近代社会は、夫婦に特権的な位置づけを与えました。逆に言うと、家族以外で自分の生活を保証してくれる存在がなくなっていくのが近代化ということです。

 前近代社会は親戚や村といった共同体が何か困ったときには助けてくれました。

 近代社会においては、核家族以外の人には助けを期待できません。助けてくれる親がいる、もしくは子どもがいる場合もありますが、それも核家族によって形成されるものです。つまり、自分で家族をつくって子どもをつくらない限り、いざとなったときにはたいへん困る社会になったというわけです。

 同時に、家族以外の親密な相手というのも「例外」になります。たとえば、親密な相手として友だちという存在もあるでしょう。けれども、友だちがいつでも心の拠り所になったり自分の生きがいになったりということはないわけです。

 いつでも自分を承認してくれる親しい相手というのが家族以外になくなるというのが、じつは近代社会の特徴なのです。

 いまではほとんどありませんが、結婚したら他の異性とのつき合いをなくす、というのは一昔前では日常的な習慣としてありました。結婚以外の性的な関係や異性同士の親密な関係は望ましくないものとされるのにはこうした土壌があったのです。

 近代社会の成立期、つまり前近代的結婚から近代的結婚に移るときには、いわゆる愛情のない結婚というものがたくさんあります。だから、結婚外に愛情があるというかたちで「不倫」といったものをテーマにした小説などもたくさん生まれたわけです。

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近代的結婚が崩壊する時代