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製薬業界にパラダイムシフトを起こす―― グローバル製薬会社アストラゼネカのイノベーション精神とは

昨年初めて発表されたPharmaceutical Invention Index(医薬品発明インデックス)において、アストラゼネカは世界のトップに選出された※1。Pharmaceutical Invention Indexは、開発パイプライン(研究開発中の薬剤のラインアップ)から市販医薬品となる比率および新規薬剤研究の試験数、規制当局による「新規」指定の比率、企業のR&D投資比率の4基準を評価したもので、同社は全てにおいて高得点を獲得している。アストラゼネカ日本法人執行役員でメディカル本部長を務める松尾恭司氏は、「開発パイプラインの新規性や、未だに有効な治療法が確立されていない疾患における医療ニーズへの対応など、数だけではなく質と新薬開発に取り組む会社の姿勢が評価された結果」と胸を張る。

文 / 音部 美穂 写真 / 慎 芝賢 デザイン / あどアシスト 企画・制作 / AERA dot. AD セクション

遺伝子情報の解析によって、“ピンポイントの治療”を実現

 アストラゼネカでは、グローバルで現CEOの下、2013年に開発パイプラインを再構築。近年、その成果が目に見えて表れているという。研究開発本部でプロジェクト&ポートフォリオ マネジメント統括部の統括部長を務めるジョアン・ロー氏が語る。

「現在開発中の薬剤のうち、第Ⅲ相(開発の最終段階)のプロジェクトはアストラゼネカグローバル全体で45、そのうち日本では33プロジェクト(2019年10月時点)を数え、グローバルとの同時開発で進んでいます。また、この3年間で12件の新規医薬品・適応症追加を日本で上市しており、その中でもファースト・イン・クラス(新規性の高い薬剤)に該当する製品を次々と世に送り出しています」

既存の概念にとらわれない薬剤を生み出し続ける背景には、同社の歴史のなかで脈々と受け継がれてきたイノベーション精神がある。同社は、前身企業の時代※2から、医薬品業界にパラダイムシフトを起こす画期的な薬剤を開発してきたのだ。

 たとえば、1948年にアストラ社が販売した世界初の局所麻酔によって、虫歯などの治療時の痛みを軽減し、外来での外科手術を可能とした。また、1964年にはICI社のジェームズ・ブラック氏がレセプター(標的分子)を特定した初の治療薬を開発。それまでは、化合物を作ってはその効能をテストすることを繰り返していたのだが、標的分子を特定することで、創薬の仕方が劇的に変化したのである。今日ではレセプターを標的にした薬は当たり前になっているが、「何に効くのか」から「なぜ効くのか」に発想を変えたこの創薬法の功績がたたえられ、ブラック氏は1988年にノーベル生理学・医学賞を受賞している。

 さらに2002年には、肺がん患者を対象にした分子標的治療薬の承認を世界に先駆けて日本で取得。分子標的薬は、がん遺伝子が生みだす特定のたんぱく質をピンポイントで攻撃して働きを阻害する薬剤だ。

「それまでのがん治療は、がん細胞と同時に正常な細胞も攻撃していましたが、分子標的薬は、がん細胞の増殖にかかわる分子だけを狙うため、効率的に治療を行えるようになった。現在主流となっている個別化医療の先鞭をつけた薬剤ともいえるでしょう」(松尾氏)

 個別化医療とは、一人ひとりの個性(体質や病気の特徴)にかなった治療のこと。兆候や症状だけでなく、体質や病気に関連する遺伝子を細かく調べて病気の原因を特定し、そこにピンポイントで対応する治療を行うことで、「プレシジョン・メディシン(精密医療)」とも呼ばれる。

  • 執行役員 メディカル本部長
    松尾 恭司
    1988年、藤沢アストラ(現アストラゼネカ)入社。研究開発本社にてポートフォリオマネージャー、グローバルプロダクト・バイスプレジデント、研究開発本部長等を経て、2015年から現職。
  • 研究開発本部
    プロジェクト&ポートフォリオ
    マネジメント統括部 統括部長
    ジョアン・ロー
    2014年入社。開発本部 呼吸器・炎症・免疫疾患領域 クリニカルサイエンスディレクターを経て、16年から現職。
  • メディカル本部 循環器・腎・代謝/
    消化器疾患領域統括部 統括部長
    矢島 利高
    2013年10月入社。開発本部 循環器・代謝/消化器領域 プロジェクトフィジシャン、同クリニカルメディカルサイエンス ディレクターを経て、18年から現職。

