、ローマに本部を持つ男子修道会・マリア会。1817年フランスのボルドーで創立以来、世界各国で約1000名の会員が約100の大学、高校、中学、小学校で青少年教育に成果を上げています。日本には1887年に、まず東京に、そして長崎、大阪、札幌に学園が創立されました。本学は、1898年設立のカトリックの男子校です。聖書の言葉である「地の塩、世の光」を全教室の正面に掲出。社会のあらゆる分野で核となって指導的な活躍をなし、他者のために働き得る「世の道しるべとなる明星紳士」の育成をめざしています。
鳥居(智辯学園和歌山)
 智辯学園は1965年、奈良県五條市に仏教の一派である辯天宗を母体として誕生。本校は、和歌山県による県内の私学教育に対する要請を受け、それが藤田照清大僧正の私学教育に懸ける熱意とが醸成した結果、1978年に開校を果たしました。以来、「誠実・明朗」を教育目標とし、知性あふれる、各分野で活躍できるリーダーを生むべく、豊かな人間性に力点を置いて、知性と情感を育む教育を実践しています。
  • 灘中学校・灘高等学校

    土曜講座の一コマ:日本初の教育用ブロックのプロビルダーとなった本校OBから、ブロックの組み立てや設計について学ぶ講座。

  • 甲陽学院中学校・高等学校

    【高等学校:大きな黒板を使った数学の授業】高等学校は、中学校から北へ約4㎞。

  • 六甲学院中学校・高等学校

    新入生と一緒に学校生活をおくる「指導員」の高校2年生。放課後の清掃の時間。左端には、広報Twitter※でおなじみ「くま先輩」の姿も。

  • 須磨学園高等学校・中学校

    実験を通じ科学的な考察を育む「探究理科」、論理的思考力を養う「探究数学」、実践的「英会話」など土曜日を利用し、独自のカリキュラムを実施している。

和田(灘)
 文部科学省は新指導要領にアクティブ・ラーニングを盛り込み、双方向型教育への転換を打ち出しましたが、本校の教育は従来から、教員と生徒のコラボレーションにより成り立っています。原則6年持ち上がり制の中で、教員は生徒たちの成長に合わせて興味・関心を大切に授業や教材の用意を行い、できる限り予習を促す形での課題を出し、個人やグループでのプレゼンテーションや質疑応答を大切にしています。6年一貫の中、生徒同士の気心が通じ合い、教員と生徒のコミュニケーションが普段から計れているからこそ成り立つ教育です。
今西(甲陽学院)
 生徒にはその自主性や自律の態度を尊重しています。6年間をかけて徐々に自律を身につけた大人として扱っていき、高校卒業する時には「甲陽は自由な学校だった」と思ってもらえるよう努めています。また、教員に対しても伝統的に、裁量を最大限尊重。授業内容や教材、進度などなるべく管理せず、いわば「個人商店の主人」や「偏屈な職人」風に授業をしてもらっています。
髙橋(六甲学院)
 生徒同士が切磋琢磨のなかで、自分の目指す人間へと成長する学校でありたいと考えています。そのために設けている「指導員制度」は中1の1学期を高2の先輩が世話をする仕組みで、中1には初めての「Man for Others, with Others」、時間も労力も心も自分たちのために向けてくれる憧れの先輩となり、「こうなりたい」という人間像を見出すことができます。さらに、「社会奉仕・図書・訓育」等の委員会活動やクラブ活動等の多彩な課外活動を通して、また体育祭や文化祭などの全校行事を共に作り上げていくなかで、先輩や同輩の優れた面を認め合い自分にとっての理想的なリーダー像を築き、人間的成長が促されてゆきます。
西(須磨学園)
 本校では、「なりたい自分」を実現するために「TBM( “to be myself” )」教育を行っています。これは本校の学園長・西和彦が考案したものです。新学期ごとに将来の夢や長期的なテーマについて考え、シートに記入します。自らの夢や目標を達成するために、週次で「するべきこと」を書き出すPM(プロジェクトマネジメント)と、それをいつするのかを明確にするTM(タイムマネジメント)を実施しています。「なりたい自分」をイメージしておくと、日々の取り組みが中身の濃いものになっていきます。このようなブレイクダウンとタスクの明確化は、学年が上がるにしたがって、「自分で考えて行動できる」主体性を育んでいくことにつながっています。
阿南(洛星)
 一人ひとりが活躍できる場を豊富に備えた学園として、学校行事を重視。コロナ禍でも感染症対策を十分に採りながら、文化祭を実施しています。全教員が顧問を受け持って推進しているクラブ活動も多様で、ロボットや天文、鉄道などの分野では、平素はあまり目立たない子も活躍を見せる場になっています。その際も、ごつごつ感を大切にした指導を心がけ、管理する側の都合で奪うことはしないよう、機会を与えられる、懐の深い学校でありたいと考えています。
松田(明星)
 限られた人生をどのように生きていくかを考えたとき、他者との関わりは必ず重要になってきます。少しでも家族や社会のために生きようと考え、この誠意と思いやりを通して生きる喜びを生徒たちには感じてもらいたい。「宗教」の授業では、他の教科で培った知識を基盤として、別の視点から人間のあり方について考えています。物事の背景や本質を読み取り、世界の諸問題を進んで「自分事」として受け止めることで、実践する姿勢が磨かれるのだと思っています。
鳥居(智辯学園和歌山)
 開校以来、情操教育を重んじ、「感謝祭」や「宗教の授業」等を通じて、感謝・思いやりの心を育み、将来社会貢献できる人を目指しています。また「日々の授業を大切にする」ことで知性を育んできました。個々の潜在能力を引き出し伸ばすため、単に知識だけでなく、発達段階に合わせて演習や教科内容等を深めて、思考・判断・表現力に重きを置き、知力を鍛えます。そして自ら学ぶ力、楽しさを得ることを目標にしています。

