商品本部 デイリー部
マーチャンダイザー/管理栄養士
熊谷 京子さん
日本の伝統的な食文化である和食の栄養バランスは理想的とされているが、残念ながら日本人の塩分摂取量は世界と比較すると多いという。厚生労働省でも各年代の1日の食塩摂取量の目標値を定めて減塩を呼びかけているが、この問題の解決に取り組んでいるのがローソンだ。
「地域の健康一番店」を目指すローソンでは、毎日の食を通して健康な体をつくる「ミールソリューション」を掲げており、「野菜を食べよう」「糖質をコントロールしよう」「たんぱく質を摂ろう」など、いくつかの指針をもとに健康志向の商品開発を推し進めている。その中で大切な課題のひとつとしているのが「減塩」なのだ。
商品本部デイリー部でパスタや焼きそばの商品開発を担当している熊谷京子さんも、常に食塩相当量の削減を念頭に置いているという。そのきっかけは、ローソン入社以前に管理栄養士として病院に勤務していたころの経験にあった。
「どれほど治療食の栄養バランスを考慮しても、お見舞い品などで塩分や糖分を摂りすぎてしまう患者さんが少なくなかったんです。それを見ていて、病気になってからではなく、病気になる前から健康を守る食事をすることが大事だと気づき、多くの方たちが利用するコンビニの商品開発に携わることで健康をサポートしたいと考えました」(熊谷さん)
全国約6300店のローソンに設置されている店内キッチン「まちかど厨房」でも、1食あたりの食塩相当量を3グラム以下に抑えるよう配慮している。
商品本部 商品コンセプト開発部
チーフマーチャンダイザー/管理栄養士
田口 美里さん
また、商品コンセプト開発部で米飯商品開発を手がけている田口美里さんも、管理栄養士を目指していた大学時代の実習で、健康なうちから病気の予防に努める一次予防の大切さを痛感。商品開発にあたっては、どうすればおいしさを損なわずに少しずつ減塩を図れるか、外部の専門家からもアドバイスを受けながら研究を重ねているという。
「京都の老舗料亭『菊乃井』の常務であり、レストラン『ル・リール』のオーナー兼シェフでもある堀知佐子先生もそのお一人です。出汁をしっかり利かせる、スパイスを上手に使うといった基本的な考え方から盛り付け方の作法まで、食のプロならではの多角的なアドバイスをいただき、本当にいろいろと勉強になります」(田口さん)
食塩・化学調味料不使用の「玄米の黒ごまカレー&カシューナッツチキンカレー」。「よく噛んでゆっくりお召し上がりください」の表記が目を引く。
こうして商品の減塩に取り組む中で、熊谷さんがまず感じた課題は、香りだったという。
「コンビニ商品はどうしても香りが弱くなるんです。それを解決できれば、塩味をおさえてもおいしいパスタが作れると思いました」(熊谷さん)
そこで取り組んだのがペペロンチーノ。ガーリックの風味や旨味をじっくりオイルに溶かし出し、その香りの良さから最後まで飽きずに食べ進められる味わいを生み出した。しかも14%の減塩を実現。そのこだわりは「大盛! ガーリックの香りと旨味 ペペロンチーノ」という商品名そのものとなっている。
また「つぶつぶ! たらこ! たらこ! たらこ! 」では、たらこを絡めたパスタ、たらこソース、粒状たらこのトッピングと三層構造で味のメリハリをつけることで8%の減塩。さらに「完熟トマトの旨味! ナポリタン」では、トマトの旨味をソースにしっかり引き出すことで減塩31%を達成した。
「男性のお客さまの購入が多いパスタは満足度の高いしっかりした味付けが求められがちですし、減塩と聞くだけで『おいしくなさそう』と敬遠する方もいらっしゃいます。そのため、おいしさを変えずに、こっそりと塩分を減らせるよう、日々試行錯誤しています」(同)
ローソンの食にかかわる主な健康関連の取り組み |
2012年3月~ |
もち麦を使用したおにぎり発売(ナチュラルローソン店舗にて) |
2012年6月~ |
ブランを使用したパン発売。シリーズ累計販売数2億9千万個突破(2020年5月末時点) |
2013年3月~ |
店内調理に使用するフライオイルをヘルシーオイルに切り替え。 コレステロール0、ビタミンEを配合 |
2014年5月~ |
健康に配慮したナチュラルローソンブランドの菓子シリーズ発売 |
2015年5月~ |
1食分の野菜が摂れるチルド飲料「グリーンスムージー」発売 |
2016年7月~ |
店内調理に使用するフライオイルをリニューアル。オメガ3(n-3系脂肪酸)を追加 |
2019年5月〜 |
食物繊維を多く含んだ大麦を使用したベーカリーを発売(2020年11月より 「もち性の大麦[もち麦]」に切り替え) |
2020年3月〜 |
食塩・化学調味料不使用のカレー発売(ナチュラルローソン店舗にて) |
「ごろごろ具材! 10品目の豚汁」や「IROCORO」シリーズの「わっぱ風弁当」など、塩分控えめながら味わい豊かなラインアップは女性に人気。
一方で田口さんが挑んだのは、なんと食塩を使わないカレーの開発。
「無塩で食材の味を引き出す料理法を提唱していらっしゃるフレンチの松嶋啓介シェフとのご縁から企画が進んだのですが、できるかどうか半信半疑で松嶋シェフのお店に伺って試食したところ、びっくりするぐらいおいしくて。味の向上という意味でも、食塩不使用にはメリットがあると感じました」(田口さん)
田口さんたちは、多彩なスパイスをブレンドし、素材の持ち味をじっくり引き出すことで、食塩不使用でも旨味の深いカレーを追求。松嶋シェフのアドバイスを受けながらさまざまなハードルを越え、ようやく2020年3月、食塩・化学調味料不使用の「玄米のダールカレー(レンズ豆)&ココナッツチキンカレー」がナチュラルローソンで発売となった。
「当初は不安でいっぱいでしたが、『こういう商品を待っていたんだよ』とおっしゃってくださるオーナーさんもいらして、とても力になりました。その後に発売した食塩不使用カレーも好評を受け、2月23日(火)にいよいよ全国のローソンで『玄米の黒ごまカレー&カシューナッツチキンカレー』(中四国・九州・沖縄除く全国)、『玄米のダールカレー(レンズ豆)&カシューナッツチキンカレー』(中四国・九州のみ)が発売となります。食べ進めるうちに広がるおいしさをじっくり噛み締めてほしいですね」(同)
二人が声をそろえて語るのは、日々の生活に寄り添うコンビニだからこそ担っている〝責任〟だ。
「どんなに減塩しても食べていただけなければ意味がない。おいしさは変えずに減塩を進め、『どれを食べてもローソンなら安心』といっていただける商品を作ることが、コンビニの責任だと思っています」(熊谷さん)
「食育というと大げさかもしれませんが、コンビニの食事はお子さんからお年寄りまで多くの方々の食に影響があります。その責任を担いつつ、家族のような気持ちで商品を作っていきたいです」(田口さん)
塩分を控えても「おいしい」と感じていただき、商品の販売数が変わらないことが目標と笑顔を見せた熊谷さんと田口さん。いつもの味で、たくさんの人を健やかに。そんな願いを込めた商品が、ローソンの棚にそっと並んでいる。