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大学で学ぶSDGsがコロナ時代を切り開く Part2

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SDGsは2030年までに達成すべきゴールが設定されている。2020年、日本はSDGsの「行動の10年」を迎えると同時に、コロナ禍に見舞われた。それでも多様な形で活動に取り組んできた大学や企業がある。9校と4社が、SDGsの今と未来を語り合う。

取材・構成/株式会社POW-DER 座談会原稿/稲田砂知子
撮影/鈴木克典、武藤奈緒美(流通経済大学) イラスト/Yoh デザイン/スープアップデザインズ 制作/朝日新聞出版メディアプロデュース部ブランドスタジオ 企画/AERA dot.ADセクション

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PART 2 これからのSDGsとは?

SDGsの目標期限である2030年まで、残すところ8年。17のゴールを達成し「誰一人取り残さない」世界を実現するため、
大学・企業がともに取り組むSDGsの成果、その後の世界を牽引する人材について意見を交わした。

座談会参加のみなさん

平本督太郎さん

金沢工業大学 SDGs推進センター長
情報フロンティア学部
経営情報学科 准教授
平本督太郎 さん

阪 智香さん

関西学院大学 SDGs推進本部委員
商学部 教授
阪 智香 さん

木寺 元さん

明治大学 政治経済学部 教授 木寺 元 さん

三木ひろみさん

流通経済大学 副学長 国際交流センター長
ダイバーシティ共創センター
設置準備委員長
スポーツ健康科学部 教授
三木ひろみ さん

市田智之さん

サントリーホールディングス
株式会社
サステナビリティ経営推進本部
サステナビリティ推進部
天然水の森グループ
市田智之 さん

小山隼人さん

星のや竹富島 施設管理 兼
畑プロジェクト担当
小山隼人 さん

大学教育の意義や目標はSDGsでより明確になった

イラスト
片桐圭子

片桐圭子(AERA) SDGsという言葉自体は、日本でも浸透してきた感があります。大学が取り組むSDGs教育の成果はどんなふうに現れていますか。

阪 智香さん(関西学院大学) 関西学院大学のスクール・モットー“Mastery for Service(奉仕のための練達)”は世の中に奉仕するために自分を鍛錬することを意味します。古くは1923年の関東大震災で支援隊を現地に派遣するなど、困っている人のために学生が力を尽くすのが、本学の伝統。アジアで初めて国連ボランティア計画(UNV※)と協定を結び、これまで100人以上の学生を開発途上国に派遣してきました。そこに近年、SDGs教育への取り組みが始まり、より多くの学生が社会的活動に関心を持ちました。

※United Nations Volunteers

木寺 元さん(明治大学) 政治学者である私がSDGsに取り組むのは、貧困や格差、差別に苦しめられている人々を救うのが政治の本来の役割だと考えているからです。私のゼミではフィールドワークを通じて日常の中にある課題を発見し、政治でどのように解決できるかを考えます。学生を見ていて思うのは、SDGsは彼らの想像力と視野を広げる機能を持っているということ。例えば環境問題から入ったとしても、ジェンダーや貧困の問題にも気づき、自分の価値観と異なる「他者」の立場を考えることができます。

三木ひろみさん(流通経済大学) 大学のSDGsへの取り組みの一環として、来年度「ダイバーシティ共創センター」を設置予定です。LGBTQのためのガイドライン作成など、特にダイバーシティ(多様性)を尊重する観点から学内を変えていくことに重点を置いています。それに併せて、学内で悩みや不満があれば、大学に堂々と訴えてもいいというメッセージを打ち出しました。するとSDGsは自分たちの身の回りの問題にも関連していると、学生たちも気づき始めました。SDGsに本格的に取り組むにあたって、まずはキャンパスを舞台に「誰一人取り残さない」理念を追求しようと考えています。

個人がそれぞれの価値観で将来を決めるという変化をSDGsが後押ししています

平本督太郎さん(金沢工業大学) 金沢工業大学では全ての学部学科の学生が地域を活性化するプロジェクトなどを通じて、早いうちからSDGsに取り組んでいるのが特徴です。この活動は、学生たちの「大企業に勤めれば安泰」といった古い価値観を廃し、個人がそれぞれの価値観で将来を決めていくという変化を後押ししているように思います。SDGsに取り組み、自分を含めたみんなの幸せについて考えるようになると、自身の生き方が見つかり、それが卒業後のキャリアにも影響しています。

木寺(明治) 今のお話は私も同感です。私のゼミにも、SDGsの活動を通して、「人々に愛される持続可能な街づくりのためにはインフラが重要」との思いに至り、鉄道会社に就職した卒業生がいます。SDGsに新たな気づきを与えられた結果です。

