硫黄島付近では2023年10月から断続的に噴火が起こり、新島が形成された=海上保安庁提供

 東京都心から南の海で火山活動が活発化し、近年は「新島」ができるような噴火が相次いでいる。昨年10月に太平洋岸の広範囲で観測された津波は、地震ではなく海底火山が原因とも考えられており、本土の人にとっても「遠い場所での出来事」とは言い切れない。今後も大規模な噴火が起きる可能性があるのか、専門家たちは注視している。

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 真っ黒い水柱が高さ100メートルまで上がり、マグマの破片が火山弾となって噴き上がる。夜になると、それは花火のように赤く見えた。

 東京都心から1250キロ。小笠原諸島の一つで、太平洋戦争末期、日米両軍が激突して多くの戦死者を出した、東西約8キロ、南北約4キロの小さな島、「硫黄島」。

 昨年11月16日、自衛隊機で訪れた防災科学技術研究所の長井雅史・主任専門研究員が目の当たりにしたのは、高温のマグマと海水が触れて爆発する「マグマ水蒸気噴火」だった。10年ほど前から硫黄島を調査研究してきた長井さんにとっても、初めて見る光景だった。

「硫黄島ではこれまで小規模な水蒸気噴火が続いてきました。しかし、今回のようなマグマを噴出する噴火は、おそらくこの島に人が住むようになって初めてでしょう」
 

硫黄島、西之島の火山活動を調査、研究している防災科学技術研究所の長井雅史さん=米倉昭仁撮影

 硫黄島の火山活動でマグマが噴き出していることを初めて確認したのが、長井さんらだ。

 爆発とともに水柱が立ち上がる噴火活動が始まったのは一昨年7月11日。防災科研の調査チームは翌日、硫黄島に降り立った。

 噴火は約5分間隔で繰り返され、海岸には多数の火山弾が漂着していた。最大のものは長径約150センチ。急速に冷やされた岩塊の表面にはたくさんの亀裂が見られた。

「水中や空中に放出されたマグマが冷えて固まってできた典型的な『パン皮状火山弾』です。赤外線カメラで撮影すると亀裂の内部は120度以上あった。マグマが噴き出ていることは確実だと思いました」(長井さん)
 

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10年前から14倍に大きくなった島