昨年のWBCでも活躍した山田哲人だが所属するヤクルトでは大型契約後に“苦戦”

 メジャーリーグほどではないものの、近年のNPBではフリーエージェント(FA)権取得までの期間が短くなった影響もあってか、以前と比べて大型契約を結ぶ選手が目立つようになった。日本人選手の最長契約は松中信彦(ソフトバンク・2006~2012年)、則本昂大(楽天・2019~2025年)、柳田悠岐(ソフトバンク・2020~2026年)、山田哲人(ヤクルト・2021~2027年)、近藤健介(ソフトバンク・2023~2029年)の7年契約だが、5人中4人がこの5年以内に集中している。他の現役選手では宮崎敏郎(DeNA)も2022年から6年契約を結んで話題となった。

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 ただ、長期契約を結んでも期待通りの活躍を見せた選手ばかりではなく、球団にとっても大きなリスクであることは間違いない。松中は長期契約を結ぶ直前の2年間は40本塁打以上を放っていたが、7年契約1年目の2006年は19本塁打とホームラン数が激減。この年は首位打者を獲得してまだ面目を保ったが、翌年以降は打率も低下し、2010年からの3年間は規定打席にも到達することができなかった。ただ松中に関しては年俸が変動する契約だったこともあって、球団にとっての痛手はそれほど大きくなかったとも言えるだろう。

 そして現役選手で苦しんでいるのが山田だ。7年契約1年目の2021年こそ34本塁打、101打点と見事な成績を残したが、翌年はリーグ最多の三振数を記録するなど打率.243、23本塁打、65打点と大きく成績を落とす。さらに昨年は度重なる怪我で10年ぶりに規定打席に届かず、打率.231、14本塁打、40打点という寂しい成績に終わった。今年も開幕戦での走塁で負傷。わずか1試合の出場で登録抹消となっている。松中とは違い、年俸5億円は固定と見られており、その点でも球団にとっての負担は非常に大きい。過去に3度のトリプルスリーを達成するなど、これまで残してきた成績は見事という他ないが、今年で32歳とベテランと言われる年齢となってきただけに、選手としての大きな転換期を迎えていることは間違いないだろう。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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投手の方が“リスク”は大きいか