こうした科学的なエビデンスをもとに、「オミクロン株」の重症化リスクは低いとして、シンガポールではオミクロン株の感染者の自宅療養を認めるなど規制緩和を実施することが26日発表されました。南アフリカ政府も、24日に、新型コロナウイルスの陽性者と接触しても無症状の場合は隔離や検査は不要であるとの新方針を発表しています。人口の6割がワクチン接種を済ませた、またはすでに感染したとの推計や無症状者が多いことなどCovid-19を巡る状況を考慮した結果、規制緩和への移行が妥当だといいます。

  日本はどうでしょう。オミクロン株の市中感染が確認される事態にまでなっているにもかかわらず、追加接種を加速して実施する気配もなく、外国人の入国停止や日本人の入国時の待機など、水際対策は再強化されたままです。24日には、文部科学省が大学入試を巡って、「オミクロン株」の濃厚接触者として宿泊施設への滞在が求められている受験生は、無症状であっても受験は認められないとする指針を発表したものの、26日には一転し、「オミクロン株」感染者の濃厚接触者は別室での受験を含め受験機会をできる限り確保する方法を検討するよう、文部科学省に指示したことが報道されました。

  先日、話題のアプリ版ワクチン接種証明書に接種記録を登録しましたが、国内のどこで使えるのか、どこで使えばいいのか分かりません。2週間の隔離政策が解除されない限り、職業上海外に行くことは無理なので、そうなると今のところ役に立ちそうにありません。そもそも、2回目の接種から時間が経過すればワクチンの予防効果が落ちるというデータが報告されている以上、2回接種を終えたという証明を提示することがどこまで役に立つのかも分かりません。

  国民に「年末年始の帰省を慎重に」とお願いするのはそろそろおしまいにして、日本も科学的データを提示しながら、データに基づいた対策をお願いしたいと思います。

山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員

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山本佳奈

山本佳奈

山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。医学博士。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。2022年東京大学大学院医学系研究科修了。ナビタスクリニック(立川)内科医、よしのぶクリニック(鹿児島)非常勤医師、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

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