市販されている肉類加工品の表示例。原産国表示はあるが、加工地表示はない。どこで加工されたかも消費者の関心ごとだ(撮影/編集部・熊澤志保)
市販されている肉類加工品の表示例。原産国表示はあるが、加工地表示はない。どこで加工されたかも消費者の関心ごとだ(撮影/編集部・熊澤志保)

 中国の期限切れ鶏肉問題で注目されることとなった、食品の原産国表示。「国産」と表示されているものにも、実はあまり知られていない仕組みがある。

 原料原産地の表示は、肉や魚など生鮮食品には義務づけられているが、加工食品の場合、22食品群・4品目というごくわずかな食品に限って義務づけられているだけだ。その結果、食料輸入大国の日本で、輸入加工食品のほとんどが原料原産地が表示されないまま販売されている。

 たとえば、りんごジュースは国内消費の約半分を中国産が占めるなど多くは輸入品だが、ほとんどが「国産」と表示されている。中国で濃縮・冷凍して輸出し、それを国内で解凍、水分を加えて100%果汁にすると、その希釈が国内製造とみなされるのだ。

 容器で包装されずバラで販売される焼き鳥もそうだ。中国で串刺しにまで加工された半製品が冷凍で輸出され、国内のコンビニなどが解凍、加熱して販売すれば、原産国は日本となり、原料原産地の表示義務はない。

 こうして多くの輸入加工食品が、あたかも国産であるかのような見かけで販売されている。これが輸入食品を増やす一因、とも言われている。

 原産地表示は自ら確認するしかないが、表示制度がこのありさまでは的確な選択などできるわけがない。主婦連合会など12の市民団体で構成される「食品表示を考える市民ネットワーク」の西分千秋事務局長は、「加工食品の原料原産地表示を、表示制度の重要問題のひとつと位置づけ、改善を求めてきました」と言う。

 日本と比較して充実した表示制度を実施しているのが、お隣の韓国だ。やはり食料自給率が低く輸入に頼る韓国では、食生活が欧米化して栄養過多や偏食が大きな問題となり、数年前までに制度が大きく変わった。その結果、原料原産地表示はほとんどの加工食品に義務づけられた。外食についても規模の大小にかかわらず、牛肉・豚肉・鶏肉などの原産地表示が義務づけられている。また食品添加物はすべての添加物の名称に加えて用途も表示することになっている。

AERA 2014年8月18日号より抜粋