「ゼミ訪問」「全員面談」など
少人数制ならではの独自プログラムを実施
神戸女学院大学は1875年の設立以来、「愛神愛隣」の標語を掲げ、キリスト教主義、国際理解の精神、リベラルアーツ教育の3つを柱とした教育を行なってきた。「『愛神愛隣』とは神から与えられた責務に応答し、隣人のために行動するということ。建築家ヴォーリズが設計した美しく品格あるキャンパスで、約150年にわたり、豊かな教養と使命感を持った数多くの女性を育んできた伝統があります」と中野敬一学長は話す。
年間130回の各種セミナーを開催し
最も適した就職先と
出合う機会を創出
同大学の2022年3月卒業生の就職率は98.8%(前年は98.5%※)。コロナ禍の中でも高い就職率を誇る。これは学生のキャリアを支援するキャリアセンターのきめ細かな独自の取り組みによるところが大きい。
同センター課長の山田義憲さんは「私たちが最も大切にしている言葉があります。それは『知らない世界を、知っている世界に変えていく。』です。学生の間は企業や業界、実際の仕事などについて、まだ知らないことの方が多く、視野も狭い。ですが、知っていることを増やしていくことができれば、その分、世界を見る視野が広がり、より多くの選択肢を持てるようになるはずです」と語る。
そのための支援が年間を通じて構成された「キャリアサポートプログラム」だ。自己PR作成や面接対策などの講座に加えて、学生が企業、業界をよく知るための支援が充実。年間130回もの各種セミナーを開催している。「最初は何もわからなくても、セミナーを順番に受けていけば、少しずつ視野が広がり、充実した就活ができるよう構成されています」(山田課長)。
中でも代表的なのが、業界、企業、仕事について幅広く知ることを目的とした「KCキャリアフォーラム」だ。それぞれの業界に詳しい講師を招いて最新トレンドを含め、業界のことをわかりやすく紹介する業界探究セミナーや、企業の採用担当者が仕事内容などについて講演する仕事発見セミナーがあり、毎年数多くの学生が参加する。
学生の力をのばす。
また、同センター最大のイベント「企業研究セミナー」(毎年2月開催)には毎年100社以上の多様な企業の採用担当者が集い、会社や業界の動向などを深く知ることができる。「学生にとっては様々な業界や規模の企業の中から自分に合った相手と出会える貴重なチャンス。これがきっかけで就職する学生も多いです」(同)
2021年8月に大学通信が発表した「有名企業400社実就職率ランキング」では、同大学が西日本の私立女子大学で1位にランクイン。「順位は結果論ですが、400社の中には、卒業生が活躍、信頼されているおかげで繋がりが深くなり『ぜひまた神戸女学院大学の学生を採用したい』という企業があるのは事実です。一方で、『大企業よりアットホームな中小企業の方が自分に向いている』という学生もいます。私たちは学生が数多くの企業や団体などを見た上で世界を知り、自分にマッチする就職先を見つけられることが大切だと考えています。だからこそ企業研究と自己分析は両輪で行う必要があります」と山田課長はいう。
※ 就職者510名/就職希望者518名
自由な校風と少人数ならではの
親身なサポートに満足の4年間
同大学には女性の多様なライフステージに役立つコミュニケーションやインターフェイス能力を養成するカリキュラムも充実している。それが「キャリアデザインプログラム」だ。言葉の力を鍛え、伝える力を養う「メディア・コミュニケーション」、芸術への理解を深め、アートと社会を繋ぐ「アート・マネジメント」、判断力、提案力を磨き、もてなしのプロをめざす「ホスピタリティ・マネジメント」の3コースがあり、学部を超えて受講できる。
劇場本部なんばグランド花月勤務 平野利穂さん(2022年3月文学部卒業)
2022年3月に文学部総合文化学科を卒業し、4月から吉本興業ホールディングス株式会社に就職した平野利穂さんは、「アート・マネジメント」コースを受講。エンターテイメント業界に入る夢を叶えた。
「幼いころからアイドルグループのライブやテーマパークのヒーローショー、テレビのバラエティ番組などが大好きでした。いつしか芸術やエンターテイメントを『観る』観客の立場ではなく、『作る』側の立場で関わってみたいと思うようになり、エンタメ業界へ進むことが目標になりました。2年生の時、このコースのことを知り、受講を決めました」(平野さん)
