そう考えると、最初の安値販売は、その時点では、それはあくまで、安倍総理、あるいは昭恵夫人のためであり、しかも、それは組織としてもやむを得ない選択として事務方トップの了承ないし指示があって行われたと見るのが最も自然だ。つまり、その責任は財務事務次官や官邸にある可能性が高いと言える。

 しかし、これらの報告・了承・指示についての文書はないか、あっても開示される可能性は極めて低い。官僚の上層部は簡単にリークしたりしないし、極めて慎重に動くから、そもそもメモを作っていなかったり、作っても本当に破棄していたりする。したがって、この点はうやむやになる可能性が高い。

 問題を複雑にするのは、役所では、1年、2年で頻繁に人事異動があり、一つの案件が多くの人の手によって行われることである。例えば、佐川氏が批判の対象となるのは当然であるが、一方で、佐川氏を悪の権化のようにとらえるのは的外れだ。それは、麻生大臣や安倍総理の責任を問えということではない。事務方でも、もっと責任が重い人間がいるという意味だ。

 なぜなら、問題の核心は、森友学園に不当に割安の価格で土地を売却したことであり、この売却を決めた時、佐川氏はまだ理財局長ではなかった。決めたのは、その前任者である迫田英典氏である。佐川氏は、その後に理財局長に就任し、在任中にこの問題が発覚して、前任者の尻ぬぐいをするという気の毒な立場に置かれたのだ。

 この問題に最初に気づいたとき、佐川氏には二つの選択肢があった。前任者の過ちを公に認めて、自分の手を汚すことを避けるか、前任者を庇って自ら共犯者となり不正を隠ぺいするかである。佐川氏は後者を選んだ。これは、どんな組織でもありがちなことだ。自分だけいい子になって責任を逃れるのは簡単だが、それをやると、組織に対する忠誠心を疑われ、上司の評価が下がる可能性があるからだ。

 特に、森友のケースでは、不正を明らかにすれば、次官に睨まれるだけでは済まない。安倍総理の恨みを買い、次の人事でクビ(勇退)になると佐川氏は考えただろう。しかも、そのリスクはほぼ100%確実と言っても良い。逆らった者は徹底的に潰す。それが安倍政権の特色だからだ。

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上司はどこまで改ざんを知っていたのか 古賀氏の推理