今シーズン、大活躍をみせたDeNA浜口 (c)朝日新聞社
今シーズン、大活躍をみせたDeNA浜口 (c)朝日新聞社

 今年2月に沖縄・宜野湾で行われた春季キャンプでDeNAのアレックス・ラミレス監督は確信した表情で次のように語った。

ドラフト1位の浜口遥大には非常に期待をしていますし、その実力はあると思います。7勝から10勝してくれれば問題はない。そうすれば(FA移籍した)山口俊の穴は完全に埋まると思っています」

 このコメントを聞いたとき、正直、楽観的すぎるのではないかと感じられた。確かに神奈川大学時代の浜口はダイナミックなフォームからなるストレートを武器とした強気のピッチングが持ち味であったが、あくまでもまだキャンプの紅白戦程度で投げたにすぎず、プロの舞台で投げてはいないルーキーである。2016年に11勝した山口の穴を埋めるには荷が重すぎる。

 だが、浜口はオープン戦でラミレス監督の信頼を勝ち取ると、ルーキーながら開幕ローテーション入りした。シーズンが始まって1カ月ほど経ったころ、ラミレス監督に、キャンプのとき浜口がプロに適応できることがなぜ予測できていたのか聞いてみると、次のような答えが返ってきた。

「まず、サウスポーでフォークとチェンジアップの両方を持っている選手は珍しいということ。それにけん制がうまく、クイックモーションに変化を持たせることができ、チームの中ではベスト。また、メンタルが強く、ランナーがいてもボールの質が変わらない。あとはスタミナがあること。100球を超えても147キロのストレートが投げられる」

 ラミレス監督の慧眼もさることながら、浜口は今シーズン、ことあるごとに「いい環境の中で野球をやらせてもらっている」と語っていた。初めてのことばかりで右も左も分からず緊張を強いられるルーキーにとって、DeNAは安心して野球に集中できる環境が整っていた。

 まず、縦への変化のボールが多い浜口に対し、チームのキャッチャーの中でブロッキングが一番うまい高城俊人とコンビを組ませたこと。明るく面倒見のいい高城と一緒にいる機会を多くし、意思の疎通や互いの特性を知ることはもちろんのこと、プロの打者といかにして向き合えばいいのかを学ばせた。高城はシーズン中、「自信を持って腕を振れ!」と鼓舞し続け、浜口もそれを信じた。

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