「新山の神」・柏原竜二(東洋大)(c)朝日新聞社 @@写禁
「新山の神」・柏原竜二(東洋大)(c)朝日新聞社 @@写禁
元祖「山の神」・今井正人(順天堂大)(c)朝日新聞社 @@写禁
元祖「山の神」・今井正人(順天堂大)(c)朝日新聞社 @@写禁

 第91回を迎える、箱根駅伝こと東京箱根間往復大学駅伝競走。実は今回から「山登り」の5区がコース変更される。これにともない、これまでの「山の神」の記録は「参考記録」となる。「参考」と言ってしまえばそれまでだが、言い換えればそれは今後決して更新されることのない、永遠の記録とも言えるもの。そんな記録をもつ彼らの走りを、改めて振り返ろう。

■「山の神」の名を生んだ 順天堂大・今井正人

 山登りのスペシャリストという意味合いで定着した「山の神」という言葉。実は、2005年から2007年まで、5区を走った順天堂大の今井正人をきっかけに広く知られたということをご存じだろうか。

 今井は2年時に5区を任され、11人を追い抜くという快走で区間新を樹立。それから4年までの3年連続、5区を区間新で走り抜けた。そしてあの言葉は、彼がキャプテンとして迎えた4年時の箱根駅伝で生まれたもの。5位で襷を受け取った今井は、そこから4人を抜き去りトップに。そして勢いそのままに往路のゴールテープを切り、順天堂大2年連続の往路優勝の立役者となった。そんな彼の姿を、テレビ中継では「山の神、ここに降臨!」と力強く実況。これが浸透し、現在の「山の神」が広まった。

 実は5区は2006年にもコース変更をしており、そのため2005年の今井の区間新は「参考記録」として残っている。「山の神」という言葉とともに、決して破られることない記録を持つ選手でもある。

■「山の神」の記録を塗り替えた 東洋大・柏原竜二

「山の神」といえば、この選手を思い浮かべる人も多いのではないだろうか。2009年から2012年まで5区を走り、4年連続で区間賞を獲得。東洋大の往路4連覇を支えた存在、柏原竜二だ。

1年時に山で8人をごぼう抜きし、当初は「山の神童」として注目を浴びる。2年時は6人を抜き去り、さらに抜きざまに相手の表情を確認するなど、余裕の走りをみせたことも話題に。3年時も区間賞を獲得、さらに4年時には1時間16分39秒という驚異のタイムを叩き出し、「新・山の神」として最後の箱根を走り切った。今後はこれも「参考記録」として決して破られることはない。

 柏原が卒業して約3年がたつが、「山の神」としての彼の存在感はいまだに大きい。コース変更された新たな「山登り」で柏原や今井を凌ぐ「山の神」が現れるのか、注目していきたい。

(ライター・横田泉)