◆情報を公開して納得してもらう

 完成した14年から今まで7期7年、管理組合の理事長を務めている男性は、こう振り返る。

「分譲会社側から当初示された長期修繕計画を見たところ、修繕積立金は、最初は安くても、年が経つにつれて値上がりする方式と知りました。精査すると、住み続けるにせよ、売却するにせよ、支障がある。そのため収支を見直しました」

 とくに力を入れたのが、入居してからの5年間だったという。エレベーターのメンテナンス会社を独立系に変え、火災保険も切り替えるなどし、集中的にコストを減らした。エレベーターの管理手数料は、それまでの半分にカットできたという。

 同時に、修繕積立金の積み立て方法を、当初の段階的に値上げするやり方から、30年間、毎月一定額ずつ積み立てる「均等積み立て方式」に変更。必要最低限のコストで、無理なく管理状態を維持できる方法を選んだ。

「例えば、エレベーターのメンテナンス会社を変えるときは、管理の質が落ちるのではと不安に感じる入居者もいました。そこで、候補企業について情報をオープンにし、理事会での話し合いも議事録に残し、納得してもらったうえで進めるよう心がけました。どんなマンションも、『築浅』のころはよくても築5年、10年と経っていくと修理や改修の必要性は増すものです。早いうちに手を打てたことは良かったと思います」(理事長の男性)

 今後は、男性以外の担い手をいかに育て、皆で手がけられる体制を作るかが課題だという。

 国やマンション管理業協会の新制度を通じて、「管理」に対する意識がどれだけ高まるかは、マンション市場の行方も左右しそうだ。(本誌・池田正史)

>>【前編:増加する「老いたマンション」 35%は管理費の積み立て不足も】を読む

※「老いるマンション」についての悩みや、知りたい情報を週刊朝日(wa@asahi.com)までお寄せください。

週刊朝日  2021年12月17日号より抜粋

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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