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03 みんなのために ミライのために

ひとりの社員から全国へ広がる「指さしシート」

聴覚障がいをサポートするツールを無料で公開広がったのは”社員の想い”

狭いレジにも設置できて、パッと見てわかりやすく
指をさすだけで店員に要望を伝えられる、
ローソン発の「指さしシート」が
さまざまなお店に広がっている。
ひとりの困りごとも見過ごさない。多角的な視点で
検討を重ねていく。ローソンの課題解決法とは?

文/安楽由紀子 撮影/篠塚ようこ デザイン/スープアップデザインズ
制作/朝日新聞出版メディアプロデュース部ブランドスタジオ
企画/AERA dot. AD セクション

「この取り組みを担当して改めて知ったことがたくさん。
さまざまなご意見をいただき勉強しています」 (合田早紀さん)

「レジ袋はいりますか」

 その声がコロナ禍で遮られる。仙台で会計業務に携わる難聴者でローソン社員の佐々木啓子さんは、買い物にストレスを感じていた。レジ前のビニールシートで声が聴こえにくい、マスクを着用しているため店員が言葉を発しているかどうかもわからない。同様に感じている聴覚障がい者が多数いると気づき、「コンビニ業界で働く自分に何かできることはないか」と考えるようになったという。機会があって役員にこの話をしたところ、社内のSDGs推進室や関連部署の社員と意見交換することになった。

 同社SDGs推進室 アシスタントマネジャーの合田早紀(ごうださき)さんは、佐々木さんが提起した〝困りごと〟を解決すべく、昨年3月頃から検討を開始。自治体などで推奨している、指をさすことで要望を伝えられるシートの活用を考えたが、悩んだのはコンビニのレジという限られたスペースで、どこにどのようなシートを配置するか。仙台の佐々木さんと、東京の合田さんはオンラインで項目など検討を重ねた。

「初めて佐々木さんと対面で打ち合わせすることになり、その10分前に指さしシートの形がひらめいたんです」

 ノートに手描きしたものを佐々木さんに見せたところ、「これは使いやすい」と賛同を得た。レジでは後ろに人が並ぶと焦ってしまうお客さまも多い。シートのわかりやすさにはとことんこだわり、認識しやすい色でイラストをなるべく大きくし、文字はユニバーサルデザインフォントを使用。

 さらに佐々木さんから「耳マークがあると、聴覚障がい者はより安心して意思伝達しやすい」というアイデアが出た。耳マークは、一般社団法人全日本難聴者・中途失聴者団体連合会(全難聴)が保有する、聞こえが不自由なことを表すマークだ。聴覚障がいは外見からはわかりづらい。耳マークを指さすことで、障がいを伝えるハードルが下がり、安心感につながる。店舗にもヒアリングを行ったところ「店舗入り口にも耳マークのシールを貼ったほうが安心できるのではないか」という意見もあり、入り口にも掲出している。

「本当に使ってもらえるシートを作りたかった」という合田さん。スタッフの想いを形にした指さしシートを数店舗から実験展開したいと提案したところ、社長から直々に「全店で取り組むべき」とコメントをもらった。

 昨年8月からスタートさせた指さしシートは、想像以上に大きな反響があった。「安心して買い物できる」「カウンター内の商品が買いやすくなった」「指さしシートを使ったら、店員さんが『ありがとう』と手話で応えてくれてうれしかった」といった感想が寄せられたほか、社内の聴覚障がいのある社員から「こういう取り組みをしてくれる会社で働けてよかった」というメッセージがあった。

 誰もが使いやすい製品やサービスを推進する公益財団法人共用品推進機構は、この指さしシートがさまざまな人に役立つとして、国際福祉機器展に展示。高齢者、言語に障がいのある人にも活用できるとしている。 「社会貢献活動は、みんなの想いを形にすることが重要だと考えています。今回の取り組みは、聴覚障がいの方や社員、店舗オーナー、全難聴などたくさんの方のアイデアや想いが込められています。今後も想いを形にできるように取り組んでいきたい」

指さしシート

一番上にあるのが全難聴による耳マーク。耳マークを指さすことで、店員とのコミュニケーションがより取りやすくなる

アイデアの詰まったシートデータを公開し誰でも活用可能


 ローソンでは、指さしシートのPDFデータを公式サイトで公開。誰でもダウンロードできるようにした。複数の自治体から「『このシートを他の小売店や外食にも広げてほしい』という意見が市民から多数寄せられた。データを提供いただきたい」という相談があったことがきっかけだ。他社も活用できるようになれば、ローソンの独自性は失われることになるが、合田さんは「このシートが世の中に広がっていくことがうれしい。社員からも『会社のためにとどまらず、社会の役に立っているね』と声をかけてもらった」とほほ笑む。 「引き続き、聴覚障がいに限らずさまざまな困りごとを確認中です。たとえば揚げ物のセルフ販売什器やセルフレジは、聴覚障がいのある方には便利ですが、視覚障がいのある方には不便な場合がある。誰かにとっての便利は誰かの不便になるかもしれないということに留意し、今後もみなさんの便利につなげていきたいと考えています」(合田さん)

 今も佐々木さんと日々チャットで連絡を取り合い、情報交換を行う。指さしシートを社内通知した際に、連絡先を記載したことから、他の障がいのある社員からも連絡が来るようにもなった。身近な人からも「実は私も聞こえにくい」「病院に通っている」といった話もよく聞くようになったという。

 ひとりの社員の声から始まった取り組みは、社内に輪を作り、また社を超えてたくさんの人々につながった。やさしさの輪がもっと大きく広がることを、佐々木さんも合田さんも願っている。

指さしシート

レジで「レジ袋購入します」「はし・フォーク・スプーンください」「温めてください」など、項目を指をさして伝える

ローソンカスタマーセンター

0120-07-3963

月~金曜(祝日除く) 9~17時

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