Q2 変わる教育

和田(灘)
 教育内容は不易な部分が多いですが、ツールとしてICT機器の整備が進み、生徒も1人1台コンピュータを装備する中、授業形態については随分と変化がみられるようになりました。コロナ禍でやむなく始まったオンラインやオンデマンドの授業形態も、進めていくうちにペーパーレスで資料が配れたり、あらかじめ出した課題をオンラインで提出してから対面授業に臨むことで授業の内容が深まったりと、ICT利用のメリットにも気づかされています。また、外部講師による授業もオンライン利用でハードルが下がった面があります。今後もさらに、本校ならではの教育に有用なICT活用法を目指し、ソフト面ハード面ともに整備に努めていきます。
今西(甲陽学院)
 伝統的、保守的といわれる本校でも時代と共に教育内容とその方法は変わり、ICT教育もグローバル教育も少しずつ取り入れています。ただし、教育に失敗は許されませんから、十分な吟味のうえで改革を進めるべき。また、表面的な改革に目を奪われて、授業の根幹をおろそかにしてはなりません。表面的な教え方の技術ではなく、教員自身が常にたくさんの本を読んで勉強・研究し、授業内容の理解を深めていく姿勢が大事です。
 また、本邦におけるコロナ禍対応のなかで学問や知性を軽んじる風潮も見受けられましたが、「いい大学」に合格することではなく「いい大学生」に育ってもらうことが進学校の使命です。そのためにまず生徒たちには、科学や学問や知性をリスペクトする態度を身に付けてほしいと思います。
髙橋(六甲学院)
 新校舎の最上階、5階部分に設けた「学習センター」は、神戸の街並みを一望でき、約6万冊の蔵書を持つほか、フロアを完全沈黙の「Silent」と多少しゃべってもよい「Quiet」のスペースに分け、グループで話しあうこともできる「レファレンスコーナー」、「グループ学習室」、「PCコーナー」も設置。図書館スペースの両側に多目的教室を備え、探究型授業の施設として、知性と教養と探究心を養う教育に役立てています。
 また、イエズス会学校としてのグローバルな教育において、これまでもニューヨークやインドへの研修旅行を実施し姉妹校交流をしてきましたが、コロナ後の1つの方向として、国を超えて信頼できるネットワーク構築を模索中です。たとえば、時差の少ないオーストラリアやシンガポール・香港の姉妹校とリモートでつないで、オンラインの交流会を検討しています。そのほか、全学年で毎月募金を実施している、インドにあるハンセン病患者の施設に、2年に一度希望者で訪問していますが、その療育施設の生徒たちとの交流もリモートで準備中です。
西(須磨学園)
 ICT教育は常に新しい取り組みを実践してきました。開校当初から、一人一台の制パソコン・制スマホを配布。危険性を教え、正しい使い方を学び、積極的に活用することで情報リテラシーの向上を図っています。コロナ禍で本校は「学びを止めない、学校を止めない」をスローガンに、全ての教科で通常の時間割通りに双方向のオンライン授業を行いました。調理実習や理科実験、部活動、海外の学校交流などもオンラインで行いました。
 ICT教育のほかに開校時から導入しているのが世界を1周する「海外研修旅行」です。
