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誰もが知るべきAI・データサイエンス

AI・データサイエンスの技術は、専門家だけではなく、今や誰もが日常的に利活用している。
今後、ビジネスパーソンが持つべき分野の知識、資質とは? 大学と企業が語り合った。

構成/株式会社POW-DER 座談会原稿/稲田砂知子 写真(木村恵子)/鈴木克典
イラスト/德永明子 デザイン/スープアップデザインズ
制作/朝日新聞出版メディアプロデュース部ブランドスタジオ 企画/AERA dot. AD セクション

part1 part2 アンケート

AI・データサイエンスの現在地

日進月歩の勢いで発展しつづけるAI・データサイエンス。生成AIなど新しい技術も普及し、
活用の範囲は広がりを見せる。AI・データサイエンスの今と未来、社会で求められる資質とは。そして、そのために必要な教育とは。

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GRAPHIC RECORD

座談会参加のみなさん

座談会参加者に聞いた!AI・データサイエンスの活用に欠かせないアイテムは?

狩野 裕

大阪大学

大学院基礎工学研究科 教授

ゆたか さん

データの語りを正しく聞く耳を持つ!
申 吉浩

学習院大学

計算機センター 教授
データサイエンス副専攻
オーガナイザー

しん よしひろ さん

「余裕」。考える余裕がないと、
AIの言うがままになってしまう
椎名 洋

滋賀大学

データサイエンス学部長 教授

しい よう さん

データがどこでどう生まれたかを一通り
理解しようとする態度
佐川雄二

名城大学

情報工学部長 教授

がわ ゆう さん

いったん頭を空っぽにするためのランニング
高田直幸

セコム株式会社

IS研究所 企画グループリーダー

たか なおゆき さん

手指を動かすと脳が活性化する!? ハンドグリップ
佐藤伸亮

日本気象株式会社

ICTソリューション部 副部長

とう のぶあき さん

入浴(思いつかなかったため同僚に聞いて
みました。自分でも試してみます)
木村 恵子

AERA編集長

木村 恵子

学べば学ぶほど面白い
新しい時代の「必須ツール」

木村恵子(AERA編集長) AI・データサイエンスは次々と新しい話題が登場する注目の分野で、本誌2023年7月10日号でも『「生成AI」で大学は進化する』という巻頭特集を組みました。この新しい道具を使いこなし、学びや社会に変化を起こさなければいけないという現場のみなさんの思いを感じています。

データの裏に真実・宝がある。

狩野 裕さん(大阪大学) そうですね。私はこの春、裁判でデータサイエンスが活用される現場に立ち会いました。証拠となるデータをどう取得し、それをどうデータサイエンスの手法で解析するか、サポートにも入りました。諸外国では裁判でのデータ活用はすでに一般的に行われていますが、日本はまだ少ないようです。将来的にはこういう仕事もだんだん増えてくる予感がしました。

椎名 洋さん(滋賀大学) 最近の車は、走行中の記録がクラウド上に蓄積されるテレマティクス※1が採用されています。最近、本学の院生が、どんな状況で加速したか、どこで急ブレーキをかけたかなどの細かなデータをもとに分析を行いました。その結果、運転には⼀⼈ひとりの個性が、かなり強く出ることが判明しました。今後もいろいろな物にインターネットがつながり、データが取れるようになるので、ますます面白い分析ができますね。

※1 電気通信(Telecommunication)と情報学(Informatics)を組み合わせた造語。車など移動するものに通信システムを搭載してインターネットに接続し、情報を集約してサービスを提供すること。

申 吉浩さん(学習院大学) 現在AI・データサイエンスは、ビッグデータを活用するサービスで本領を発揮していると思います。ビッグデータとは「集める」情報ではなくて「集まる」情報なんですね。私は最近、ロボット掃除機もビッグデータを機械学習※2していることに、CMを見て気づきました。私が機械学習の研究を始めたころは、人工知能と説明しても「それはなんですか?」と言われてしまうことが多かったのですが(笑)。