片桐(AERA) SDGs活動を積極的に進めている企業では、何か変化はありますか。

市田智之さん(サントリーホールディングス株式会社) 酒類や飲料の製造販売を主体としている当社では、とりわけ水を大切にし、2003年から水を育む森の環境を守る活動にも尽力しています。当初は地元の方から「なぜサントリーが森づくり?」と言われましたが、地道に活動を続けてきました。その過程でSDGsが採択され、理解が深まった感があります。社内では、2014年から社員が森林を整備する活動に参加し、環境保全についての意識が高まりました。

小山隼人さん(星のや竹富島) 「ホテルと地域は一心同体」との考えの下、ホテルのある沖縄県竹富島の自然や伝統文化の継承と発展に力を入れています。CSV(Creating Shared Value)、つまり「共通価値の創造」を大切にしており、SDGsを契機にCSVの考え方がより身近なものになりました。SDGsは今や島の老若男女の共通言語になりつつあります。その結果、竹富島をどうしていきたいか、とこれまで以上に考えるようになり、島の中で未来の話が増えました。

地域や企業を巻き込みながら「自分ごと化」の輪を広げる

当事者意識を育むプロジェクト

片桐(AERA) SDGsはまさに未来の目標です。実現するためには活動へのモチベーションを保ち、継続していかなければなりません。

平本(金沢工業) 日本ではSDGsは海外から入ってきた概念なので、どうしても「他人ごと」になりがちです。教育の役割としては、大学周辺や地元で課題に取り組む場を学生に提供し、いかに「自分ごと」として取り組んでもらえるかがカギになります。

持続可能な社会を実現する責任のある行動ができる学生を育てます

片桐(AERA) 具体的に、どのような場を提供していますか。

平本(金沢工業) 私たちの大学の場合、SDGs推進においては教育、ビジネス、地域デザインを三つの重点領域としています。なかでも地域デザインは、地域の課題を解決するプロジェクトデザイン科目を中心に展開しています。これは全学生の必修科目で、地元の課題について、1年かけて解決策を練り、小さな規模で実証実験をします。そこで効果が認められれば、地元の議会で予算が組まれ、実装までもっていきます。実際に、使いにくいという声の多かった地域のミニバス運行を市民のニーズに合わせるため、位置情報を見える化し、利便性を向上させたこともあります。

阪(関西学院) 私たちの大学でも学部ごとに工夫したPBL(課題解決型学習)を取り入れています。例えば教育学部では子ども向けの「SDGsかるた」を作って、小中学校の探究学習で学生が指導することもあります。大学全体では学生が主体になり、アウトドアブランドのスノーピークと共同でマイボトルを開発しました。利用は徐々に広がって、キャンパス内で消費される年間10万本のペットボトルを削減する独自の活動となっています。

三木(流通経済) 私たちの大学はもともと学外での活動を重視し、現場で課題を見つけ、解決に必要な知識を補完し、現場で生かすために学ぶという「実学主義」の風土があります。地域のスポーツ活動の推進や健康教室、学校での救急救命講座などを長年続けており、多くの活動はSDGs推進に寄与するものです。これからも実学主義の下でSDGsの活動を進めていきます。

図

全国の大学生を対象とした調査では、55.3%が環境問題や社会課題に取り組む企業で働く意欲があると回答。また、企業へのメッセージからは、大学生が企業に対してさまざまな期待や要望を持っていることがわかった。
株式会社日本総合研究所「若者の意識調査(報告)― ESGおよびSDGs、キャリア等に対する意識 ―」(2020年8月13日)より

地域・企業との連携は欠かせない

片桐(AERA) 星のや竹富島は、地域と連携したホテル経営をモットーとしているんですよね。

小山(星のや竹富島) はい、私たちは経済的な価値と社会的な価値の両立を目指しています。その活動の一つが竹富島の伝統的な作物である「粟(あわ)」を残すための、粟栽培の6次産業化です。経済的価値があれば産業になり、それが観光ビジネスにもつながります。粟の穂が一面に揺れる竹富島独自の風景が復活すれば、伝統文化の継承という社会的価値に加え、観光地としての魅力も上がると考えているからです。地域の魅力を高めることがホテルの業績に直結し、一方、ホテルは地域の魅力を発信することで、地域のブランド力を高める役割を担います。

片桐(AERA) 地域との連携を成功させるコツは何ですか?

