■カブトムシが夜行性なのはスズメバチのいる昼を避けるため!?

 小島さんには、ここ数年の研究を通して、すでに、カブトムシは完全な夜行性ではないことが見えてきていたという。そこで、こんな疑問がわいてきた。「オオスズメバチがいない状況をつくりだしたら、カブトムシはいつまで樹液場にいつづけるのだろうか?

スズメバチよけのスプレーによって、樹液場にスズメバチが近づけないようにしたときとそうでないときの、カブトムシの数の変化
スズメバチよけのスプレーによって、樹液場にスズメバチが近づけないようにしたときとそうでないときの、カブトムシの数の変化

 この疑問に答えを出すため、スズメバチよけのスプレーを使って、飛んできたオオスズメバチが樹液場に降りられないようにした。すると半分以上のカブトムシが、少なくとも昼ぐらいまで樹液場にとどまって、樹液をなめ続けることが確かめられた。(図参照)

「カブトムシは、状況によっては明るくなっても活動を続けることがわかりました。夜が明けてから昼までの活動は、オオスズメバチに妨げられている可能性があります。それにより、カブトムシは本来の性質以上に夜行性が強いと見られていたのかもしれません。動物は自分の意思で、夜行性か昼行性を決めていると思われがちです。しかし、今回観察したカブトムシは、本当は昼まで樹液場で活動していたいのに、無理やり追い出されていたように思われます。競争者であるオオスズメバチの影響によって活動時間が変化しているという点に、私は強く興味をひかれました」

 ただし、今回の結果から直ちに、スズメバチがカブトムシより強いと言い切れるわけではない。

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