※2 AIがデータを分析するための方法の一つ。コンピューターなどの機械が自動的にデータを分析(学習)し、規則や法則を見いだすこと。

佐川雄二さん(名城大学) トマトの加工食品メーカーでは、AIを使ってトマトの収穫量を予測しています。情報源は農場の日誌です。そこには気温や気象、使った肥料などのデータ、農家の人が気づいたことを綴った文章が記録されています。AI・データサイエンスが様々な領域に使われていく時は、現場とデータサイエンティスト※3の協力が必要不可欠。AI・データサイエンスとは、両者を近づける学問でもあると実感しました。

※3 2012年の『ハーバード・ビジネス・レビュー』で「21世紀の最も魅力的な職業」と表現され、注目を浴びた。多様なデータを収集・分析し、活用方法や課題の解決手段などを提案する仕事。

木村(AERA) 企業では、AI・データサイエンスをどのように活用していますか。

高田直幸さん(セコム株式会社) 当社ではAIという言葉が今ほど一般的ではなかった90年代から、画像解析技術を活用した警備サービスを提供してきました。現在は、人手が不足する時代のセキュリティーニーズにお応えすべく、AIを導入したバーチャル警備システム※4やセキュリティーロボットを提供している他、離れたご家族の見守りにAIを活用するサービスを提供しています。バーチャル警備システムでは、お子さんには等身大キャラクターが腰をかがめて対応するなど、温かみのあるインターフェースの実現にもAIを活用しています。

※4 モニターに表示された等身大のバーチャルキャラクターが警備・受け付け業務を担当するセコム株式会社のシステム。

佐藤伸亮さん(日本気象株式会社) 以前は、気象データを要望されるお客様の目的のほとんどは、自社のホームページなどに天気予報を載せるためでした。しかし近年、「機械学習に使用するために気象データがほしい」というご要望が非常に増えました。例えば商店であれば、来客数、販売数などは気象の影響を受けますので、そのデータ分析で関連性がわかれば、生産や販売の計画に役立てられます。当社でもそうした顧客のお手伝いができるよう、体制を整えているところです。

所属する企業・組織にデータサイエンスの専門組織はある?

勤める企業・組織にデータサイエンスの専門組織があると答えたデータサイエンティストは、「金融・保険」が約7割と最も多く、続く「製造」「学術研究・専門技術」「IT・通信」「卸売・小売」が4割を超えた。
データサイエンティスト協会「データサイエンティストの就労意識」(2023年3月20日公開)からグラフ・文章を作成 調査期間:2022年11月9 ~ 29日

世界を驚嘆させた生成
AIいかに応用していくかがカギ

人の意識を大きく変えたChatGPT

木村(AERA) AI・データサイエンスは特別なものではなくなってきているのですね。そんな中、今年は生成AI※5のChatGPT※6が急激に世間に認知されました。先生方はどう受け止めましたか。

※5 データ分析(学習)した内容をもとに、指示に合ったテキストや画像などを生成するAI。

※6 人間同士のように自然なテキスト会話を実現するチャットボット。

佐川(名城) これまで「AI」「データサイエンス」という言葉を聞いても素通りしていた人たちの関心を一気に集めましたね。理由は様々だと思いますが、そのわかりやすさが大きいのではないでしょうか。技術の水準を引き上げるのと同様に、裾野を広げたことへの貢献は大きいです。我々が想像もしないような応用が今後されていくと思います。

狩野(大阪) そうですね。人の要求に応じてデータベースから有益な情報を素早く取り出し、かつ、それを自然な文章で表現して本当にコミュニケーションしているような気分にさせること。この二つが、大きなインパクトを生みました。ただ、私はあまのじゃくなので、これほど親切に対応されると「こんなに聞いたら申し訳ないな」と、ChatGPTに遠慮してしまうんですが(笑)。

椎名(滋賀) 我々人間にとって、知性の最たる能力が言葉を話すことだと思います。それを自由に操るように見えるChatGPTの登場には大きな衝撃を受けました。人間が言葉を組み立てる仕組みと、AIの違いは何だろう。それは言葉に気持ちや情熱がこもっているかどうかの差だけかもしれない。話すという行為について改めて考えさせられました。

