※イラストはイメージです (GettyImages)
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 具体的にどんな職種の人がどれくらいの頻度で訪れるかは、医師や看護師、ケアマネジャーなどと話し合って決めていく。医療保険や介護保険のサービスは、状況に応じて自在に変更することもできる。例えば体調が悪いときなどは、「その日の訪問入浴は中止したい」とケアマネジャーに電話すればよい。介護保険サービスの提供者側は、患者の容体が変わることは理解しているので、サービス開始直前の連絡であっても問題ない。

 在宅医療は、病院と違って自由に過ごせることが最大の魅力だ。在宅医療に移ると決めたなら、自分自身が自宅でどんな生活を送りたいか、事前に家族とよく話し合っておきたい。

 在宅医療のベースとなるのは、自宅を訪れて診察や治療などを行う在宅医による訪問診療。自宅を訪問するというと「往診」を思い浮かべがちだが、往診は、定期的な訪問診療とは別に、症状の急変などで要請を受けて、家で診ることを指す。症状が悪くなくても定期的に家を訪問するのが「訪問診療」だ。

 この訪問診療は、本人や家族と話し合って決める診療計画に基づいて行われる。診察時間は、初診が1時間~1時間半前後、以降は症状が安定していれば1回15~30分程度、症状によって1時間ほどかけて診てもらえるため、病院の外来で診察を受けるよりも落ち着いてじっくり診てもらえるという安心感がある。

 在宅医は、この訪問診療の中で患者の様子や家族の話などを踏まえて状況を判断し、適切な治療や薬の処方をする。高齢になるほど、複数の疾病を同時に発症することもある。もし在宅医が自分以外で専門分野の医師による診察が必要だと判断すれば、専門医に連絡を取って往診してもらうこともできる。

 在宅医と病院の医師との「共同診察」を受ける方法もある。定期的に在宅医の訪問を受けながら、並行して3カ月~半年に1回、病院に通院するなど、在宅医療と外来を組み合わせたスタイルだ。がんの場合には、病院で抗がん剤などの治療を受け、自宅で痛みの緩和ケアを受ける共同診察も一つの方法だ。これまで800人を超える患者を在宅で看取ってきた『「在宅死」という選択』著者の中村明澄医師(向日葵クリニック院長)が言う。

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