AERA 2024年2月12日号

 新NISAを機に投資を始めたばかりの人がこういった分析・調査をするのはハードルが高いだろう。そこで今回は、松井証券投資メディア部の江塚仁美さんに協力を仰いだ。“短期で10倍高”など派手な株価上昇は狙わない。利益面でも配当面でも優秀で、企業そのものに体力があり、安心して長期保有できそうな銘柄は? プロの視点で検索条件を指定してもらおう。

「基本条件として、東証プライム(旧東証1部)上場で時価総額1兆円以上。利益面でEPSは今期より来期が伸びているか」

江塚仁美(えづか・ひとみ・33)/松井証券投資メディア部で情報発信。2013年に三菱UFJアセットマネジメント(現社名)に入社、2023年9月から現職(写真:本人提供)

「タコ足配当」を除外

 EPSは前述の通り、配当太郎さんも重視している項目だ。実際に買うときは、決算短信や「会社四季報」などを見て、できるだけ長期にわたり利益が伸びている銘柄を選びたい。

「『益利回り』と配当利回りを比較し、益利回りのほうが大きい銘柄が残るようにしましょうか。益利回りとは1株当たり利益を株価で割ったもの。これより配当利回りのほうが高いと、利益以上に配当を出していることになります。この条件により、いわゆる『タコ足配当』の企業をある程度は除外できます」

「自己資本比率(低すぎない)と有利子負債比率(高すぎない=借金が多すぎない)の条件も加えます。さらに『売上高成長率が3年以上伸びているか』『営業利益成長率が5年以上伸びているか』も見ます」

 これらの条件でスクリーニングすると、事業の性質上、金融(銀行・証券)や保険会社が抜け落ちる。どうすれば?

「銀行・保険関連は有利子負債比率、売上高成長率、営業利益成長率の条件をはずします。このセクターは規模重視で選んでもいいと考えます」

 こうして絞った30銘柄の配当利回り1位は日本たばこ産業だった。また、自動車や金融機関、通信が複数ランクイン。

「日本たばこ産業は2022年12月期決算で増配でしたが、23年1月中旬の配当利回りは7.4%でした」(江塚さん)

 嫌煙家に好かれない銘柄だが投資は投資と割り切る層は存在する。三菱UFJ、東京海上、KDDIは配当太郎さんもXなどで触れる銘柄だ。

 なお個別株への投資はできるだけ業種を分散し、複数の銘柄に。主要ネット証券4社で1株から売買できるサービスがある。(金融ジャーナリスト・大西洋平、編集部・中島晶子)

AERA 2024年2月12日号

著者プロフィールを見る
中島晶子

中島晶子

ニュース週刊誌「AERA」編集者。アエラ増刊「AERA Money」も担当。投資信託、株、外貨、住宅ローン、保険、税金などマネー関連記事を20年以上編集。NISA、iDeCoは制度開始当初から取材。月刊マネー誌編集部を経て現職

中島晶子の記事一覧はこちら
著者プロフィールを見る
大西洋平

大西洋平

出版社勤務などを経て1995年に独立し、フリーのジャーナリストとして「AERA」「週刊ダイヤモンド」、「プレジデント」、などの一般雑誌で執筆中。識者・著名人や上場企業トップのインタビューも多数手掛け、金融・経済からエレクトロニクス、メカトロニクス、IT、エンタメ、再生可能エネルギー、さらには介護まで、幅広い領域で取材活動を行っている。

大西洋平の記事一覧はこちら