申(学習院) 最近ChatGPTを使って論文を書いてみました。その能力の高さに驚きつつも、椎名先生と同じようなことを感じました。想像した以上に、上手に既知の事実を組み合わせて論文らしくまとめてくれます。よい意味で言えば、本当に革新的な発見以外はAIが肩代わりしてくれるのかもしれない、と期待する一方で、人間が知的活動と呼んでいたものの正体が意外な形で明かされるのではないかという恐れもいだきます。今後を非常に興味深く見ています。

木村(AERA) 授業や研究でChatGPTを使っていますか。

椎名(滋賀) 私の所属はデータサイエンス学部なので、プログラミングの授業では使いたくなるのが自然です。例えば、エラーコード※7を入力すると、ChatGPTがどこを直せばいいかを教えてくれます。ChatGPTをカスタマイズすることは、これから大事な仕事になりますので、ガンガン使い倒しなさいというスタンスです。

※7 アプリケーションやOSなどの使用時に、プログラミングしたコードに何らかのエラーが発生すると表示される文字列のこと。

「なるほど!」とひらめく瞬間に出合える。

佐川(名城) AIの専門的な授業の一環として、ChatGPTでレポートを書かせて、その真偽を添削することが行われています。みなさんご存じのように、ChatGPTは「間違った回答をする」こともあります。ここまでAIやデータサイエンスが日常に入りこんでくると必要なのは、クリティカルシンキング※8、つまり客観的な視点で論理的にものを考える力だと思います。これを徹底的に訓練する必要がありますね。

※8 批判的思考。物事を批判的に捉え、判断する力。

狩野(大阪) そうですね。きちっと峻別する能力がないと、振り回されるだけになります。ChatGPTをうまく使っていくためには、物事を批判的に見る勉強の仕方が必要になると思います。

木村(AERA) 企業ではChat GPTを使っていますか。

高田(セコム) 例えば、お客様からのお問い合わせには業務の改善に重要なヒントが含まれますが、プライベートな情報が含まれる場合があり、多数の人を介して分析することが難しい領域でした。しかし、ChatGPTをはじめとする大規模言語モデル※9の技術は、プライバシーに配慮しつつ、必要な情報のみを分析する応用も期待できると思っています。

※9 言語モデルとは、言語の中で特定の単語が登場する確率を示したもの。文章生成AIではこれをもとにテキストが構成される。大規模言語モデルは、言語モデルよりも多くのデータと複雑な計算式によって構築され、高度な文章生成を実現した。

佐藤(日本気象) 当社でもプログラミングで使っています。プログラミングの際にサンプルコード※10をネットで探して参考にすることがありますが、ChatGPTを使えばその手間が大きく省けるため、初心者でも短時間でプログラムを作成できます。とはいえ、その後の保守のためには、そのプログラム言語に精通することも引き続き重要です。

※10 見本として書かれたコード。

業務に「生成AI」を使っている?

業務に生成AIを使用・トライアル・検討中の企業を合計すると、業界別では「IT・通信」が最も多い。また、「業務で使用中」のみでは、「その他サービス」「製造業」「金融・保険」が多かった。
NRI「AIの導入に関するアンケート調査」(2023年6月13日公開)からグラフ・文章を作成
調査期間:2023年5月22〜23日

あらゆる分野に応用
どう付き合っていく?

木村(AERA) AI・データサイエンスは今後、どのように広がっていくのでしょうか。

狩野(大阪) 今後は小中高も含めて、必要な知識としてデータの見方を学んでいきます。 Chat GPTのように新しく出てくる技術に対する対応の仕方も、リテラシーを学ぶことで、上手に扱えるようになるかもしれません。一方、大学のような研究機関では、研究開発の一部を担う重要な技術の一つとして、今後も使われていくでしょう。

申(学習院) 目に見える使われ方としては、例えば人間の仕事を代替するAIがそうですね。一方、目に見えないところで活用される特化型AI※11が確実に増え、人は当たり前のように受け入れるようになるでしょう。ただ、犯罪に使われるなど負の側面があることも否めないです。もしかしたらAIには一定の制御が必要なのかもしれません

