池上:つまり、ワクチン開発がうんと早くても、年内にできるかもしれないけど、世界中の選手たち、あるいは選手団の関係者みんなにワクチンの投与ができてはじめて、じゃあ東京に行こうか、ということになる。本当に限られた先進国の選手は来られるかもしれないけど、世界中の、東南アジアだったり、アフリカだったり、中東だったり、そういう人たちにまでワクチンが行き届いていますか、といったらあり得ないですよね。

佐藤:それから、あと一つは黄禍論(19~20世紀にあった黄色人種への差別)の影響がありますからね。アメリカ、ヨーロッパあたりでも「私は失礼させていただきます」という選手は出てきますよ。(クルーズ船)ダイヤモンド・プリンセス号のイメージが国際的に非常に大きくなっていますからね。ああいうところにあまり行きたくない、というような感じになった場合は、首に縄をつけてこられないですから。それからロシアも来ないですからね。これは別の理由(組織的なドーピング問題)で。

池上:そうですね。来られないですからね。

佐藤:中国は国威発揚のために選手団を送ってくるでしょう。だから、メダルを中国と日本で分けるというような、そういう状況になるのでしょう。

池上:来年の夏は無理です。再来年の夏ならぎりぎり間に合うかもしれませんけど。

佐藤:でも、ケチがつきましたね。1940年(日中戦争拡大で返上)と2回もなくなるなんて。これはやはり他の国では類例をみない。やはり特別な国だということで、日本はスゴイのです。

池上:東京五輪にまたケチがついたと。2回目ですからね。

佐藤:しかし、東京五輪ができないということになると、五輪をやるという公約で東京都知事選に再選した小池(百合子)さんは、都知事の座を投げ出して国政に打って出るいい口実になる。IOC(国際オリンピック委員会)と日本の国の壁によって、五輪をやりたいのに実現できなくて、都民に公約を果たせなかった──。私は都知事を辞めて、こういう形で国政に打って出る形で、きちんと約束を守る政治をしたいと思うと。出てくるかもしれないですね。

池上:(笑)

佐藤:そうすれば、東京五輪の後始末をしないで済みますからね。

池上:そうですね。

佐藤:私が小池さんだったら、そうしますね。今、スリム化した五輪をあえて公約に掲げていても、できないのはわかっているはずですから。だから、できないと決まった時に人のせいにして、総理を狙うというのはいい選択ではないか、と考えていると思いますね。

(司会・二階堂さやか)

週刊朝日  2020年7月31日号より抜粋