「試合後、子どもたちが相手を思いやる気持ちを見せる場面があるんです。負けたチームのメンバーが涙を流すこともあります。そんな時、ライバル心をむき出しにして試合に勝ったチームの子どもたちが、泣いている相手選手の肩を抱いたり、ハグをしたりして、相手のがんばりに敬意を示す姿を見ると、成長を感じますね。それから、遠征から帰る途中、私はいつも感想を聞くのですが、毎回、子どもたちは『海外のレベルが高いことがわかった。だからもっとうまくなって、またレベルの高いチームと戦いたい!』と目を輝かせます。子どもたちの『もっと上の次元にチャレンジしたい』という強い野心を聞くと、私もやりがいを感じます」

「謙虚さ」「努力」「チームワーク」「野心」「敬意」が必要とされるのはバルセロナだけに限らない。サッカー界だけでもない。「五つの価値観」は、人と人とが関わり合うどんな社会においても普遍的に重視される要素だ。大好きなサッカーを通して、人間的成長が促される。子どもたちが好きなことに夢中になりながら豊かで強い心をつくっていける場所は、理想的な成長環境の一つと言っていい。

(文/菅野浩二)

AERAオンライン限定記事