看護師不足解消のため、平成以降、政府は看護師養成数を年間約4万人から6万人に増やしました。大学看護学部が急増しています。1989年には看護系学部があったのは11大学(関東に5大学)でしたが、2016年末現在で254大学(関東に73大学)に増えています。一方、専門学校の定員はむしろ減少傾向を示しています。平成以降の看護師養成数の増加は、ほぼ看護大学によると言っても過言ではありません。しかし、看護師を育成しても、急増する患者ニーズに応えることは困難です。

 看護師が多いとされる九州と四国で、看護師の有効求人倍率は1~2倍程度。つまり、最も看護師数の多い地域でも、看護師は足りていません。関西より東では看護師の有効求人倍率は2~5倍です。

 首都圏の看護師養成数を九州や四国並みに増やそうとすれば、さらに1万7000人、看護師養成数を増やさねばなりません。東京だけでも5000人です。震災復興や東京五輪を控え、人手不足が深刻な建設業よりも、看護師の人手不足は深刻です。

■急増する看護学部が希望か

 では、どうすればいいのでしょう。私は、市場はニーズがあれば、必ず成長すると考えています。この10年間で看護学部の定員が倍増しましたが、志望者数は3倍に増え、定員割れは起こしていません。

 大学経営者にとってありがたい活況です。看護学部は、医学部のように新設に対する規制がなく、事業者が看護学部設立を望めば、基本的に認められます。課題は教員の確保です。看護師の多い九州地区ですら、看護大学の教員確保は難しく、年収1000万円以上が珍しくないと言います。博士号を取っても就職先がない「ポスドク問題」とは対照的です。

 少子化が進み、大学経営が冬の時代を迎えた昨今、看護学部設立は大学経営者にとっても、教員にとっても魅力的です。東京や京都など、私立大学が多い地域では、私大がリードして看護師の養成数を増やしています。15 年4月には、関西の名門同志社女子大学も看護学部看護学科を開設しました。

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