 生徒たちは異文化に対する心理的ハードルを下げ、オープンマインドで各国の学校交流に臨んでいます。
 本校の英語教育の方針は「音から入る」です。コミュニケーションの手段として、プラクティカルな英語を習得することを目的とし、「Phonetics」、「少人数の英会話」、「English Camp」、「Recitation Contest」などの様々なプログラムを実施しています。
阿南(洛星)
 本校のICT導入は、このコロナ禍で短期間に実現できました。この1年で授業はもちろん、恒例行事であった「京大キャンパスツアー」もオンラインで実施。それにより、京大だけでなく、東大や慶應大を訪問することができるようになりました。
 教皇フランシスコは、地球を「ともに暮らす家」と表現されましたが、その家がコロナ禍の今、悲鳴を上げています。「人類は皆、地球号に乗船しているのだ」と、改めて実感させられました。本校ではグローバル教育として、ハーバード大学での「次世代リーダー養成プログラム」を行っていますが、それだけでなく、本校を創立し、今日まで導いて下さっているカナダ・ヴィアトール修道会は、管区長をハイチ人が務めていますし、本校にはアフリカ・ブルキナファソ出身の神父もいます。これからも、欧米に偏らない、真のグローバルに目を向けていきます。
松田(明星)
 本校では、中1の最初に「学習How to講座」と称して、「中学校と小学校との勉強の違いは何か」「勉強するとはどういうことか」といった問いかけから始め、「本物の基礎力」を身につける学習方法について考える取り組みを行っています。
 また、対話力を重視したグローバル教育にも力を入れており、英語学習と探究学習を融合した「英語集中ディスカッション研修」や、ハーバード大での「次世代リーダー養成プログラム」などを実施しています。生徒にはアンコールワットの遺跡調査なども体験するカンボジア「ダイバーシティプログラム」が人気です。生徒が主体的に参加する課外の探究活動も盛んで、企業からの課題に取り組む「クエストエデュケーション」や稀少難治性疾患の方々への理解と支援を目指す「RDDプロジェクト」なども実施しています。
鳥居(智辯学園和歌山)
 本校生徒も1人1台のタブレットを所有することでICT教育を導入。教育ツールの導入により、日々の学習記録や行動の記録をまとめる中で、普段の学校生活では面と向かって言いにくい質問や相談を書いてくる生徒もいるなど、教員との密接なやり取りが可能となっています。また筆記試験の点数はまだ振るわない生徒がPowerPointでのプレゼン発表でユニークなテーマを探究し、堂々と発表する姿が見られました。さらに、レポート課題提出の際に参考文献の記載を義務づけることで、生徒がネット検索で出てきたワードや内容を疑う目をもち、正しい情報を取捨選択する習慣が身についてきたようにも感じています。情報社会で必要な「自ら考え、判断する力の増強」といった成果を実感しています。
 そのほか、課題活動としてSDGsに関する探究学習を実施。グループで数ヵ月かけて調査、考案を経て発表する経験が主体性を引き出しています。
  • 洛星中学校・高等学校

