今回の診断で私はADHDの診断を受けました。ASDの特性は弱く、LDは検査していません。ADHDの具体的な特徴と言えば「落ち着きがない」「気が散りやすい」「忘れ物をしやすい」など。私もさんざんにやらかしてきました。すぐに思い出すのが「傘の忘れ物」です。傘を持って出かけても帰るまでに傘を失くしてしまう。私にとってはそれが通常運転です。小さいころから数えきれないほどの傘を失くしてきました。傘を買ったその日に失くしたこともありますし、地下鉄の駅で傘を購入して電車に乗り込むもその電車に置き忘れたことだってあります。先日は、雨天にもかかわらず傘を持っていくことすら忘れて出勤したので、傘を失くさなくてすんだという日もありました。

 このほか、新幹線のなかにコートを置き忘れて震えながら帰ったこともあります。お付き合していた人から貰った財布をなくし、気を失うかと思うほど怒られたこともありました。「気が散りやすい」という特性のせいか、日程調整をしくじってダブルブッキングもよくやらかします。あれは入社1年目の冬、同日同時刻に2つの取材を入れてしまいました。取材先には何度もお詫びしましたが、再取材はかないませんでした。落ち込む私に心優しい先輩が「ミスは誰にでもあるから、忘れなければ大丈夫だよ」と言ってくれました。あれから20年、最近の私は年に1回のペースでダブルブッキングをやらかしています。忘れないどころか、ハイペースで再生産してしまっています。一つのことに集中すると、ほかのことが目に入らなくならず、遅刻なども頻発しています。

 これらの失敗は「自分のポンコツさゆえ」だと思っていましたが、すこし違うようです。傘の忘れ物も「傘を持っていたことが記憶できない」からではありません。注意が散漫になって傘の存在を忘れてしまうのだ、と。まあ結果は同じなのですが、メカニズムがわかってくると、重ねてきたミスや「できないこと」の理由がわかってきます。「怠慢ではなかったんだ」と思えて気も晴れます。診断が降りてから「気が楽になった」という声は私以外からも聞いてきました。つまり、みんな「できない自分」を責めてきたわけです。

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一方で恐ろしいこともわかってしまった