「本契約をつかみ取るためには、定評あるディフェンス力に加え、ロングジャンパーの精度を高いレベルで保つこと。まずはGリーグで3ポイントシュートを高い確率で決め続ければ、チーム内での評価はさらに上がっていくはずです」(杉浦さん)

 一方、今回の快挙で注目を浴びたのが、渡辺の学力だ。渡辺は米ジョージワシントン大学のバスケ部でプレーし、そこでの活躍がNBA出場にもつながったのだが、そもそも、同大への入学はたやすくない。尽誠学園の色摩監督は、渡辺の学力についてこう振り返る。

「渡辺は進学コースには在籍しましたが、クラスの中で特に優秀だったかというと、そうでもなく、普通でした。英語も特にできたという印象はないです。ただ、大学に入学してから2年くらいした時に、彼が英語を話している姿を動画で見て、大したもんだと感心しました。授業は英語ですし、そんな中で『優秀な賞をもらいました』と言ってましたが、本当に努力したんだろうなと思いました」

 現地で取材する杉浦さんも、渡辺のまじめさに感心する。

「練習だけでなく、入学直後から勉強もかなり一生懸命にやっていたはずです。ジョージ・ワシントン大の本拠地だったスミスセンターには、勉強のためのスペースもあり、『この建物でとんでもないほど長い時間を過ごし、勉強もこの中でやってきました』と語っていました。勉強や練習に熱心なところは、渡辺選手の長所の一つ。この環境が、人間としても確実に成長した要因だと考えています」

 三上さんは高校時代の渡辺と交わした会話を思い出す。

「ウィンターカップ(冬の全国大会)の時、元実業団の選手だったお母さんが縫ってくれた、手の甲を温めるバスケ用の手袋を毎回使っていました。渡辺は実家から遠いので、寮に入り、その時に親へのありがたみ、存在に感謝するようになったそうです。そして、そういうことを僕らの前ではっきり言うんですよ。『これ(手袋)はお母さんが作ったんです』、と。そういうことを口にできる素直さが魅力です」

 バスケで頂点を目指す206センチの24歳の若者は、学力も秀でて、人物評価も高い。応援したくなる要素を十分に備えた渡辺の近未来に、大いに期待したい。(本誌・大塚淳史)

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