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立命館アジア太平洋大学 出口治明学長に聞く いちばん青い学部。

2023年4月、「サステイナビリティ観光学部」開設
持続可能な開発と観光を通じ、サステナブルな社会の実現を目指します。
学生のおよそ半数が留学生というスーパーグローバル大学、立命館アジア太平洋大学(略称APU/大分県別府市)。来春4月には2000年開学以来の新学部「サステイナビリティ観光学部」を開設し、「第2の開学」を迎える。連載企画「いちばん青い学部。地球に、まだない答えを。」第1回は、新学部の立ち上げを最大のミッションに掲げ、脳出血を克服し学長職に復帰した出口治明氏に、その熱い思いを聞いた。
(聞き手・中村正史)

取材・文/中村正史 撮影/山本薫 デザイン/洞口誠(ドットワークス)、大内和樹 制作/朝日新聞出版メディアプロデュース部ブランドスタジオ 企画/AERA dot.ADセクション

僕もチャレンジを続けます 一緒にチャレンジしましょう

――出口さんは昨年1月に脳出血で倒れ、右半身まひや失語症などの障害が残りましたが、1年余りのリハビリを経て、今年4月から学長職に本格復帰しました。4月1日の入学式や、6月8日に2020年度以降に入国規制で入学式に出席できなかった留学生らを歓迎したイベントであいさつしたときは感慨深かったのではないですか。
出口 病気療養中の僕の願いは、一日も早く学長職へ復帰したい、以前のように別府に単身赴任して生活したい、みんなの前で講演できるようになりたい、ということでした。そのためにリハビリを一所懸命、頑張りました。ですから入学式で、学生の皆さんの前であいさつしたときは、胸がいっぱいでした。久しぶりのことだったので、余裕がなく、用意していた祝辞の一部を読み間違えてしまいました。
 6月の歓迎イベントは、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う入国規制が3月から緩和され、1000人を超える留学生が入国できたので、この3年間で入学式に出席できなかった留学生らを合わせて歓迎しました。このイベントの祝辞のときには、多少、余裕が戻っていました。祝辞では「今日は改めて、入学おめでとう。僕は去年、脳出血で倒れましたが、早くAPUに戻って皆さんと会いたい思いで、1年間リハビリを頑張ってきました。今日、皆さんに会えることを心待ちにしていました。APUは23年度には『第2の開学』を迎えて、新しいチャレンジをします。僕もこれからチャレンジを続けます。一緒にチャレンジしましょう」と話しました。

――当日、取材していて、胸が熱くなりました。本格復帰を目指して今年1月からAPU東京オフィスに出勤するようになってから、一人で電動車いすに乗って電車で来ていると聞いて驚きましたが、4月に別府のAPUキャンパスへ復帰してからは、どんな生活ですか。
出口 今日はリハビリが2コマあったので、午前11時台に学長室に来ましたが、普段は午前8時半に来ています。夕方5時半まで執務して帰ります。毎日、出勤していますよ。
 サービス付きの住宅に移り、電動車いすで福祉タクシーに乗って出勤しています。学内の移動も、一人で電動車いすを使って行います。右手右足のまひは残っていますが、家では起き上がり、着替え、入浴など、一人でこなしています。

出口 治明 でぐち・はるあき
1948年、三重県生まれ。京都大学法学部卒。日本生命保険相互会社に入社し、ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを歴任後、2008年にライフネット生命保険を創業。2018年、国際公募制で推挙され立命館アジア太平洋大学学長に就任。2021年に再任され、現在に至る。主な著書に『生命保険入門(新版)』(岩波書店)、『哲学と宗教全史』(ダイヤモンド社)、『全世界史(上・下)』(新潮文庫)、『人類5000年史(I~Ⅳ)』(ちくま新書)、『戦争と外交の世界史』(日経ビジネス人文庫)、『復活への底力 運命を受け入れ、前向きに生きる』(講談社現代新書)など多数

学長職への早期の復帰を促した二つの理由

――出口さんの回復の早さに、APUの職員たちも驚いています。7月刊の著書『復活への底力 運命を受け入れ、前向きに生きる』(講談社現代新書)を読むと、担当した作業療法士や言語聴覚士が「70歳を過ぎてこれだけ重い障害が出たら、普通は自宅に戻るか介護施設に入る。出口さんのように、学長職への復帰、単身赴任、講演もと高い目標をもってあきらめない姿勢の人を見たことがない」と言っています。学長職に早く復帰したいと思ったのは、なぜですか。
出口 一番の理由は、23年4月に「サステイナビリティ観光学部」を開設するからです。2000年にAPUが開学して20年余り、2学部(アジア太平洋学部、国際経営学部)でやってきましたが、これが3学部になります。APUにとって「第2の開学」を迎えます。新学部の設置は、学長としての僕の使命です。とてもワクワクしますし、一所懸命にやらなければいけません。
 もう一つは、APUは学生の約半数が留学生で、とても国際化が進んだ大学なので、政府の入国規制で留学生が入国できない影響を受け、非常に厳しい状況にあったからです。新型コロナウイルス感染症が拡大した20年は、留学生約2900人のうち、1000人を超える学生が入国できませんでした。彼らが早く以前のような大学生活を取り戻し、また会えることを待ち望んでいました。
 リハビリがつらいと思う暇もなく、早くAPUに戻りたいということしか、考えていませんでした。

学長職に復帰した出口氏(左)

