イラスト/ウノ・カマキリ
イラスト/ウノ・カマキリ

 ともかく、米国は自国だけではパックス・アメリカーナを持続できなくなり、日本に協力を要請してきたのである。

 協力しなければ日米同盟を持続しないと脅したのであろう。

 ただし、私は岸田氏が協力に応じたことを評価している。

 パックス・アメリカーナに協力することで、従来の対米従属ではなく、米国に対して注文をつけ、あるいは要請ができるようになるのではないかと期待するからだ。

 まず、岸田氏に提案したいのは、日米地位協定の改定である。

 沖縄県民たちは普天間基地の海外、最低でも県外への移設を願っている。だが、基地の辺野古移設を首相も否定できない状況が続いている。だから、パックス・アメリカーナへの協力に応じるのならば、岸田氏には何としても日米地位協定改定を進め、沖縄県民の願いを実現させてほしい。

 実は、安倍晋三首相が3選された18年に、私は日米地位協定改定について安倍氏に進言した。安倍氏も意欲を示したのだが、米国が応じなかった。

 だが、米国が対日戦略を大転換せざるを得なくなった今こそ、米国に要請できるチャンスなのである。

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数

週刊朝日  2023年6月9日号

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田原総一朗

田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

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