※11 特定の分野に限定した役割に特化したAI。現在、社会で実用化されている全てのAIは、特化型にあたる。

佐川(名城) ありとあらゆる領域に使われていくのは間違いなく、大事なのはどう扱われるかでしょう。分析結果の全てが正しいとは限らないので、AI・データサイエンスを「神」とせず、人間が「上役」、場合によっては対等な立場で「仲間」として付き合い、議論しながら進めるイメージでしょうか。

椎名(滋賀) エクセルやワードのように、道具として広まっていくと思います。データサイエンスに関するリテラシーが共通言語になってきた時、データを元にみんなが意思決定や議論をする文化がもう少し根付いてほしいですね。

木村(AERA) 企業では、AI・データサイエンスを活用する人材に必要な資質は何だと考えますか。

佐藤(日本気象) まずはAI・データサイエンスは何が得意で、何が苦手かについての知識があるといいですね。そのため実際に、AIやデータサイエンスを使って何らかの問題を解決した経験がある人も歓迎です。また、専門用語に頼らずにわかりやすく説明できる力が今の段階では求められています。

高田(セコム) 佐川先生のお話にもありましたが、AIに批判的な視点を持ちつつ、適所に活用していく柔軟なスキルがあるといいですね。そして、活用する対象の業務に関する理解があることが重要です。この意味で、分野の違う関係者と積極的にコミュニケーションを取る姿勢が、非常に大切な資質ではないでしょうか。

データから得る新しい気づき
人を幸せにする原動力に

大学教育で養われる応用力、実践力

木村(AERA) 技術だけではなく、総合的な人間力も必要ですね。大学ではどのような教育に取り組んでいるのでしょうか。

椎名(滋賀) 基本的な知識として統計学や情報学はしっかり勉強しながら、同時にPBL演習※12に取り組み、いわゆる価値創造の訓練をします。平たく言えば、AI・データサイエンスを使って、人を幸せにする社会づくりの担い手を育てるということです。先ほどからお話に出ているように、現場の人とどうコミュニケーションを取れるか。実践的なトレーニングを教育に取り入れています。

PBL演習[滋賀]

※12 PBL演習[滋賀]
PBLとは、Project Based Learningの略で、課題解決型の学びのこと。同プログラムでは、企業と連携し、実際に抱えている課題やデータの提供を受け、少人数グループで解決を目指す。川井明ゼミと滋賀県警との連携では、VR技術を用いて歩行者の道路横断実験を実施。分析結果は、県警へフィードバックした。

佐川(名城) 今後、AIとの付き合い方は、AIをチームメンバーの一人として迎えるという感じになるのかなと思います。そのチームにはAIやデータサイエンス、実務それぞれの専門家がいて、全員が協力しながら、課題解決に向けた役割を担っていきます。そういう意味で言うと、全学生が将来、何らかの形でAI・データサイエンスに関わっていく可能性があります。そこで、本学ではデータサイエンス・AI入門※13を全学生に向け開講し、リテラシーを高めています

※13 データサイエンス・AI入門[名城]
情報工学部を中心に、全学部の教員が参加してオムニバス形式で展開するオンライン科目。データサイエンスとAIを活用するための基礎知識を身につける。2022年度は2479人が履修し、受講後のアンケート調査では、他の学生へ履修を「強く勧める」「勧める」と回答した学生は合わせて80%にのぼった。

データサイエンス・AI入門[名城]

狩野(大阪) 大学院生対象に副プログラム「データ科学」※14を導入しています。この学びで注力しているのは、その現象に対する理解を深め、相手の立場に立ったサービス精神を育てること。学生には試験で点数を取れる理解と、相手とコミュニケーションを取れるそれは違うことをわかってもらいます。よく「両親に自分の研究の内容を説明できるか?」と聞くんですよ。実務はもっとハードで、現場の人はたやすく我々と打ち解けてくれません。どう人間関係を築いていくか。そこをトレーニングしてほしいと思っています。

※14 大学院等高度副プログラム「データ科学」[大阪]
「統計数理」「機械学習」「医学統計学」「保健医療統計学」「人文社会統計学」「経済経営統計学」「ビッグデータ&データサイエンティスト」の7コースからなるプログラム。授業では社会科学系、理工系など異なる専門分野を持つ学生たちがともに学ぶ。

思いもよらない物事や組み合わせを発見!