小山(星のや竹富島) 「対話」が非常に重要です。今年の2月から島に海水を淡水化する装置を導入し、飲料水の自給を始めました。水資源に制限がある離島で、独立した水源を確保するために開発しました。これは太陽光発電とヒートポンプが一体化しており、災害時には水と湯、電力の自給が可能で避難所指定も受けました。ただ新しい仕組みなので、島の方々の理解を得るために時間をかけ、丁寧に説明しました。常に地域と施設が共生することを第一としています。

政治に何が必要か考えるため地域問題の解決プランを提案学外から評価を受けています

木寺(明治) 私のゼミでも「政治は地域の課題を拾うことから」と考えて活動しています。「大学生観光まちづくりコンテスト2020」では、計351時間、テーマ対象の茨城県行方市へのヒアリングや会議を経てプランを提案し、市長賞を獲得しました。プランには、近年ニーズが高まっている「エシカルツーリズム」のアクティビティ要素を取り入れました。これは、地域・旅行者を巻き込んで地域活性化や環境問題など地域課題に配慮するという考え方です。

阪(関西学院) 私は企業の環境会計の研究に取り組んできました。世界の企業の財務データを使って、国のGDPと企業ごとの売上を上から順に並べたところ、500位までのうち4分の3が企業になりました。いま、企業の力はそれくらい大きい。また、SDGsに力を入れる企業ほど株式時価総額が高いことがわかりました。大学のSDGs教育には、こうした企業との連携も欠かせません。

2030年以降を先導する次世代の育成に取り組む

SDGs教育は未来の若者のために

片桐(AERA) 2030年がまずターニングポイントです。企業では数値目標を立てていますか?

市田(サントリーホールディングス) 2030年までにグローバルで使用する全てのペットボトルに、リサイクル素材あるいは植物由来素材のみを使用し、化石由来原料の新規使用をゼロにすることで、100%サステナブル化を目指します。ただ森づくりに関しては50年、100年先を見据えています。森の状態を水文学や森林生態学などの専門家とともに徹底的に調べ、100年後のビジョンを立てて実現に向けて行動しています。

片桐(AERA) そうなると必然的に何世代にもわたって活動を継承する必要がありますね。

市田(サントリーホールディングス) はい、そのためにも当社では子どもたちに水の大切さを教える次世代環境教育「水育」を行っています。森での自然体験プログラムのほか、小学校での出張授業も実施しています。またコロナ禍に際してオンラインプログラムも開発しました。子どもたちが生き生きと学ぶ姿にやりがいを感じています。

図

全国の大学生、高校生、中学生が対象の調査では、環境問題や社会課題への解決について「そう思う」と回答した人は、大学生、 高校生は60%前後、中学生は30%未満だった。今後、若者全体の意欲を高めるには、中学生以下の年代への働きかけが重要といえる。
株式会社日本総合研究所「若者の意識調査(報告)― ESGおよびSDGs、キャリア等に対する意識 ―」(2020年8月13日)より

片桐(AERA) 大学では未来のSDGs活動を担う次世代へどんな教育を考えていますか。

平本(金沢工業) 「SDGsとは教育を核とした社会変容」という考えの下、私たちも次世代の教育に力を入れています。タカラトミーと協力して開発している「SDGs×人生ゲーム」は、SDGsを楽しみながら学べるツールです。こうしたツールで全国の小中高生のSDGs教育を支援していきたい。子どもは楽しいと自分から学んでくれるので、彼ら自身に世界を開拓していってほしいです。

木寺(明治) 本学でも小学生とともにSDGsを学ぶイベントなどを開いています。私のような年齢が離れた大人ではなく、大学生の「お兄さん、お姉さん」が楽しく取り組んでいる姿が子どもたちの心に響くようです。東京都公園協会との協業でゼミ生が「隅田川マルシェ」に参加した際は、遊びながらSDGsを学べる等身大のスゴロクを作り、地域の子どもたちの理解を深めました。

ダイバーシティの観点から多様な視点を尊重し共創できる人材を育てます

阪(関西学院) 私たち一人ひとりがステークホルダー(利害関係者)としてSDGs達成のために責任のある行動を取れるようになる。それを、教育を通じて実現するのが理想です。つまりSDGsに取り組む企業の商品・サービスを買い、就職先に選び、投資するといった行動ができる学生を育てる。資本主義経済のあり方を修正し、持続可能な社会を実現できるかは、私たちが行動を変えられるかにかかっています。