    京都の大学に留学している学生たちとの英語でのディスカッションを通して、これからの時代に何が必要かを考えるプログラム。

  • 明星中学校・明星高等学校

    高1「英語集中ディスカッション研修」。総合学習の授業で学習したグローバルイシューを主なテーマとして、3日間連続でディスカッションとプレゼンテーションを行う。

  • 智辯学園和歌山中学校・高等学校

    中学生には一人1台のタブレットを貸与。充分な授業時間を活用して探究学習・グループワークなどにも積極的に取り組んでいます。

Q3 変わる教育と進路選択

和田(灘)
 本校では伝統的にいわゆる「進路指導部」はありません。それは、生徒が学習を重ね、様々な経験を積んでいく中で、自分の興味関心を深め、それを活かせる将来の進路を自ら選択することが何より大切であると考えるからです。生徒が困った場合でも、6年一貫で見守ってきた担任団が相談に乗るのが最良だと思っています。
 ただ、「総合的探究の時間」の一環として、大学や社会で活躍する卒業生などに、自身の仕事や研究や趣味について講義や演習をしていただく「土曜講座」を設けています。同時に開催する7~8講座から選択受講できますので、生徒が自身の興味・関心を伸ばすことにつながるでしょう。講師も大学の研究者、医療関係者、官僚、弁護士、ベンチャー起業家、俳句の先生、音楽家など多種多様で、もう20年近く続けているため、生徒たちの進路選択に大いに刺激となっています。
今西(甲陽学院)
 本校では「進路は自分で決める」を旨としています。不確実性に満ちた時代ですので、社会の将来像から逆算するのではなく、いまの自分の好奇心や興味を大切にした進路選択をしてほしいのです。
 そこで、生徒たちの好奇心や興味を刺激するような出会いの提供に努めており、卒業生による講演会を開催したり、幅広い卒業生からの体験談を小冊子にまとめたりしています。そこからも「○○一筋」よりは、人生のステージごとに異なるコンセプトで生きていく現代人の姿が見えます。この状況をふまえて言えば、ぜひ中高時代を通じて一生学び続ける力を身につけてほしい。それは個別的な知識や技術を超えた力であって、例えば、「論理的に考える習慣」、「言葉の概念を正確につかんでおこうとする習慣」、「権威や権力にとらわれず真実を追求する姿勢」などです。
髙橋(六甲学院)
 本校では、先輩の姿から学び、憧れをもって進路を決める生徒が多くなっています。また、行事や社会奉仕活動の中で、自分を他者のために生かす喜びを味わいます。それを生きがいとして感じ、そういう実感を味わえる場を選ぶことが、進路選択の一つの基準になっています。
 格差や分断の進む多難なこの世界の課題に率先して取り組むリーダーとなり、より良い社会の実現に力を尽くす中で他者にもたらされる幸福を、ともに喜ぶ人間へと成長することが、進路の選定とつながってゆくと考えています。
 実際の卒業生にも、本校が1970年代から募金を続けているインドのハンセン病施設への訪問プログラムに参加して、90年代に京大法学部を出て、カンボジアの民法策定支援に従事した人がいますし、現在も上智の教育学部を経て東大の博士課程で学びつつ、東ティモールで現地の教育支援を行っている人もいます。施設の現場を見て医療の大切さに気づき医師を志す生徒も多くいます。在学中に新興国の状況を見て影響を受ける生徒は多いのです。身近なところでは、神戸市役所や兵庫県庁、地元の経済界や医療現場で実直に誠実に働いている、その姿で六甲学院の卒業生だと分かる人も多くいます。
