イラスト:サヲリブラウン

 運転手さんに尋ねると、やはり液状化で地盤沈下したままの場所や、家屋が倒壊した場所もあると答えが返ってきました。3.11では千葉県などで液状化現象が起こり、マンホールが筒ごと地上にせりあがった異様な光景がニュースで流れ、不安になったのを覚えています。

 私になにができるか。誰かに元気を与えようなんておこがましいと、私は常々考えています。なにをどう感じるかは受け手の自由。とにかく、私は伝えたいことを伝える。

 会場のかほく市立河北台中学校講堂は、公立校とは思えぬほど設備の整った素晴らしい施設でした。約500人の参加者は笑顔で私を迎えてくださり、熱心に耳を傾けてくださるだけでなく、笑ったり頷いたりと、こちらがパワーをもらったほど。親戚やお友達で震災被害に遭われた方もいらっしゃるに違いないのに。

 コロナ禍の自粛期間を経て、人が集まることで漲(みなぎ)る力の心強さをひしひしと感じています。集まって、顔を見て、一緒に時間を過ごしながらお互いの存在を確かめる。不安や孤独を紛らわせるには、それだけでもいいのかもしれない。そういう場所を作るのに一役買えるなら、本望です。

AERA 2024年4月1日号

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ジェーン・スー

ジェーン・スー

(コラムニスト・ラジオパーソナリティ) 1973年東京生まれの日本人。 2021年に『生きるとか死ぬとか父親とか』が、テレビ東京系列で連続ドラマ化され話題に(主演:吉田羊・國村隼/脚本:井土紀州)。 2023年8月現在、毎日新聞やAERA、婦人公論などで数多くの連載を持つ。

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