「これまでアジアで勝てない世代と言われてきた悔しさを晴らそうとチームは一つになった。一体感があったからこそ、誰が出ても同じようなサッカーができ、雰囲気は勝っていくたびによくなっていった」

 そして、もう一つ見逃せないのがチームを陰で支えた名物シェフの存在だ。

 約1カ月に及ぶ今予選には、本来A代表の専属シェフとしてこれまで3度のW杯に帯同してきた西芳照さん(53)が、五輪予選では異例の帯同となり、選手の食生活をサポートしてきた。

 ストレスのたまる海外での合宿では「食事が唯一の楽しみ」と言われるが、このチームでは過去の大会の際に、「現地の食事が合わず、その時間がつらかった」などとの声が上がっていた。

 それが、今予選では一転。DF岩波拓也は五輪出場を決めた後、「試合のあとのカレーは最高」と勝因の一つに西さんの料理を挙げた。延長戦までもつれた準々決勝のイラン戦で決勝弾につながるクロスを送ったDF室屋成はこう感謝した。

「海外の米だとどうしても……。日本の米が食べられるのは大きい。120分間走れたのもおいしい食事のおかげです!」

 苦戦が予想された五輪予選を救った“勝負メシ”は本大会でもチームを救うことができるか。

(栗原正夫)

週刊朝日  2016年2月12日号