片岡、森本、小笠原の3曲に関しては、ファンが笑いを取りにいっているのがわかる。阪神ファンは関西特有の笑いを求めているようだ。日本ハム北海道移転前は勝てない時期が長かったため、ファンが自ら試合を楽しもうとしたのだろう。

 同じく勝てない暗黒期でも、もっとストレートに自虐的な歌詞を歌っていたのがロッテファンだ。

「ロッテの夢は観客動員100万人」(元ロッテ・初芝清)

 今でこそ多くのファンがZOZOマリンスタジアムに足を運ぶが、千葉移転前は酷かった。チームは弱く、当時の川崎球場の立地も決して健全とは言えなかった。隣は競輪場、すぐ近くには国内有数の風俗街もある。酔っ払いやホームレスがたむろするような場所に、足を運ぶファンは少なかった。初芝在籍中の観客動員数は70万人台の年もあり、スタンドで流しそうめんをする人がいたのは有名。ちなみに初芝のこの歌詞、千葉移転後も変わらずに歌われていたらしい。当時の観客動員数は今と異なり実数発表ではないが、巨人は300万人前後だった。

 ただ、“笑える”歌詞を使うのは、勝てないチームだけではない。巨人にもそういう歌詞が存在した。

「上から読んでもスミス 下から読んでもスミス どこから読んでもスミス」(レジー・スミス)

 かつてドジャースなどで活躍したメジャーリーグのレジェンドの巨人入りは大きく騒がれた。選手生活晩年の来日だったが、スケールの大きいプレーを見せてくれた。スミス在籍当時は、ちょうど現在のような個人応援歌が始まった時期。今日のようにいろいろ変化をつけるのではなく、ストレートな歌詞が印象的で笑えた。その後の巨人では、同じような3文字の石井雅博も同曲で応援された。

 感情をストレートな言葉でぶつけることが最も胸に刺さる、それは応援歌の歌詞も同じではないだろうか。最近は応援歌をセミプロのような人が作詞することもあるそうだが、その結果、凝りすぎて難しい単語がならび、「これ、どういう意味なの?」となってしまうこともある。

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逆にひねりすぎ問題