ロッテの佐々木朗希は4月24日のオリックス戦の一回、18イニングぶりに走者を許したが、5回2失点で今季3勝目を挙げた
ロッテの佐々木朗希は4月24日のオリックス戦の一回、18イニングぶりに走者を許したが、5回2失点で今季3勝目を挙げた
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 ロッテの佐々木朗希が投球内容から球審との騒動まで話題をさらっている。課題は多いという「未完の怪物」。どこまで進化するのかますます注目が集まる。AERA2022年5月16日号の記事を紹介する。

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 登板する試合がこれほど注目される投手はなかなかいない。ロッテの佐々木朗希(20)。4月24日のオリックス戦(京セラドーム大阪)で白井一行球審から詰め寄られるようにして注意された件でも波紋を広げたほどだ。5月6日のソフトバンク戦(ZOZOマリン)では勝敗はつかなかったものの、6回1失点、11奪三振の快投を演じた。

 他球団のスコアラーは言う。

「パ・リーグは野茂英雄(元近鉄)、松坂大輔(元西武)、ダルビッシュ有(大リーグ・パドレス、35)、田中将大楽天、33)、千賀滉大(ソフトバンク、29)、大谷翔平(大リーグ・エンゼルス、27)、山本由伸(オリックス、23)と好投手が次々に誕生してきたが、佐々木はどのタイプにも当てはまらない。完成度は高くないが、投げている球の次元が違う」

「怖いのは故障だけ」

「常時160キロを超える直球、150キロ近いフォークを九回まで投げる投手なんて今まで見たことがなかった。しかも目いっぱい投げているわけではなく余力を感じる。正直、状態が良い時は対策の施しようがない。怖いのは故障だけでしょう」

 高校、大学時代、「怪物」と言われた投手は何人もいた。ただ、プロの世界で大成したのは一握りだ。佐々木は岩手・大船渡高校で3年春に高校生歴代最速の163キロを計測したが、明るい未来が約束されていたわけではない。豪速球を投げると体が壊れる危険性をはらみ、フィールディング、牽制(けんせい)球など投球以外は課題だらけだった。

 ただ、私学の強豪校ではなく、地元の県立高に進んだ決断は正解と言えるだろう。大船渡・國保陽平監督(当時)は「勝利至上主義」ではなく、佐々木の未来を見据えて無理をさせなかった。

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