申(学習院)  学部を問わず履修可能な「データサイエンス副専攻※15制度を設けました。AI・データサイエンス業務への人材の需要に比べると数学が得意な学生は非常に少ないというのが私の実感です。数学は「言葉」なので、アニメーションなど、よりわかりやすい別の言葉に換えて本質が理解できるような教材の開発に力を注ぎました。アルゴリズムがたくさんある中で、どの手法が適しているか、その感覚を養うことをプログラムの目標にしています。

データサイエンス副専攻[学習院]

※15 データサイエンス副専攻[学習院]
学生がデータサイエンスに触れる機会を作るべく、2020年から開発に取り組み開設したプログラム。理学部と文系学部を擁する同大学において、数学やデータサイエンスへの知識に差があっても全学生がスムーズに学ぶために、講義内容の精査や独自の教材の開発に取り組んでいる。

AI・データサイエンスは理系の学問?

木村(AERA) 各大学の取り組みを聞きますと、文理の垣根が取り払われ、AI・データサイエンスは誰もが手にするべき知識とスキルだと実感します。

狩野(大阪) しかし現状では、AI・データサイエンスはまだ数学の学問だと思われがちです。実はデータサイエンスで力を発揮できる人かもしれないのに、数学に苦手意識があるばかりに距離を置いてしまうことが往々にしてあるようです。非常に大きな損失ですね。

申(学習院) 入試の段階では、みなさん、数学ができるんですよね。データサイエンスは理系だけのものではありません。だからこそ、文理を問わず、専門分野にデータサイエンスの素養をプラスするという、広い視野をもって挑戦してほしいですね。

椎名(滋賀) 本学のデータサイエンス学部ですと3割くらいが文系出身者ですが、入学して1年頑張れば、理系出身者に追いつけます。ユーザーに徹するなら、今「ノーコード」などと言われているような気軽に機械学習をするソフトが出ていますので、コードを書く力は必要ないかもしれません。どういうデータサイエンティストを目指すかによって、学び方は違うと思います。

佐川(名城) そうですね。長い人生の中で、数学が必要になった時に嫌悪感なく取り組めるベースの力を大学卒業までに養えるといいのではと思います。

狩野(大阪) それには小学校から、数学は世の中にどんなふうに役に立つのか、という視点で学ぶ教育に変えていく必要があるでしょうね。

佐川(名城) 加えて、問題解決に必要となるのは関連がないように見える知識や情報をいかに組み合わせられるか。文理問わず、幅広い教養も身につけてほしいです。

木村(AERA) 実際の業務では、どのくらいの数学の知識や技術があることが求められるでしょうか。

高田(セコム) 研究者には数学の知識が必要になると思いますが、実際の業務では分野をまたいだ協力が不可欠です。各自の専門性を生かすことが重要だと思います。さらに、AIには得手不得手がある、といった基本的な性質について共通理解があると望ましいですね。

佐藤(日本気象) そうですね。データサイエンティストに限らず、理系か文系かで担当を決めることはないですね。従来、文系の仕事と位置づけられていた営業や販売の仕事でも、データを使って予測や分析を行いますし、あらゆる分野の仕事にデータサイエンスは取り入れられています。ユーザーとしての業務ならリテラシーレベルの知識や技術も十分役立つはずです。

文系・理系を問わず誰もが面白さを感じられる

木村(AERA) これまでのお話について、企業のお二人はどのような感想を持ちましたか。

高田(セコム) AIの隆盛に左右されず、大学で研究が継続されてきたことが、今のブームを支えていると思います。また、AI活用には技術だけでなくELSI※16の考慮も必要であり、大学での学際的な研究を期待したいです。