西(須磨学園)
 本校ならではのTBM教育により、「やりたいこと」「なりたい自分」に向けて自分で進路選択ができています。卒業生の進学先は、学部も地域も多様で、国内では北海道から鹿児島県まで。そして海外難関大学にも進学しています。
 生徒にはやはり、自分で考えさせることが重要です。生徒は大学がゴールではなく、その先を見据え、自分の専門性を磨き、社会の中で果たす役割とは何かを入学してからずっと生徒に問いかけ、6年間を過ごしてもらっています。「須磨学園の生徒は優秀だね」と言われるよりも「面白いね」と言われる生徒を育てていきたいです。
阿南(洛星)
 本校でも卒業後の進路は多種多様です。茶道、華道や能楽などの古典芸能に従事する人、カトリックの神父、寺社の住職や宮司として活躍する人もいます。卒業生は世界中で活躍してくれていますが、アジア・アフリカで環境整備に取り組む人など、実にグローバルに活躍の場を広げています。そしてコロナ禍で対策の最前線に立つ姿がマスコミでも見られる、地元京都の府知事や医師会会長、京大病院院長、京都府立医大病院院長も輩出しています。
 嫌なことが起こらないことが幸せの条件ではありません。人生で困難に見舞われたときにも決して希望を失うことなく、家族や周りの人たちと力を合わせて乗り越えていくことができる、そのようなたくましさを備えた卒業生を育てたいと考えています。
松田(明星)
 日頃から生徒には、大学がゴールではないと伝えています。6年間を通して未来を俯瞰する力を身につけ、教科学習だけでは得られない体験や経験を大切にして、それらを自分の人生にどう生かしていくのか、これからの人生をどのように創造していくのかを常に考えながら進路選択をしてほしいと願っています。
 中1の生徒に「人生にとって何が大事か」と聞くと、「お金や友だち」という答えがほとんどです。しかし高3になると、それが「愛」になります。宗教の授業やホームルームの時間などで学ぶのでしょう。「愛」の意味が分かるようになるのですね。また、「喜びを感じる時は」と聞くと、「人のために尽くしたとき」と答えてくれるようになります。生徒たちは、このように考え方が成熟していくなかで、進路を考えるのです。
鳥居(智辯学園和歌山)
 本校では常々、人間性と知性の備わった人物であること、人や社会に貢献できるリーダーシップを持った人であることを目標にしています。6年間のゴールを望みうる高い目標の大学進学だけでなく、先の人生に照準を合わせた教育を目指しています。
 目標に向かって懸命にチャレンジする「生徒」、学校の教育方針を理解して支える「保護者」、そしてそれに応えて情熱を持って頑張る「教員」という三位一体の教育環境が伝統になっています。
 卒業生による講演会やオンラインによるプレゼンテーションも毎年、在校生に向けて行われています。大学の研究者、医師、弁護士、裁判官、企業経営者、国・地方の行政を支える者、プロ野球選手等、社会で活躍する卒業生の姿は、生徒の進路選択の大きな指針となっています。

