静岡県御殿場市が13日までに飲食店に配布した「一見(いちげん)さんお断り」のポスターが波紋を呼んでいる。文面が8日に緊急事態宣言が発令された一都三県からの客を指していると受け取られ、市には否定的な意見が多く寄せられた。そうした思わぬ反響や、緊急事態対象地域の拡大を受け、その後内容は変更されたが、ポスターを貼った飲食店には「差別だ」などと抗議する内容のはがきが届いているという。

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 ただ、首都圏の飲食店でも言い回しの違いこそあれ、一見の客を断っている店はある。その店主たちは、過剰な「御殿場叩き」に複雑な思いを吐露する。

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 御殿場市が当初作成したポスターには、一都三県の緊急事態宣言に触れたうえで、店主と御殿場市の連名の形で《主に該当地域からお越しのお客様等、一見さんお断りとさせていただいております。緊急事態宣言が解除された折には、皆様のお越しを、心よりお待ちしております》と書かれていた。すでに市内約200店の飲食店に配布された。

 市によると、昨年8月、御殿場駅そばの飲食店街にあるキャバクラで新型コロナのクラスターが発生。感染対策が不十分だったうえに、来店客の名簿も作成していなかったため、店に出入りしていた客を追いきれなかった。この一件を受け、周辺の店主たちから、特に一見の客からの感染を怖がる声が寄せられるようになったという。

「お店の方も、感染者の来店やクラスターの発生を怖がる一方で、自分たちから『お断り』の貼り紙を出すと、お客さんとのトラブルになりかねないと悩んでいました。ならば、市の名前があれば貼りだしやすいだろうと考え、貼り紙を作成したという経緯です。今回の緊急事態宣言を受け、飲食店には感染対策の徹底をあらためて要請するとともに、もし自分たちの感染対策だけでは不安だと感じたらこちらを使ってください、という趣旨で配布しました。市から店に対し、掲示を促すものではありません。一都三県の方たちだけを指したつもりもありませんでした」(担当者)

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「なんであんなものを貼るんだ」と批判