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SDGsは2030年までに達成すべきゴールが設定されている。2020年、日本はSDGsの「行動の10年」を迎えると同時に、コロナ禍に見舞われた。それでも多様な形で活動に取り組んできた大学や企業がある。9校と4社が、SDGsの今と未来を語り合う。
取材・構成/株式会社POW-DER 座談会原稿/稲田砂知子
撮影/鈴木克典、武藤奈緒美(流通経済大学) イラスト/Yoh デザイン/スープアップデザインズ 制作/朝日新聞出版メディアプロデュース部ブランドスタジオ 企画/AERA dot.ADセクション
国連と連携して、国内外でSDGsの取り組みを推進する外務省の担当者に話を聞いた。
コロナ禍における世界と日本
2015年の国連サミットにおいて全会一致で採択されたSDGsは、持続可能な世界を実現するため、17のゴールが掲げられている。この元となったMDGs(ミレニアム開発目標)では、国や地域などによって達成状況に格差が生じた反省があった。SDGsはそれを踏まえ、「誰一人取り残さない」を理念に環境、経済、社会面での課題に対して世界全ての国で取り組む決意を示している。
ゴール達成年限の2030年まで10年を切る今、世界と日本のSDGsはどんな状況にあるのか。外務省国際協力局地球規模課題総括課の河原一貴さんは、「コロナ禍はSDGsの多様な分野に深刻な影響を与えたことがわかっています」と話す。
国連の報告※1 によると、2020年には最低でも新たに1億1900万人が極度の貧困状態に陥ったとみられている。日本も例外ではない。2021年の夏、外務省は日本のSDGsの進捗への評価をまとめた「自発的国家レビュー」を4年ぶりに発表。コロナ禍による飲食・観光業への打撃、教育格差の拡大、特に女性や子どもの自殺者の増加などが報告された。
※1 国連「持続可能な開発目標(SDGs)報告 2021」
※2 「 持続可能な開発報告書2021(Sustainable Development Report 2021)」
最新の「持続可能な開発報告書」※2 では、日本のSDGs達成度を示すスコアは79.8点と前年より0.6点上昇したものの、順位は一つ後退し165カ国中18位に。4「質の高い教育をみんなに」など八つのゴールは高評価を得た一方、5「ジェンダー平等を実現しよう」など主要な課題の進展は乏しく、特に15「陸の豊かさも守ろう」は「後退」と厳しい評価を受けた。
河原さんは、「指摘を受けた課題に対して改善策を講じたい」と今後への決意とともに、若者たちへの期待を語る。
「SDGsは全ての方の協力があって達成できます。私たちは特に若い世代の声を大切にしたいと考えています。高校生、大学生のみなさん一人ひとりが未来をつくる『主役』となり、持続可能な社会の担い手として行動につなげてもらえれば、これほど力強いことはありません」
河原一貴さん
外務省地球規模課題総括課長。外務省においてSDGsの推進、人間の安全保障、国連を通じた途上国支援などを担当する。1996年に外務省入省。在エジプト日本大使館、在英国日本大使館参事官、中東第一課長などを経て、2021年10月より現職。
高校生はどのようにSDGsに取り組んでいるのか。「SDGsQUESTみらい甲子園」総合プロデューサーの水野雅弘さんに話を聞いた。
「SDGsQUESTみらい甲子園」は、高校生がSDGsを切り口に社会課題の解決案を提案するコンテスト。2019年に北海道と関西のエリアで開始し、20年は神奈川と東海を加えた4エリアから373チーム、1444人が参加した。
高校生の活動が社会を動かす
高校生からSDGs達成のためのさまざまなアクションプラン(行動計画)が集まる「SDGsQUESTみらい甲子園」。総合プロデューサーの水野雅弘さんによると、高校生はゴール11「住み続けられるまちづくりを」への関心が高いという。例えば、都市部では空き家、地方では過疎化など、地域性の強い課題が多く選ばれる。コロナ禍によりオンライン授業が広まった2020年度は、4「質の高い教育をみんなに」に関するプランも増えた。
「教育格差の問題などについて〝自分たちが行動しなければ〟という高校生たちの思いを感じました」
評価のポイントは、高校生らしい共感性や革新性が発揮されているか、そこに「熱意」があるか、だという。
「世界規模の大きなテーマもいいのですが、『他人ごと』な机上のプランに陥ることも。それより、ごく身近な課題を『自分ごと』として捉えて取り組むことで、高校生でも社会を動かすことが可能になります」
すでに、実装につながった例もある。その一つが大阪にある四條畷(しじょうなわて)学園高等学校の「規格外野菜を消費し、食品ロスを減らす」プランだ。協賛企業の目にとまり、大阪駅直結の大規模商業施設で規格外野菜の販売が実現した。
こうした事例は、食品ロスの現状を調べたり、実際に農家を訪れて話を聞いたりするなど、自分たちで考え、行動した上での成果だ。
「SDGsを通じて自分たちの行動が社会に役立つことを知ると、将来を考えるヒントになります。SDGs活動は、高校生にとって有効なキャリア学習でもあると思います」
水野雅弘さん
「SDGsQUESTみらい甲子園」総合プロデューサー。株式会社TREE代表取締役。各省庁や自治体と共にICTや映像技術を活用した環境普及啓発事業や人材育成事業を推進する。