ラグビーは多様性のスポーツ。フランス大会に選出された代表33人の約半数が日本国外出身だ。写真は「リポビタンDチャレンジカップ2023」フィジー代表戦(8月5日)(写真:千葉 格/アフロ)

 日本中を熱狂させたラグビーワールドカップ日本大会から4年。フランス大会が開幕した。「Our Team」を合言葉に、異なる個性を発揮して目標へと団結する選手たち。早稲田大学の体育会ラグビー部に所属していた、実業家・識学代表の安藤広大さんが、ラグビー経験によって培われたものを語った。AERA 2023年9月18日号より。

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安藤広大(あんどう・こうだい)/早稲田大学卒業後、NTTドコモなどを経て2015年にコンサルティング会社・識学を設立。著書に『リーダーの仮面』『数値化の鬼』など(写真:本人提供)

 大阪の高校でラグビーをはじめ、卒業後は一般入試で早稲田大学に進んで体育会ラグビー部で4年間プレーしました。高校最後の大会は大阪大会3回戦負け。当時は3回戦までを前期、4回戦以降を後期と呼んで少し間を空けて開催していました。それなりに自信があって後期までプレーするつもりだったから、負けたときものすごく不完全燃焼だったんです。だから日本一を目指すような環境に身を置いて、どっぷりラグビーに浸かろうと決めました。

 入学して、圧倒されました。同期の推薦組には高校日本代表クラスの連中がゴロゴロいる。体格もデカく、とんでもない動きをするんです。レギュラーはとれなかったけれど、あの環境でプレーできたのは誇りです。

 一方で後悔もあります。自分の限界を決めてしまっていたんです。早稲田のラグビー部は1軍から5軍か6軍まであります。公式戦に出られるのは1軍です。私は当時、「2軍に上がっておいて、1軍選手がケガをしてチャンスが回ってくるのを待とう」と考えていました。1軍でポジションをとっているやつにはとても勝てないと思った。でも、一緒に3軍でプレーしていた後輩が、ある日言ったんです。日本代表クラスのレギュラー部員を、「絶対に自分が倒す」って。そして、彼は本当にレギュラーをとりました。それを見て、もう絶対に自分で自分の限界をつくらないと決めました。

 ラグビーはひとりひとりに役割があるスポーツです。全員がバラバラの役割を持っていて、同じことをするわけではないけれど互いをリスペクトしあうことでチームとして成立します。その考え方は今も生きていると思う。それに、責任感ですね。特にディフェンスのときは、1カ所破綻を起こすとチーム全体が崩れてしまいます。自分より大きな相手が突っ込んできたとしても、ひるまずにタックルしなければなりません。自分の役割をいまいる場所で全うすることを強く意識しました。

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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