やまうら・かずほ/立命館大学スポーツ健康科学部教授。専門は産業・組織心理学、社会心理学。研究テーマは「関係性リーダーシップとチーム力向上に関する心理学的研究」(写真:立命館大学提供)

 組織内には至るところにバイアスがある。リモートより出社している部下をひいきするという現象もその一つだという。立命館大学教授の山浦一保さんに聞いた。AERA 2024年4月15日号より。

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 組織や社会の研究では、心理学の理論を引用して現象が説明されることも多い。例えば「ハロー効果」。人の部分的な特徴を見て、その人すべての特徴に見えてしまう現象だ。

 立命館大学教授の山浦一保さんによると、

「最初に素晴らしい特徴が見えたら、その人のすべてが素晴らしく見えたり、逆に嫌いなところが見えたら、その人のすべてを嫌いになったり。人事業務でよくある評価バイアスの一種などとして紹介することも多いです」

 固定観念や思い込みのフレームを見直すことで、新しい見方ができるようになる「リフレーミング効果」も知られる。例えば部下の引っ込み思案を正すのではなく、「周りをよく見て行動するんだね」と見方を変えることを言う。

 大勢が一緒に仕事をしていると怠ける人が一定割合出てきて、1+1が2にならない法則「社会的手抜き」や、反対に1+1が10になる「社会的促進」も、心理学用語。

 最近よく聞くのは上司が、リモートより出社している部下をひいきするという現象だ。

「物理的な距離は、心理的な距離の近さや遠さを生みがちで、その結果、関係性の良し悪しが決まるというのも、心理学の基本法則の一つです。リモートよりも出社する人に対するコミュニケーション量が多くなると、(当事者や周囲に)対応の違いを感じさせることはあると思いますね」

 人間関係に絶対的に効く「魔法の言葉」はなく、相手を想い、強みを引き出せるように響かせる言葉を探すのが日常会話の重要なところ。感情的な言葉で人を傷つけることは、どの世界でも御法度だ。(ライター・福光恵)

AERA 2024年4月15日号