※16 「Ethical, Legal and Social Issues(=倫理的・法的・社会的課題)」の略称で、エルシーと読む。

佐藤(日本気象) AI・データサイエンスとは「人間臭い学問」だと改めて思わされました。これからどんな分野であっても、その知識や技術は、あればあるほど武器になるのは間違いないと思いますので、ぜひ社会で生かしてほしいです。

木村(AERA) 改めて、AI・データサイエンスを学ぶことの楽しさ、魅力を教えてください。

申(学習院) データから新しい気づきを得られることです。アメリカのあるスーパーマーケットの購買分析で導かれた結果に「おむつを買う人はビールを買う」という有名な事例があります。人間では思いつかないような組み合わせをデータから見つけ出すことができるのは、とても面白いですよね。

文系・理系を問わず誰もが「面白い」と感じる。

椎名(滋賀) 数理的な分野が得意な人、プログラムをガンガン書きたい人、面白いサービスを生み出したい人……。文系・理系を問わず、誰もがどこかに面白さを感じられる学問だと思います。

木村恵子の編集後記
木村 恵子

生成AI・ChatGPTが、教育現場へも大きな影響を与えていることがわかりました。新しい必須ツールをどう使っていくかをみなさん真剣に考えられていました。一方、実際の業務で他分野の人たちと協力して課題解決を目指すためには総合力が必要であること。大学教育でもそこをどう養うかがカギなのだと実感しました。

これはAI・データサイエンスで解決できますか?

「AERAサポーター高校」加盟校の生徒に、日常の中で気になっている問題を聞きました。

対象:第2期AERAサポーター高校の生徒(1〜3年生) 回答:21校 ([都道府県順]専修大学北上高等学校・宮城県仙台向山高等学校・聖霊女子短期大学付属高等学校・群馬県立高崎女子高等学校・新島学園高等学校・成田高等学校・八雲学園高等学校・和洋九段女子高等学校・神奈川学園高等学校・湘南学園高等学校・捜真女学校高等学部・横浜市立東高等学校・静岡県立下田高等学校・日本福祉大学付属高等学校・大阪偕星学園高等学校・賢明女子学院高等学校・兵庫県立加古川東高等学校・岡山県立岡山芳泉高等学校・クラーク記念国際高等学校 福岡中央キャンパス・佐賀女子高等学校・沖縄カトリック高等学校) 有効回答:1857人(社会問題編:選択制・複数回答可、身近な悩み編:自由回答・複数回答可) 調査期間:2023年5月16〜31日 調査方法:インターネット調査

大学・自慢のプログラム

主専攻+高度なデータサイエンスの力 大学院等高度副プログラム「データ科学」

全大学院生を対象とした、主専攻とは別の副プログラム。主専攻の専門の幅を広げたり、異なる分野を学び就職に生かしたりすることを目的に七つのコースを展開。現場と協働しながらデータを活用できる力の習得を目指す。2014年度の開設から10年を迎える現在、毎年新規に200人を超える学生が履修している。

大阪大学

基礎工学部は1961年に理学と工学の境界・融合領域を教育研究する学部として創設。統計学関連講座は、現在、データ科学・機械学習・確率過程の統計学を3本柱としてデータサイエンスの専門家を多数送り出している。

企業より

学びとして現場との意思疎通を取り上げられていることが大変新鮮でした。
セコム株式会社
高田さん

現場の話を引き出し、専門外の人に説明できる力を重視する点に共感します。
日本気象株式会社
佐藤さん

詳しくはこちら

望む進路に合わせて柔軟に学ぶ データサイエンス副専攻

データサイエンティストの活躍の場は、マーケティング、コンサルティング、種々のAI活用サービスなど多岐にわたる。同副専攻では、学部を問わずAI・データサイエンスを活用する「感覚」を養い、バックグラウンドやキャリア志向にあわせて自由な履修が可能。修了後は修了証明書により、幅広い専門性をアピールできる。

