次官が仮にこれを知ったとして、この時麻生財務相に話をしたかどうかだが、これは微妙だ。次官と麻生氏との個人的関係や、次官から見たその時点における安倍・麻生の距離感などによって、どちらの可能性もあるとは思う。

 ただし、安値販売の顛末の詳細はともかく、文書の中に国会議員や昭恵夫人の名前が入っていて、これが削除されたということは、次官が大臣に報告した可能性は高い。後に政局にもなりかねない問題だから、これを自民党第2派閥を率いる麻生大臣に報告しておかないと、後でわかった時に、「役所の問題だと考えました」という言い訳が通用しないからだ。

 こうして佐川理財局長が隠ぺいの方針を固め、確信犯として「知らぬ存ぜぬ」路線を貫くことになると、困るのは現場の近畿財務局である。国会における自分たちのトップの言動と自分たちが記録した内容が異なり、板挟み状態に陥る。ただし、本省の指示で行ったとはいえ、近畿財務局自身が安値販売に手を染めた実行犯だという負い目もあるから、改ざんに強く反対できない。悪いとはわかっているが、もはや後戻りできないということでやってしまったのだろう。

 財務省は、今、「全て佐川が悪い」という新たな路線での意思統一を図り、それで何とか切り抜ける作戦だ。しかし、省内や近畿財務局の関係者には、安値販売に手を染めた者、そこにはかんでいないが改ざんに携わった者、何の責任もない者など様々な立場の役人がいる。こういうときは、亀裂が生じてリークが出やすい。

 おそらく、本省幹部は、夏の人事に向けたアメとムチの作戦で何とか組織に対する忠誠心を維持できると読んでいるだろうが、果たしてそれが功を奏するのかどうか。

 失敗すれば、財務省崩壊につながる大惨事になる。

 国民から見れば、財務省崩壊で真相解明につながるのであれば、望むところなのだが…。

【訂正とお詫び】
 3月19日に配信した本コラムの文中に大阪府が森友学園の小学校新設について「認可」という記述があり、橋下徹前大阪府知事よりツイッターなどで事実に反するとのご指摘をいただきました。

「認可」は事実ではなく、正確には大阪府の私立学校審議会で条件付き「認可適当」の答申があり、森友学園と近畿財務局は「認可」を前提に、その後の手続きと建設工事を進めたものの、2017年2月に問題が発覚し、同学園が翌月に認可申請を取り下げたというものでした。

 問題点は、「大阪府私立小学校及び中学校の設置認可等に関する審査基準」に違反する内容であるにもかかわらず、同学園からの申請を受理し、その違反が是正されないまま、私立学校審議会で条件付き「認可適当」の答申が出たことでした。従いまして、関連部分を訂正させていただくとともに、関係者と読者にお詫び申し上げます。(古賀茂明・AERAdot.編集部)

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古賀茂明

古賀茂明

古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。近著は『分断と凋落の日本』(日刊現代)など

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