Q4 メッセージ

和田(灘)
 本校には、実に個性豊かな生徒が集まっています。そのなかで自分の個性を伸ばしたいというお子さんに、ぜひ来ていただきたいですね。また、卒業生の進路も個性豊かです。印象的なところでいえば、落語家もいれば音楽家もいる。医師でも、福島の被災地に寄り添う人から、コロナ対策で手製のフェイスシールドを開発した人もいる。そんな多彩な先輩OBについて、『未来への授業』という書籍にまとめてもいますので、興味を持ってもらえれば幸いです。
今西(甲陽学院)
 先ほど、「未来」というお話がありましたが、「人生100年時代」といわれるように、これから生徒たちは長い時間を生きていきます。その未来の社会がどのようなものになっているかは、誰にも分かりません。そのなかで生きていくわけですから、「今」だけの発想では間に合わないでしょう。「自分」だけが良くてもいけませんし、世の中の価値観も多様化していますから「お金」だけでもない。だからこそ、中高でたくさんのことを経験しておいてもらいたいと思います。
髙橋(六甲学院)
 本学では、2021年の国語中学入試の出題文としてユヴァル・ノア・ハラリ氏の「人類はコロナウイルスといかに闘うべきか」を取り上げています。感染症克服の歴史や変異種にも触れつつ、連帯と団結が人類にとって一番大事なのだということが述べられています。そして、信頼や情報共有、国や地域を越えて支援することが大事なのだということをメッセージとして発信しています。これは、受験生や保護者の方にも通底するメッセージだと思います。ぜひ、これからコロナ後の世界を創ってゆく若い世代には、信頼で結ばれるネットワークづくりを大事にしていただきたい。中高の6年間も、そのための大事な期間と捉えてみてください。
西(須磨学園)
 本学は、須磨学園としては来年100周年を迎えますが、男女共学の須磨学園高等学校へと大きく方向転換をしてからは23回目の入学生、中学を開校してからは18回目の入学生を迎えたところで、6年間を過ごした卒業生もまだ多くはありません。ですが、プロジェクトマネジメント(PM)やタイムマネジメント(TM)といった手法を取り入れ、「なりたい自分」を実現できるよう、そのやり方を伝えています。卒業後もユニークな発想ができるよう、6年間でいろいろなことを経験して、自分が本当に面白いと思えるものを見つけてもらいたいです。
阿南(洛星)
 大ベストセラー『置かれた場所で咲きなさい』の著者である、カトリックのシスター渡辺和子先生の言葉に「子どもたちは、親や教師の『いう通り』にはなりません。『する通り』になっていくものです」というのがあります。教育界で受け継がれている言葉で、全くそのとおりだと思います。大人は生き方を示すことが大事でしょう。生徒たちのお手本になる教職員や学校でありたいと考えています。
松田(明星)
 123年の歴史と伝統を誇る本校ですが、明星の歴史は生徒と教員が一緒になって作り上げたものです。同じ釜の飯の仲間が「人生の財産になる」とは、卒業生みなが口をそろえていうことです。まさに、学校でしか得られないさまざまな体験や経験が、一人ひとりの人生に栄養を与えてくれるということでしょう。「人生の土台を築く明星教育」をぜひ、知っていただきたいです。
鳥居(智辯学園和歌山)
 本校の生徒がよく言っているのは「勉学は厳しいが学校生活は楽しい」ということ。互いに切磋琢磨して高め合える仲間が多く集まってきますので伸び伸びと学んで、何事にも意欲的にチャレンジしてもらいたいです。そして我が校としても生徒の夢や目標が実現できるようサポートする学校でありたいと強く考えています。「智辯和歌山に来てよかった」と言われるよう、教職員一同たゆまぬ努力を続けて参ります。
森永
本日はありがとうございました。
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学校紹介

  • 灘中学校・灘高等学校

    「精力善用・自他共栄」で他者と助け合い課題解決を
     本校の校是は「精力善用・自他共栄」。創立時顧問の嘉納治五郎先生が、創設された講道館柔道の根本精神であり、自らの持てる力を最大限に発揮して、他者と助け合い、譲り合いながら、力を合わせて幸せな世の中を作っていこうという教えです。
     課題を発見し解決に努力する人物の輩出こそ、本校の教育目標。そのために、学校側で自由な発想を保証すること、自主的に課題を見つけ解決法を考え出すための時間的・精神的余裕を保証すること、生徒側では自由をはき違えず、自律心を持って積極的に、そして友達や先輩後輩と力を合わせることで自らを伸ばしていくことを重視。担任が原則6年間持ち上がることにより、生徒の特徴をつかんで適切な指導を行いながら、各人の自主性を尊重し、一人ひとりのやる気と才能を引き出して伸ばす環境を作っています。20年来続く「土曜講座」では各界で活躍する卒業生の講義・演習を、生徒が選択受講。進路選択に生きています。
  • 甲陽学院中学校・高等学校

