とんねるずがテレビで歌を披露するときには、途中で木梨憲武がふざけて声色を変えて歌ったりすることも多いのだが、最後の最後に本気で格好良く歌いきる2人の姿が見られた。

『笑っていいとも!』の最終回で、中居正広は「バラエティは残酷なものだ」と語っていたことがある。ドラマ収録やライブ公演は終わりが決まっていて、そのゴールに向けてチームが一丸となって進んでいく。しかし、バラエティ番組は人気が続く限り終わらないことを義務づけられている。スタッフや出演者が終わらないために全力を尽くしているのに、人気が落ちてボロボロになった状態で終わりを迎えることになるバラエティは寂しいものだ、というのが中居の主張だった。

『とんねるずのみなさんのおかげでした』も、そうやって散っていくバラエティ番組の1つである。しかし、とんねるずの2人は最後まで弱気な姿や負け顔を見せることはなかった。格好良くて楽しくて面白い。自分たちの流儀を貫き通して、有終の美を飾ってみせた。稀代のバラエティタレントがフジテレビに刻んだ30年の栄光の歴史は、時が過ぎても色褪せることはないだろう。(ラリー遠田)

著者プロフィールを見る
ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

ラリー遠田の記事一覧はこちら