学習院大学

JR目白駅から徒歩30秒、東京ドーム約4個分のキャンパスを有する。高い研究力が支える専門性、ワンキャンパスに5学部17学科が学ぶ環境を生かした学際性の両面から、ブレない芯と、しなやかな協調性をそなえた"T型人材"を育成する。
※特定の深い専門性を軸に、他分野の幅広い知見を持つ人材。

企業より

「感覚」を磨くことは現場でのコミュニケーションにおいて非常に重要です。
セコム株式会社
高田さん

多様なレベルの学生に対応できる教材を用意していることが素晴らしいです。
日本気象株式会社
佐藤さん

詳しくはこちら

現場でのリアルな「価値創造」を体感 PBL演習

滋賀大学データサイエンス学部は、現在60社以上の企業と連携活動を行っている。こうした企業から提供された生のデータ・課題を題材に、少人数のチームで仮説発見や課題解決に、1年次から取り組む。また、企業から講師を迎え、どのように現場でデータが生まれ、課題解決に使われているかを学ぶ機会を設けている。

滋賀大学

同学部は、2017年に日本で最初に生まれたデータサイエンス学部。誕生以来、文部科学省が選ぶ「数理・データサイエンス・AI」教育の拠点校に常に選ばれ、データサイエンス教育普及の旗振り役を担ってきた。

企業より

企業から提供されたデータの使用など、実践度の高さに驚きました。
セコム株式会社
高田さん

「現場の経験を積んでいる」学生さんは、安心して迎えられます。
日本気象株式会社
佐藤さん

詳しくはこちら

多様な専門分野からアプローチ データサイエンス・AI入門

情報工学部の教員が中心となり、全学部の教員が交代で講師を務めるオンライン科目。名城大学の池上彰教授の解説もあり、文系・理系を問わず全学部生が受講できる点が特徴。総合大学の強みを生かした全方向のアプローチで、学部を問わず誰もが活用・理解できるプログラムを目指している。

名城大学

中部圏で最大規模の文理融合型総合大学で、2026年に開学100周年。データサイエンス教育を全学部で推進し、2022年度には情報工学部が誕生。AI時代のニーズに応える先進的な学びを提供し、次世代の情報エンジニアを育成する。
※朝日新聞出版『大学ランキング2024』から「東海の大学 学生数」

企業より

分野を問わず誰もがリテラシーを持つことは現場の業務を円滑にします。
セコム株式会社
高田さん

実例を交えた講義内容は、「自分ごと化」に非常に有効だと感じました。
日本気象株式会社
佐藤さん

詳しくはこちら

AI・データサイエンス活用企業・人材採用担当者の目

今回の座談会記事を読んで、AI・データサイエンスを活用する企業は何を感じたのか。座談会参加企業の人材採用担当者に感想を聞いた。

「本質を掴む力」は
新たな技術にも対応できるはず

AI・データサイエンスに対する大学での取り組みは、とても心強く思いました。文理の垣根なしに全学生を対象とした講義や、正しい理解ができるように批判的な視点も持ち、論理的に考えることを意識させるなど、充実したカリキュラムに驚きました。文理のそれぞれの側面から、AI・データサイエンスの本質を正しく理解できると良いですね。また、本質を掴む力を磨くことで、今後の新たな技術にも対応ができます。そのような人材が増えていくことを期待しています。

大町洋正

セコム株式会社
IS研究所
運営管理グループリーダー

大町洋正おおまちひろまさ さん

正しい応用のために
信念を見つけられる場であってほしい

AI・データサイエンスで、より多くの価値ある仕事が可能に。これは大きな発明です。従来は多くの発明が地球に多大な負荷をかけてきました。しかし今後は、過去の負荷の解消と世界中の幸せが両立できる技術への応用が加速化すれば良いと考えています。正しい応用のため、大学で情報の取捨選択に必要な知識や経験、クリティカルな思考を学べる場を引き続き提供していただきたいと感じました。また、大切にする信念のようなものを見つけられる環境であってほしいと思います。

鈴木武徳

日本気象株式会社
経営企画室

鈴木武徳すずきたけのり さん

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