    自主性を尊重し、自由を尊ぶ校風
     教育理念の根底には、大正時代の2人の創立者の思いがあります。初代校長の伊賀駒吉郎は、「桜桃梅李一時の春」という言葉を通して、生徒が育つのを助けるのが教育だとしました。財団設立者の辰馬吉左衛門が示したのは、「人を植うるは百年の計」という長期的視点です。これらに基づき、自主性を尊重し、自由に伸び伸びした人間に育つことを助けるのが基本姿勢となっています。
     中高一貫教育で、学習面・精神面とも継続的にケアするべく、担任団は原則6年持ち上がり制を採用。体系的に学べる6年間のカリキュラムを構築していますが、中学と高校の場所はあえて分け、それぞれ生徒の発達段階にふさわしい環境を整備。中学校では基礎的な学力や体力の養成と基本的な生活習慣の確立、高等学校では将来の自己実現のために必要な自主性と創造性の伸長を重視しています。こうして一生学び続ける力を身につけ、進路選択では、いまの自分の好奇心や興味を大切にしています。
  • 六甲学院中学校・高等学校

    他者に奉仕する、真のリーダーを多数輩出
     カトリックの修道会イエズス会が1938年に創立した学校で、伝統的進学校として評価され一目置かれる、全世界約830校のイエズス会学校と共通する全人教育を伝統としています。
     その教育目標は、他者に奉仕し社会をよりよく変えてゆくリーダーの育成。そのために必要な4つのCが、Competence(世界の課題解決に必要な知性面・技能面の有能さ)、Compassion(弱い立場の人々に共感する心)、Conscience(現状から何をすべきかを省察し見極める良心)、Commitment(現実社会と深く積極的にかかわる姿勢)です。
     本校の生徒たちは、六甲生活の初めから中1の各クラスに高2のリーダーがつく指導員制度や、日々の行事や活動を通して先輩や仲間の優れた面を認め合いながら切磋琢磨するなかで、人生でめざす人間像を築いていきます。そのなかで、自分を他者のために生かす喜びを味わうことが、進路選択の基準の一つともなっており、卒業生として国内外でより善い社会を造る専門家を多数輩出しています。
  • 須磨学園高等学校・中学校

    生徒一人ひとりの「自己実現」を徹底支援
     2022年に創立100周年を迎える本校は、女性も時代を生き抜く力をつけるべく、「清く、正しく、たくましく」という建学の精神で、女子校として設立。実学を重んじてきました。その後、1999年に男女共学の高等学校となり、2004年に中学校を開校して、現在の高い進学実績を持つ中高一貫校へと変革されました。現在では「to be myself,…なりたい自分になる。そして…」をスローガンとして、一人ひとりの自己実現をめざしています。
     その核となるのはTBM(To Be Myself)教育。学期の始めに将来の夢や長期的テーマを考え、TBMシートに記入。週次で、目標達成のためにすべきことを書き出すPM(プロジェクトマネジメント)と、それをスケジュールに落とし込むTM(タイムマネジメント)を実施していきます。さらに、オープンマインドを育む国際理解教育や情報社会に必要なリテラシーとモラルの向上を図るICT教育にも注力し、海外大学進学を含む、多様な進路選択につなげています。
  • 洛星中学校・高等学校

    カトリックの世界観・人間観に基づく全人教育
     カトリック精神に基づく全人教育を目標に掲げる本校は、1952年に創立。人は神によって創造され、無条件で愛されるもの。そのため、自己を肯定し、他の人の価値をも認めることができるよう、「心と頭と体のバランスのとれた人間を育てる」ことを教育方針としてきました。人の痛みに気づくことのできる、優しくて強い心を育み、考える力や答えのない難題にチャレンジする力の基礎を身につけ、学ぶ楽しさを知ってほしい。また、カトリック学校として、命の重さと素晴らしさを伝えるべく「赤ちゃん講座」を開催したり、平素は目立たない生徒も活躍できる多様なクラブ活動を通して居場所や機会を与える、懐の深い学校でありたいと考えます。卒業後の進路も多種多様で、宗教家や古典芸能、アジア・アフリカで環境整備に取り組む人、そしてコロナ禍で対策の最前線に立つ姿がマスコミでも見られる、地元京都の府知事や医師会会長、京大病院院長も輩出しています。
  • 明星中学校・明星高等学校