「個別化医療に遺伝子情報の解析は欠かせません。それぞれの遺伝子がどのように疾病につながるかを理解したうえでターゲットを発見し、より効果が期待できるような薬剤を作る。アストラゼネカでは、遺伝子情報の解析により、肺がん治療薬以外にも、遺伝性乳がんや、遺伝性卵巣がんを対象にした分子標的薬を開発し、患者さんにお届けしています」(ジョアン氏) 日本では年間約9万人以上が新たに乳がんと診断されているが、このうち7~10%は、遺伝的な要因が大きく関係していると推定されている※3。なかでも最も多いのが「遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)」と呼ばれる遺伝性乳がんで、BRCA1/2遺伝子という遺伝子に病的な変異があることが知られている。

「人間のDNAは、さまざまなストレスによって日々傷ついていますが、細胞には傷ついたDNAを修復する働きが備わっています。この修復に大きな役割を果たしているのがBRCA1/2遺伝子。しかし、HBOCの患者さんはこの遺伝子がうまく作用しないためDNAの損傷が適切に修復されず、遺伝子変異がない人に比べて乳がんは6~12倍、卵巣がんは8~20倍罹患しやすくなると報告されています※4。またBRCA1/2遺伝子は、すい臓がんや前立腺がんの発症にもかかわっているといわれています」(ジョアン氏)

「血管を再生する薬」で心不全の患者に新たな治療を

 アストラゼネカでは、再生医療への取り組みにも注力している。なかでも現在、グローバルで第Ⅱ相試験まで開発が進んでいるのが、心不全の患者を対象とした薬剤だ。この薬剤について、ジョアン氏はこう説明する。

「これは、心臓の血管を再生する効果を期待した薬剤です。心臓に栄養を送る冠動脈が詰まったり狭くなったりすると、心臓が虚血状態となり筋肉の働きが低下し、心筋梗塞などを引き起こします。そこで、虚血のある心筋部分に血管再生に重要な働きをする血管内皮細胞増殖因子の遺伝子情報をもつ特殊なRNA(遺伝子情報をDNAから写し取り、それに従ってたんぱく質合成を行う仕組みを担うリボ核酸)を打ち込むことで、局所における血管再生を促し、虚血部にも血液が行きわたるようにするという治療です。動物実験ではすでに血管の再生や心機能の改善が確認されています」

 先日、大阪大学医学部の澤芳樹教授らが、虚血性心筋症の患者にiPS細胞から作ったシート状の心筋細胞(心筋シート)の移植を行ったことが話題になった。この研究が脚光を浴びた背景には、「臓器移植の難しさという日本ならではの事情も潜んでいる」と、メディカル本部 循環器・腎・代謝/消化器疾患領域統括部 統括部長の矢島利高氏は言う。

「心機能が低下して手術や投薬治療ではコントロールできなくなると、心臓移植が必要になりますが、日本では臓器移植のドナーが少なく、心臓移植を受けるのは非常に難しいのが現実。開発を進めているこの薬剤が、将来的に臨床の現場で用いられ、心不全を抱える患者さんの治療の選択肢の一つになることを期待しています」(矢島氏)

 実は、日本には再生医療の開発において理想的な条件が揃っているという。
「再生医療に対する政府のサポートや開発に必要なインフラの整備も進んでいます。また、iPS細胞や心筋シートに象徴されるように、最先端の研究開発を行っている研究者の方々も多い。このメリットをフルに生かして、アストラゼネカの中でも私たち日本法人が再生医療開発をリードしていきたいと考えています」(松尾氏)

AIを活用し、開発期間を短縮

 さらに、現在アストラゼネカが力を入れているのが、人工知能(AI)の活用だ。
一つの薬を開発するのに膨大な時間がかかることを知っているだろうか。ジョアン氏によれば、製薬自体の開発(ターゲットの特定から非臨床)までに約3年、上市に至るまでにはさらに10年ほどかかるという。

「創薬ターゲットの発見には、これまでの実臨床情報・化合物候補など膨大なデータの検索・解析が必要ですが、人間が行うとどうしても時間がかかる。AIを活用して解析・提案させることでターゲットの特定期間を短縮し、結果的に、従来よりも早く患者さんに新薬を届けることができるようになります」(ジョアン氏)

