文科省は今回の調査結果で既卒者の受験が減った要因について、民間企業の採用が好転したことで、教員採用試験で不合格になった後で講師を続けながら試験に再チャレンジする層が減っていると分析している。ただ、改めて自分が子どもをもった時を考え、実情と照らし合わせると、とても教員を選択できないと考える人も決して少なくないだろう。教員の世界にもマタハラが起こっている。

 文科省は働き方改革を進めるとしているが小手先の改革では効果はなく、人手不足が解決しないことには状況は好転しない。定年後の再雇用で人材確保を図る現場も多いが、定年前と同じ仕事量と責任で給与は半額というケースが多く、長くは続かない。現場からは、かねて少人数制のクラス編成、副担任をつける、音楽や図工など専門教員の配置などが求められている。教育の質を維持するには、それなりの予算を投じて教員の質を担保しなければならないのではないか。(ジャーナリスト・小林美希)

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小林美希

小林美希

小林美希(こばやし・みき)/1975年茨城県生まれ。神戸大法学部卒業後、株式新聞社、毎日新聞社『エコノミスト』編集部記者を経て、2007年からフリーのジャーナリスト。13年、「『子供を産ませない社会』の構造とマタニティハラスメントに関する一連の報道」で貧困ジャーナリズム賞受賞。近著に『ルポ 中年フリーター 「働けない働き盛り」の貧困』(NHK出版新書)、『ルポ 保育格差』(岩波新書)

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