同コースは2年生後期から履修できる正課で、定員約15人の少人数制。演劇、音楽、美術、舞踊などの芸術作品に様々な視点から接して理解を深め、自らの感性を磨いていく。3年生後期の演習では、芸術文化イベントを企画、開催。実際の体験から学びを得ていく。
「どんな芸術作品にも創作の背景や表現の工夫があり、芸術に無限の可能性を感じることができました。3年生後期の総仕上げではコロナ禍のためイベントの開催ができず、代わりに映像制作をすることに。『震災』をテーマに各受講生が自宅などで動画を撮影し、それらを繋ぎ合わせて一つの映像にしました。例年とは違う新しい作品にチャレンジできたことを誇らしく感じました」
就職活動では「エンタメ業界に入る」との明確な目標を掲げ、テレビ局やイベント制作会社など約70社を受けたという。何度も不採用通知を手にしたが、めげずに挑戦し続け、4年生の6月、吉本興業ホールディングスの内定を獲得した。
「私は“女性だから”という観点でキャリアを考えたことはなく、私個人として仕事を任せられる人間になりたいと思っています」と語る平野さん。
「将来の夢は、誰でも気軽に楽しめ、町おこしにもつながるイベントやバラエティ番組を制作すること。笑いと感動をたくさんの人たちに届け、元気づけたい」と瞳を輝かせた。「神戸女学院大学は、それぞれの学生が互いの個性を尊重し合いながら、やりたいことに取り組める自由な校風で、とても心地よかったです。少人数制教育なので、教職員の方のサポートも学生一人ひとりに目が行き届いていると思います。私は何度もくじけそうになりましたが『最後まで諦めずにやろう』と背中を押して、親身に寄り添ってくれました。『私はこれがしたい』という思いを全面的にバックアップし、叶えてくれる大学だと思います」と笑顔で振り返った。
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就活のポイントを
わかりやすく解説
キャリアセンター職員に
よる「ゼミ訪問」
キャリアセンターでは、3年生の後期から「ゼミ訪問」を毎年行なっている。これはキャリアセンター職員が全学部を対象に希望するゼミを一つずつ訪ね、就職活動のポイントをまとめた講義(90分)をするというもの。担当のキャリアセンター職員・森真理絵さんはこう話す。「就活スケジュールやエントリーシートの書き方、企業の調べ方、最新の就活状況など、就活の1から10までを凝縮したわかりやすいお話をして回っています。それぞれのゼミは多くても15人くらい。大人数の講座とは違い、面と向かってしっかりと伝えられるのがこのゼミ訪問の一番のメリットです。『就活なんてまだ先』と思っていた学生がゼミ訪問後、キャリアセンターに立ち寄ってくれることもよくあります。このゼミ訪問で『就活を真剣に考えて取り組んでいかなきゃ、と思うきっかけになった』という学生は多いです」
TOPICS
3年生への「全員面談」で
就活の礎となる
「自己分析」を深掘り
3年生後期に行われる「全員面談」は「自己分析サポート面談」と呼ばれている。学生は、大学時代に力を入れてやってきたこと、自分の長所や短所、どんな仕事をしたいかなどを自己分析し、事前にワークシートに記入。それをもとにキャリアカウンセラーと1対1で面談(40分)を行う。
「自己分析は就活の礎となる大切なもの。この自己分析をしっかりと深めて整理しておくと、自分はどんな業界、企業で何をしたいのか、その会社が自分のしたいことに本当に適っているかなど、実際に就活をしていくなかで企業と自分とのマッチングができ、より充実した就活ができます。新卒での就活は一度きりですし、どこで社会人としての第一歩を踏み出すかは、充実した幸せな人生をおくっていくためにも大切なこと。自分をしっかりと知ることは、知らない世界を知っている世界に変えていくための大切な第一ステップなのです」(キャリアセンター職員・森真理絵さん)。この「全員面談」は「ゼミ訪問」とともに、少人数制教育を行う同大学だからこそできる取り組みだ。