三木(流通経済) 世界は「自分」と「自分以外」で成り立っています。それを理解し、「自分以外」を見ようとする力を磨くことが、「誰一人取り残さない」世界を実現する出発点だと考えています。17のゴールの対象はそれぞれ違いますが、どれも「自分以外」を見る力がなければ達成できません。私たちの大学では「見えないものを見る」ワークなどを通して、他者への想像力を持ち、視野を広げる教育に力を入れています。それによって星のや竹富島さんのように、島のみなさんの思いを汲んだ粟栽培の復活と観光業をつなげて、粟畑の風景を観光資源と考えるような、多角的な発想で新しいモデルを生み出す力が育まれるものと信じています。

平本(金沢工業) 世界ではすでに2030年以降を見据えた「ポストSDGs」の動きが始まっています。この新たな目標づくりのプロセスに一人でも多くの日本人が参加してほしい。そのためにもSDGs推進のリーダーを育てる教育に力を尽くしたいと考えています。

片桐圭子の編集後記

片桐圭子

今、大学で行われている教育は、私が受けたものとは全く違う。プロジェクト型の課題解決学習は、まさに企業の現場で日々行われていることと同じです。話を聞いているうちに、もう一度大学に行きたくなりました。学生のみなさんには、大学時代に「人に喜ばれる」経験を重ねてほしい。それがきっと、「SDGs人材」を育てることにつながるのだと思います。

SDGsに取り組む大学

金沢工業大学

問題を解決するイノベーション力を備えた技術者へ

4学部12学科を擁する理工系総合大学。「自ら考え行動する技術者」の育成を目指し、社会実装型の教育・研究を展開する。問題発見・解決型のPBL科目「プロジェクトデザイン」を全学科必修で展開しており、2022年度からは、データサイエンス・AI教育がスタート。全学でSDGsを推進し、SDGs推進センターでは小中高校に対するSDGs教育の支援を行っている。

内閣官房長官賞
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関西学院大学

キャンパス全体でSDGsに取り組み、「革新者」を育成

文理14学部14研究科からなる総合大学。2021年4月には神戸三田キャンパス(KSC)を理・工・生命環境・建築・総合政策学部の5学部に再編、「専門分野の学び」と「文理・分野を越えた学び」で“Borderless Innovator”(革新者)を育成する。さらに産学連携でペットボトルの消費量10万本削減を目指すなど、キャンパス全体でSDGsに取り組んでいる。

ペットボトル10万本を削減へ
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明治大学

前へ─『個』を磨き、ともに持続可能な社会を創る─

2021年に創立140周年を迎えた明治大学は、創立150周年に向けて、長期ビジョン「MEIJI VISION 150-前へ-」を策定した。コンセプトとして、社会が抱える諸問題の解決に向けて、教育・研究・社会連携等の取り組みを重ね、持続可能な社会を築いていくことを掲げている。WEBサイト「明治大学×SDGs」ではSDGs目標ごとに教員やゼミの取り組み事例を紹介している。

全国26自治体

創立者の一人、宮城浩蔵の出身地・山形県天童市への学生派遣プログラム。学生と地域の人々の交流・連携を通じた地域活性化の提言を行っている。

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流通経済大学

現場で学び、多様な人たちと共創できる人材を育成

地域の障がい者の方の芸術作品を学内展示する「であうアート展」を通じた共生の推進、学生による地域の食材を使った弁当の開発など、さまざまなSDGsの活動を展開。実学主義の下、行政・農家・地域の団体・企業などと連携し、実社会での学びを通じて、多様な人たちと共創し課題解決に取り組む人材を育成している。

学生と教職員の距離ゼロ
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SDGsに取り組む企業

サントリーホールディングス株式会社社
(記事中表記はサントリーホールディングス)

100年後を見据えて「水のサステナビリティ」に挑む

「水と生きる」を掲げ、飲料、酒類、健康食品など多岐にわたる事業を展開。「人と自然と響きあう」を企業使命とし、SDGsではゴール6「水・衛生」を中心に、3「健康・福祉」、12「責任ある生産・消費」、13「気候変動」の4つを重要課題に特定。持続可能な地球環境を次世代に引き渡すことを目指し、活発な社会貢献活動を行う。

サントリー「天然水の森」
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星のや竹富島

島の文化と自然を尊重し、共に歩む宿泊施設

各施設が独創的なテーマで、圧倒的非日常を提供する「星のや」。竹富島の東に位置する琉球赤瓦の集落「星のや竹富島」は、約2万坪の敷地を有し、島内の家々と同じように「竹富島景観形成マニュアル」に準拠。伝統を尊重して建てた戸建の客室、白砂の路地、プール、見晴台などがあり、小さな集落が構成されている。

海水淡水化熱源給湯ヒートポンプユニットの設置
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イントロダクション PART 1 PART 2
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