巨人・原監督(左)と広島・緒方監督 (c)朝日新聞社
<br />
巨人・原監督(左)と広島・緒方監督 (c)朝日新聞社

 今オフの主役は派手な大型補強を行った巨人だった。3度目の監督に就任した原辰徳監督は編成権も握り、丸佳浩、中島宏之、炭谷銀仁朗、岩隈久志とビッグネームの獲得に成功。5年ぶりのリーグ優勝に向けて投打共に戦力が厚みを増した。一方、リーグ3連覇の広島は攻守の軸だった丸が巨人にFA移籍。人的補償で長野久義を獲得して「因縁の対決」とメディアは盛り上がるが、広島が巨人に特別な意識があるかというと、実はそうでもない。今月22日にセ・リーグの球団の監督が顔合わせした際に、広島・緒方孝市監督は「巨人だけが相手ではない」と特定球団への意識を否定。「足元を見つめて、自分たちの野球をするだけ」と報道陣に語った。

 広島の球団関係者は「緒方監督は巨人に対して本当に特別な意識がないと思います。もちろん丸が加わって警戒はしますがライバルという意識はないでしょう」ときっぱり。

「リーグ3連覇しましたが、日本一には一度もなっていない。選手も今年こそパリーグのチームに勝って日本一という思いの方が強い」と続けた。

 広島にとってリーグ制覇が頂上ではない。16年は日本シリーズで日本ハムに敗れ、17年はCSファイナルシリーズでDeNAに敗退。18年も日本シリーズでソフトバンクに敗れた。球団初のリーグ3連覇の偉業も満足感がないのは、短期決戦で悔しい思いを3度も味わったからだろう。目指すのはパリーグに勝てる日本一のチーム作り――交流戦で広島と対戦したパ・リーグの選手たちに話を聞くと、「セ・リーグの中でダントツに強いですね」、「打者のスイングも力強いし救援陣も球が速い投手がそろっている。パリーグのチームと戦っている感覚に近い」と警戒する声が多い。

 広島の選手たちは「勝ち癖」がついているのも強さの要因だ。昨年もシーズン中盤から首位を独走。丸が「右太腿裏筋挫傷」で4月下旬から1か月近く戦線離脱した際も、野間峻祥が中堅の位置に入って活躍するなど強さに陰りはなかった。最終的に2位・ヤクルトに7ゲーム差、3位・巨人には13.5ゲーム差と他球団を寄せつけない戦いぶりでリーグ制覇。巨人との対戦成績も15年から4年連続勝ち越している。17年は18勝7敗、18年は17勝7敗1分と近年は圧倒。特別な意識どころか。「眼中になし」が正直な心中かもしれない。

 今年の開幕カードは本拠地・マツダスタジアムで巨人を迎え撃つ。最も注目される対戦カードだが、広島ナインは泰然自若の精神で臨むだろう。戦いは長い。目指すのは「4度目の正直」で日本一だ。(今中洋介)