サステナビリティと観光の新しい融合

――新学部の設置は、開学20周年を控えた18年に学長になった出口さんの最大のミッションです。
出口 学長になったときに新学部の構想はありましたが、中身は決まっていませんでした。学長になってから1年かけて検討し、地域開発と観光をセットで学ぶ学部に決めました。当初は22年度に開設予定でしたが、コロナ禍の影響を考慮して1年延ばしました。
 APUの学長は、国内の大学では珍しい国際公募制で自薦、他薦を含めて、国内外から推薦された候補者の中から選考されます。僕が18年に学長になったときは自分が知らないところで他薦されましたが、次の公募には自分から手を挙げました。せっかく新学部を言い出して、中途半端で辞めるのは無責任ですから。その2期目の任期が21年1月から始まって、すぐに病気で倒れたのです。
 21年11月にAPUで新学部開設を発表したときは、東京の自宅で療養中で、会見には出席できず、メディア向けに「サステナビリティと観光の新しい融合を目指す」とメッセージを出しました。「観光はサステナブルでありたい」という学内の意見や、「サステイナビリティ観光学部」という学部名を聞いて、「それはいい」と伝えていました。

「どこにもない学部をつくりたい」と出口氏は言う

――新学部が目指すものは何ですか。
出口 従来の観光は名所旧跡を見て帰るものでしたが、これからの観光はその地域の文化や生活慣習、伝統を楽しむものになります。それは持続可能な地域振興そのものです。これからの新しい観光は地域の新たな価値創造であり、新しい魅力を見いだして、プロデュースしていくことが観光です。そしてこれが持続可能な社会とその発展につながるのです。これは日本のみならず、アジアでもアフリカでも全世界で必要なことです。
 APUは、18年に観光教育の国際認証TedQualを取得しました。TedQualは国連世界観光機関(UNWTO)の関係組織が実施する認証制度で、国内では観光学部を持つ和歌山大学に次いで2校目、私立大学では初めての取得でした。ですからAPUは観光教育の分野では先頭にいました。
 新学部を開設する理由の一つには、日本有数の温泉地である別府市に大学があることが挙げられます。この立地が学生たちの学びをより実践的にしてくれると思っています。また観光は、今後以前を上回る成長が見込まれている21世紀の成長産業です。ただ今までのように一過性の観光ではなく、サステナブルでなくてはいけません。持続可能であることが地域を支え、社会をもっと発展させていくのです。サステナビリティと観光を組み合わせた、新しい国内でも唯一の学部をつくります。

新学部の目標は、「持続可能な開発と観光を通じた『持続可能な社会』の実現」と語る

目指すは、世界の中で最も国際的な大学

――スタンフォード大学がこの秋に、約70年ぶりになる新学部として「サステナビリティ学部」を開設します。気候変動と持続可能性をテーマにしているので、APUの新学部とは内容が少し異なりますが、設立のタイミングとしては同じです。これからの大学教育や大学の使命の一つとして、サステナビリティがテーマになってくるのは間違いなさそうです。
出口 スタンフォード大学とAPUは、別々に構想していますが、考えていることは同じです。課題へのアプローチの仕方は違っても、持続可能な社会をどう実現するかという点は、共通しています。
 常に新しいことに挑戦するのは、学校法人立命館の伝統です。実際に進めていくには重大な責務が伴いますが、どんな世界が出てくるのか、楽しみです。

――既存のアジア太平洋学部と国際経営学部も専門性を明確にしたことで、3学部のすみ分けがはっきりしたように思います。
出口 3学部になることで、三角形のバランスが取れ、安定します。柱も2本よりは3本のほうがよいですよね。アジア太平洋学部は社会・文化・政治・経済・交流を通じた「平和と相互理解」、国際経営学部はビジネスを通じた「インクルーシブで革新的な組織と社会」、サステイナビリティ観光学部は、持続可能な開発と観光を通じた「持続可能な社会」の実現を目標にします。
 APUは学生の約半数が留学生で、現在、102カ国・地域から来ています。国内から来ている学生も九州出身者は3分の1しかおらず、3分の1が関東圏から来ており、多様な学生が混ざり合って成長していきます。こうした従来の「混ぜる教育」に、もう一つ「解を出す」を加えて、「混ぜて解を出す」「チームをつくって解を出す」ことにチャレンジしていきます。そして社会課題を解決するために行動できる人材を輩出していかなければなりません。
 開学以来の取り組みで培ってきた「日本有数の国際的な大学」という評価を、30年には「世界の中で最も国際的な大学」と評価され、APUで学んだ国際通用性のある人材が、世界のあらゆる場所で、世界をより良く変える中心となって活躍している状態を目指します。

コロナ禍でも手軽に健康的な毎日を
学生と企業が共同開発した
三つのフルーツドレッシング

 6カ国の学生10人の開発チームと、フンドーキン醤油(大分県臼杵市)が2年をかけて共同開発したフルーツドレッシングが今年2月に発売されました。コロナ禍で高まる健康志向と、日本人の果物消費量が低いことに着目したもので、2019年に発売したイスラム教徒向けの「はちみつ醤油ハラール」に続くコラボ商品第2弾です。ドレッシングは、筋トレやダイエットに頑張る人を応援する「ラズベリー」(亜鉛配合)、ストレス社会で頑張る人を応援する「グレープフルーツ」(GABA配合)、糖質50%オフの「パッションフルーツノンオイル」(シールド乳酸菌®M-1配合)の3種類。今秋からはいよいよマーケティングフェーズにシフトし、新たなプロジェクトメンバーも決定。ソーシャルメディアを使った効果的なPRや、商品のブランディングに取り組んでいく予定です。今後の展開に乞うご期待!

中村 正史 なかむら・まさし
朝日新聞社教育コーディネーター。長年にわたって教育・大学問題に携わり、1994年、偏差値と大学神話に代わる新たな大学評価を求めて「大学ランキング」を企画し創刊。2008~15年に編集長。「AERA with Kids」「医学部に入る」「ジュニアエラ」なども創刊した。朝日新聞出版取締役を経て、20年4月から現職

提供:立命館アジア太平洋大学