7月3日に静岡県熱海市で発生した土石流(撮影/西岡千史)
7月3日に静岡県熱海市で発生した土石流(撮影/西岡千史)
(週刊朝日2021年7月16日号より)
(週刊朝日2021年7月16日号より)
(週刊朝日2021年7月16日号より)
(週刊朝日2021年7月16日号より)

 土砂災害が大きな被害をもたらした先日の熱海や、本県の球磨川を氾濫(はんらん)させた令和2年7月豪雨など、巨大化する台風や集中豪雨で、水災害が増えている。

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 では、どうすれば水害から命を守れるのか。気象庁は6月から、積乱雲が線状に連なり大雨をもたらす線状降水帯の発生時に、「顕著な大雨に関する情報」の発表を開始。6月29日に沖縄県で、7月1日には東京都の伊豆諸島北部(大島や新島など)で発表した。

 ただ、この情報には注意が必要だ。線状降水帯の発生は予想が難しく、発表時にはもう強い雨が降っているからだ。気象庁気象リスク対策課の松尾篤・地域気象防災推進官は言う。

「防災関係者から『使いづらい』という意見が出ているのは事実です。実際、伊豆諸島の例では発表直後に急速に雨雲が消えました。ただ、情報は5段階の警戒レベルが4相当以上の時に発表されるもので、発表時点ですでに危険な状態ということ。情報が出る前に早めの避難をしてほしい」

 18年7月の西日本豪雨では岡山県倉敷市真備町で大きな被害が出たが、この事例は線状降水帯発生の情報発表には当てはまらないという。「発表がないから安全」では決してない。このことは肝に銘じておきたい。

 豪雨は地震などの災害とは違い、事前にある程度予測できる。だからこそ早めの準備が重要だ。『水害列島』の著書がある、リバーフロント研究所技術参与の土屋信行氏は言う。

「そもそも大雨が降ってから避難するのでは遅すぎ。道路が水に浸かってから避難所に行こうとしても、高齢者や目の悪い方は足を取られてしまう。外に出るほうが危険です」

 避難が遅れた場合、自宅の2階やマンションの上層階に移動する「垂直避難」が鉄則。浸水した道路を歩くとフタの開いたマンホールや側溝に足を取られる危険があるからだ。どうしても豪雨時に外に出なければならない場合は、複数人による団体移動が必須だ。

 土屋氏は「豪雨は自然現象だが、水害は社会現象」だと指摘する。

「豪雨時に公的機関の避難情報をあてにしてはいけない。豪雨の季節は気象情報を注意深く見て、大雨が発生する24時間以上前の明るい昼間のうちに避難してほしい」

 日ごろからの「ご近所づきあい」も大切だ。避難の際に車に同乗させてもらったり、食料などを融通し合ったりできる。災害時の準備をあらためて確認しておきたい。

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週刊朝日  2021年7月16日号