 また、リスク因子特定のためのデータ解析もAIの得意分野だ。
「糖尿病、高脂血症、高血圧などの生活習慣病やそれに伴う脳卒中や心臓病などは、発症にさまざまな因子がかかわっており、特に臨床試験とは違うリアルワールドの多様なリスク因子をもつ患者さんの臨床転帰予測や、それぞれのリスク因子に対する治療開始の判断は難しいこともある。我々は、年齢、性別、喫煙歴や生活習慣、検査値、合併症、治療薬、患者転帰などの膨大なデータをAIに学習させ、『このような傾向の患者さんは予後が悪い』といった情報やその背景因子の分析を詳細に行うことで、リスクの高い、特定の治療が必要となる患者さんを速やかに見つけ出す試みを始めています。一般利用可能な診療データベースを用いていくつかの試みはすでに始まっており、今後は、病院や学会が管理している医療レジストリーデータや前向き研究等を用いて再現性を検証し、実際の臨床現場に有効活用する方法を考えていきたいと思っています」(矢島氏)

 このようなデータ活用には、製薬業界以外のアカデミア、企業等との連携が欠かせない。昨年10月、アストラゼネカは慶應義塾大学と「循環器・腎・代謝疾患領域(以下、当該疾患領域)におけるリアルワールドエビデンス(RWE)の創出を目的とした共同研究契約」を締結。RWEとは、臨床現場から得られる電子カルテや健康診断データなど匿名化された個人データから構成されるデータベースを活用して導き出されるエビデンスのこと。アカデミアとの連携によって、介護も含めた多様な行政系医療保険データベースを正確に取得する基盤技術を開発し、データの分析によって疾患の予防や早期発見の実現を目指している。

他業種との連携で、医薬品以外の価値も提供したい

 慶應大学以外にも、近年、アストラゼネカでは、製薬業界以外の企業や団体との連携を積極的に行っている。たとえば、日立製作所との共同研究提携もその一つ。これは、日立が持っている数万人分の健診データや先進的な分析力を慢性閉塞性肺疾患(COPD)のリスク因子解析に活かすというものだ。

 COPDは進行性の肺疾患。日本では認知度が低いが、症状が進めば死に至ることもあるため、早期発見、早期治療が重要だという。

「日本人の40歳以上のCOPDの患者数は530万人と推定されていますが※5、厚生労働省の調査によれば実際に治療を受けているのは約26万人※6。つまり、500万人を超える人が正しい診断や適切な治療を受けていないことになります。健康な人がCOPDを発症する経緯や、患者さんの予後について長期間調べた研究は日本ではほとんどなく、エビデンスが限られている。日立さんのもつ膨大なデータや先進的な分析力と、私たちが有するCOPDに対する知見を合わせることで、リスク因子の特定につなげたいと考えています」(松尾氏)

 また、オムロン ヘルスケアとは「患者さんの疾病管理ソリューションの共同研究開発を目的とした包括的、長期的かつ世界的な戦略的提携」に合意し、包括契約を締結。IoTを活用した疾病管理ソリューションの開発などを複数の国々で連携していくことを視野に入れている。

 企業のみならず自治体との連携も加速させている。大阪府とは「アレルギー疾患対策の推進に係る連携・協力に関する協定書」を締結。アレルギー疾患の患者教育プログラムの開催や、医療従事者に向けたアレルギー疾患治療に関する講演などを行っている。

「イノベーションを推し進め、これまで以上の価値を患者さんにお届けするためには、医薬品業界以外にもパートナーシップを広げていくことが重要だと考えています。発症前から診断、治療、予後など患者さんがたどる道のりの中で、医薬品以外の価値も提供できるように、各方面の企業、団体と協業することでよりよい治療を模索していきたいと考えています」(松尾氏)

 日本では2025年を節目に団塊の世代が後期高齢者に達し、介護・医療費の急増など多くの困難な局面が訪れると予想されている。この2025年に向けて、同社は「Japan Vision 2025」という新たなビジョンをスタートした。その根源にあるのが、サイエンスの限界に挑戦し、革新的なやり方によって患者さんに貢献していこうというスピリット「Innovative Science」である。

「こんな薬があったらいいのに……」という患者の願いを実現するべく、サイエンスの限界に挑み続けるアストラゼネカ。「患者さんの人生を変える医薬品を届ける」という熱い思いが、今日も彼らの挑戦を支えている。

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