東京・上野にある西洋美術館が、世界文化遺産に登録される見通しだ。西洋美術館を設計したル・コルビュジエのすごさとは? 毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく説明してくれている、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』に掲載された解説を紹介しよう。

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 フランスの建築家、ル・コルビュジエ(1887~1965年)が設計した国立西洋美術館本館(東京都台東区)が、ほかの6カ国の16作品とともにユネスコ(国連教育科学文化機関)の世界文化遺産に登録される見通しになった。コルビュジエ作品の何がそんなにすごいのだろう。

 世界文化遺産の候補を事前審査する諮問機関、イコモス(国際記念物遺跡会議)が5月、「登録すべきだ」と勧告した。7月10日からトルコで開かれる世界遺産委員会で最終的に決まるが、登録はほぼ確実となった。

「登録される作品は一見、『普通』に見えるかもしれません。でも、その『普通』を初めてつくったのが、コルビュジエなんですよ」と、文化庁の鈴木地平調査官は言う。

 コルビュジエは、それまでの重く様式的な建築を脱し、機能的、開放的な姿を目指した。1階を吹き抜けにするピロティや屋上庭園、水平に連続する窓など「近代建築の5原則」を唱え、現代の建築の基礎をつくりあげた。こうした功績がイコモスから「新しい建築の概念を広め、20世紀の世界中の建築に大きな影響を与えた」と評価された。

 コルビュジエの作品が世界文化遺産に推薦されたのは今回で3度目。2009年と11年は、コルビュジエという天才的な建築家に焦点を絞って推薦したが、「世界遺産は人に対して与えられるものではない」などの指摘を受けて落選。今回は、近代建築運動に焦点を当て、その運動にコルビュジエの作品が果たした役割を強調したことが成功につながった。国境をまたいだ申請が認められた例は過去にあるが、大陸をまたがった申請が認められるのは今回が初めてとなる。

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AERA dot.編集部
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