長友:呼ばれた人が海外出張で来られないときなんかは、誰を呼ぶか、藤本さんが差配されるんですか?

藤本:いえいえ、そんな。「差配する」というよりは、組織ですからだいたい決まっていますし、この情報が欲しいときにはこの人、こういうテーマは誰に相談するとか。いつどの順番でボタンを押すか、というのも秘書の仕事ですので。ですからとにかく人の動きをウオッチしています。

長友:社内でどの人がどんな動きをしているとか?

藤本:あるいは、緊張感があるかないかとか。社内を歩くだけで緊張感がない部署はわかります。私は常々、緊張感がないところで、いい仕事はできないと思っていますから。

長友:でも御社は経営のトップにあんなすごいカリスマがいて、緊張が萎縮になったりしません? 失敗を恐れて石橋をたたいて渡れなくなっちゃうとか。

藤本:そういうことはあまりないかもしれないですね。人事異動においても、昇格の一方で残念ながら降格というのもたまにありますが、「降格になったらもう先はない」なんて思う人はいないと思います。

長友:降格ですか!?

藤本:はい。成績が上がらなければ降格しますし、役員でさえ同じ条件です。

長友:へ~~~。

藤本:でもそれは、その人の人格を否定しているわけではなく、たまたまそのとき成績を上げられなかっただけで、敗者復活戦はいつでもありますから。

長友:実際にまた昇格できるし、一回失敗したってまた取り戻せばいいという、企業文化と土壌がある?

藤本:あります。だから企業として沈滞、停滞しないんじゃないでしょうか。

週刊朝日  2014年7月25日号より抜粋