    「世の道しるべとなる明星紳士」を
    育成
     1898年創立のカトリック男子校で、聖書の言葉「地の塩 世の光」を全教室の正面に掲出し、あらゆる分野で核となって社会のために奉仕できる「明星紳士」の育成をめざしています。倫理教育の核をなす「宗教」の授業では、世界の諸問題について、物事の表面的な姿に惑わされずに本質をとらえ、自身に引き寄せて思考し実践する力を磨いています。また、中1より対話力を重視した英語学習に力を入れており、高1では英語学習と探究学習を融合した「英語集中ディスカッション研修」などを実施。これらで身につけた力を発揮する場として「ターム留学」(中3希望制)やハーバード大での「次世代リーダー養成プログラム」(高2選抜制)、カンボジアでの「ダイバーシティプログラム」(高1・高2希望制)などを設けています。課外の探究活動にも力を注いでおり、その一つとして稀少難治性疾患の方々への理解と支援を目指す「RDDプロジェクト」を実施しています。
  • 智辯学園和歌山中学校・高等学校

    「誠実・明朗」で心豊かな人物を育む
     本校は、1965年設立の智辯学園(奈良県五條市)を母体に、和歌山県の強い要請を受けて、1978年に開校しました。「誠実・明朗」で知性あふれ各分野で活躍するリーダーを生むべく、豊かな人間性に力点を置いて、情操教育を実施しています。感謝祭・宗教の授業等を通して、感謝・思いやりの心を育み、将来社会貢献できる人を目指します。
     本校のもう一つの特色は「日々の授業を大切にする」こと。個々の潜在能力を引き出し、伸ばすため、単に知識だけでなく、発達段階に合わせて演習や教科書内容を深めて、思考・判断・表現に重きを置き、知力を鍛えます。そして、自ら学ぶ力、楽しさを得ることを目標にしています。熱心にサポートしてくれる先生・互いを高め合う仲間という人の環境が整っており、生徒は伸び伸びと学んでいます。六年間のゴールを大学受験だけでなく、先の人生に照準を合わせた教育を目指し、今後も知性と人間性を育む愛のある教育を続けます。

座談会を終えて

 今回は、関西圏で東大・京大・医学部への進学実績で上位を占められている、私学の中高一貫校の校長、理事長に一堂に会していただきました。新型コロナウイルス感染症対策のためにオンラインでの開催とはなりましたが、非常に貴重な機会になりました。いずれの学校も、建学の精神に根付いた教育を実践しながら、これからの時代に対応するために、地域に根差して府県などと連携されていたり、探究活動等においては地元の企業や経済界とも深く関わりながら、独自の教育に邁進をされておられます。卒業生によるネットワークや支援の力にも、感銘を受けました。
 座談会に先立っては、あらかじめお話いただく内容のサマリーをご用意いただき、拝見していたのですが、そこからの印象以上に、先生方が互いに他校のご発言、やり取りを真剣に聞かれておられ、「わが校の場合はどうだろうか」「これについても、もっと生かしていけるのでは」などと、積極的に学ばれ、取り入れようとされている姿勢に驚かされました。
 また、昨年来のコロナ禍が教育現場に与える影響は誠に甚大で、その対応ではいずれの学校も同じように苦労してこられています。授業や部活動、入学式などの行事、大会、イベント等について、オンラインを含めた試行錯誤をされています。教職員の方々の苦心や工夫も、並大抵のことではなかったでしょう。ですが、決して悲観するばかりではなく、そのなかでも、むしろよいやり方を導くことができたなど、今後に生かせる部分も数多く見出されていたような気がいたします。特に私学というのは、学力をつけることだけでなく、生徒の日々の生活や人生観にまで対峙する姿勢を持たれていますので、生徒の自主性を尊重し、それを学校や教職員がサポートしてあげるのだという気概が大きく、そうした7校であったと思います。
 お子さんの学校を検討される保護者の方においては、そうした学校の姿勢や、そもそもの建学精神、教育理念といったところに、ぜひ注目いただきたいです。先行き不透明な時代だからこそ、学びの原点をどう考えているかが大事なのではないでしょうか。