前出の大軒さんは言う。

「そうならないために、看護師は自立を促すことも仕事の一つ。家族も同様に、何もかもやろうとするのではなく、本人のできることは自力でやるように促し、できないことのみサポートするように心がけること」

 お風呂に入るときには、家族が全部を洗おうとするのではなく、手が届かなくて洗えない背中だけ介助する。浴槽の段差があったり、滑りやすかったりすれば、訪問入浴などのサービスを利用するのも手だ。

「自分だけでやったら危険なことは、ためらわずに助けを求めて。“自立”と“依頼”のバランスをとりながら、無理をしないことが大切。患者側も、一つずつ自分でやれることが増えていくと、大きな自信にもつながる」(大軒さん)

 在宅療養は自由がきくからこそ、患者や家族によっていろんな形がある。「病気と付き合っていく」という段階にきたとき、あなたは何を優先しますか?(フリーランス記者・松岡かすみ)

週刊朝日  2022年2月11日号

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松岡かすみ

松岡かすみ

松岡かすみ(まつおか・かすみ) 1986年、高知県生まれ。同志社大学文学部卒業。PR会社、宣伝会議を経て、2015年より「週刊朝日」編集部記者。2021年からフリーランス記者として、雑誌や書籍、ウェブメディアなどの分野で活動。

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